高速道路のサービスエリア(SA)が夜間、違法駐車のトラックであふれている。
静岡県警や高速道路会社が対策を講じているが、死亡事故も続発。深夜の新東名下り線の浜松SAを取材すると、危険な実態が浮かび上がった。(中島和哉、高橋健人)
■危険な出入り口、運転手「文句は言えない」
札幌、仙台、徳島、鹿児島――。11月下旬午後11時過ぎ、静岡県内最大級148台の大型車を収容できる浜松SAは全国各地のトラックで混雑し、電光掲示板は「満車」の文字が点灯し続けていた。
それでも次々に進入し行き場のなくなったトラックは、SA出入り口の路肩に列を作った。駐車禁止エリアだが、オレンジ色のポールをなぎ倒して駐車する車もあった。運転手は「簡単に折れるから問題なく駐車できる」と話した。
県内では今年、SA出入り口付近で違法駐車車両に追突し、走行車両の運転手らが命を落とす事故が2件起きた。路肩の駐車車両を徐行でよけていたトラック運転手の男性は「危険だが、自分も止める時があるので文句は言えない」と語った。
出口では本線合流に向けて加速する必要があるが、違法駐車車両に阻まれ、乗用車が減速を余儀なくされる場面もあった。
■深夜割引時間など物流業界の事情が背景に
背景には、高速料金の深夜割引時間の利用や荷主指定時間までの待機、運転手の休憩時間確保など物流業界の事情がある。
福岡県の会社に勤務する運転手は「関東から休憩を取りながら走ると、静岡で1日の労働時間の上限になる。大阪や愛知のSAはさらに止める場所がないので静岡で止める」と明かす。関東と関西の間に位置する静岡特有の事情もあるという。
県警はパトロールを強化。中日本高速道路も東名足柄SAで大型車用駐車スペースの一部の利用を最長1時間に制限する実証実験を始めたが、道半ばだ。
■誘導路に死角も
危険なのは出入り口だけではない。SA内の誘導路でも駐車中のトラックの列が死角をつくり出していた。駐車場から出ようとした車が合流地点の安全を確認できず、誘導路になかなか入れない状態だった。
夜間に空きの多い乗用車エリアの活用を含め、トラックの駐車スペースを確保する方策の検討は急務だ。
SAの混雑問題に取り組む敬愛大の根本敏則教授は「出発時間別に縦列駐車をさせるなど、限られたスペースを有効に使う必要がある」と指摘。荷主都合の時間調整で運転手に負担がかかる現状も挙げ、「荷主が配送先に駐車場を設け、運転手をSAで待たせないなどの工夫も重要だ」と話した。