大阪ミナミのいわゆる「グリ下」周辺にいた女子高校生2人をスカウトし、東北や北陸に連れ出して売春させたとして、「援デリ」などと呼ばれる援助交際とデリバリーヘルスを兼ねた行為を斡旋するグループの2人が、売春防止法違反などの罪で逮捕、起訴された。余罪を含めると、女子高校生は10日間で100人超の男性客を相手にしたという。
【画像】「10人で100人超」と売春 JKを食いものにした衝撃事件の真相
裁判では、避妊薬を使ってまで女子高校生を“売春行脚”に駆り出していたこと、「しんどい」「やめたい」という声があがっても、目標額に達するまで男性客たちの相手をさせていたことなど衝撃の実態が明らかになっている。
7月2日に大阪地裁で行われた判決公判で、裁判官は「一定の報酬を渡していたと言うが、健全な成長を害するのは明らか」「『やめたい』と伝えた被害者らに対して、自身らの利益を優先し、児童を性的搾取の手段として使用した」などと厳しく非難した。
家出少女たちをそそのかし、売春行脚という地獄の旅路にいざなった事件はどのようにして起こったのか。(全2回の1回目/続きを読む)
「グリ下」周辺の女子高校生を売春行脚に連れ出した事件 GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート
起訴されたのは、一連の行為を指示した瀧本絵斗被告(26)とドライバー役を務めた新山隼士被告(21)。身柄拘束をされながら入廷した瀧本は、やや大柄でリーゼント風の髪形。物怖じしなそうな雰囲気には一定の威圧感さえ覚える。一方、すでに釈放されている新山はマスク姿で表情全体は見えないものの、少しおどおどした様子を見せており、その対比が印象深かった。
起訴状によると、瀧本は新山やその他の共犯者(別件で略式起訴済)と共謀するなどして、当時18歳未満であった女子高校生AとB、2人の年齢確認を十分に行わず、出会い系アプリで探した7人と引き合わせた。
起訴された事実だけでも驚くべき内容であるが、立件されていない事件も含めるとAに対しては10日間で109人、Bに対しても5日間で28人と引き合わせていたことが、検察官より主張されている。
Aは東北地方、Bを北陸地方へ連れて行くなどし、1人につき1万5000~2万円の対価を得て、ホテルや車内などで売春させた。1日のうちに県をまたがって行われた犯行もあったという。被告人両名はいずれの起訴事実も認めた。
瀧本は高校を中退した後、複数の職業を転々としており、事件の1年前に本件と同種の売春斡旋グループの誘いを受けて活動を開始。高校中退後にアルバイトなどをしていた新山を誘ってグループを結成し、生計を立てていた。
スカウトは瀧本が担当し、Aは街中で、BはSNS経由で雇った。その後、新山などを運転手として、出会い系サイトで客を募り各地へ出張させた。客は新山が出会い系サイトで集めていた。瀧本の指示や新山の報告は主にLINEを使用し、押収されたスマートフォンには売り上げを管理する札束の写真などが残っていた。出張中にAが産婦人科で避妊薬を処方されていた事実も明らかになっている。
検察官からの「出張中にAから『もうやめたい』という声は上がらなかったのか」という質問に対して、新山は「ありました」と答え、「早くあがれる日は切り上げていましたが、Aが欲しいとしていた目標金額もあるので、それを達成したら終了していました」と続けた。
新山はこうした対応について「Aの稼ぎたいという思いがあってのこと」と主張する。「Aがかわいそうとか、いけないことをしているという考えはなかったか」という質問には「ちょっとはありました。しかし、本人も『こういうことをしたことがある』と話していましたし、しんどいところはあまり見せない子だったので…」と回答している。
筆者の印象に過ぎないが、新山の話すトーンには悪意が感じられなかった。稼ぎたいと言っていたAに、ただ純粋に働いてもらっていた、そんな印象を受けた。複数回の公判を通して、新山は自身の浅はかを反省する姿勢を示したものの、Aに対する謝罪の言葉はなかった。
新山のこうした姿勢を裏付けるのが、母の証言である。
新山に対する弁護側立証では、現在新山と同居する母が証人として証言台に立った。事件当時は別居をしており、警察からの連絡で事件を知ったと振り返る。幼いころから心優しく、物や動物にも優しく接すると感じていた母にとって、逮捕の知らせは驚きでしかなかったという。
新山はかつて、行政の発達支援を受けていた過去がある。個別の支援計画書などが弁護人によって証拠提出され、事件との明確な関連性は不明瞭であるが、その一因であるという前提で、弁護人から母親に質問が展開されていった。
弁護人:「20歳を超えて、気になる点などありましたか」新山の母:「人との関わりをすごく大事にするのですが、少し周りを信じすぎるというか…」弁護人:「コミュニケーションなどは」新山の母:「言葉の理解と伝えるのが苦手なので、わからないことは周りに相談して、と伝えてはいましたが…」
新山は事件当時、金銭トラブルを抱えていた。母は、事件当時に新山が自分へ相談しにくかったのかもしれないと自らを責め、今後は同居しながら密にコミュニケーションを取っていくことを誓約した。
続いて証言台に立った新山は、冒頭から涙交じりで供述した。当時の新山は、住宅の退去費用として70万円が必要だったという。まとまった金額も対処する知識もなく、誰にも相談できないまま、契約書にサインしてしまって金銭に窮する中、瀧本の「夜職だから稼げる」という言葉をそのまま受け止め、誘いに乗った。
しかし、違法性は認識していたようで弁護人の「逮捕され、事件のことはどこで認めましたか」という質問に対して新山は「最初からです」と答えている。「成人でありながら、何も考えないで情けない」と軽率すぎる行動を反省する姿勢も見せており、保釈された現在は家族のサポートを受けながら、警察や親の「人を信じすぎる」という自分の性格に向き合うために社会心理学を学んでいるという。
続く記事では、主犯といえる瀧本が売春行脚に手を染めた理由や主張、判決について触れています。瀧本の主張には、女子高校生を売春させた人間とは思えない「被害者家族」へのメッセージもありました。ぜひ、合わせてお読みください。
〈「売春で稼げたことに感謝された」JKを連れまわし「10日で100人超」と相手させた“売春行脚事件” 犯人が語った「呆れた言い分」〉へ続く
(普通)