2023年も様々な印象深いニュースがあった。自民党のパーティー券問題や、ウクライナ戦争、パレスチナ戦争といった重要ニュースのほか、山川穂高の強制性交報道からのソフトバンク入団、大谷翔平のプロスポーツ史上最高契約額などスポーツ界も話題に事欠かなかった。しかし、ここでは人々の記憶から忘れ去られがちだが、筆者(中川淳一郎)には忘れられない「奇天烈ニュース10選」を紹介する。
【写真】ジャニーズ事務所問題、羽生結弦くんの結婚離婚、ビッグーモーター…写真で振り返る2023年(1)「生まれ変わったら道になりたい…」側溝男、3回目の逮捕 ネットで人気の「側溝男」「側溝マン」、果てには5ちゃんねるの「変態番付」で力士風に「側溝道」というしこ名がつく神戸の無職男(36)。この男が8年ぶり3回目の逮捕をされた。今年も色々あった(写真はイメージです) 9月14日、動画撮影状態にしたスマホを神戸市内の側溝に仕掛け、性的姿態撮影処罰法違反の疑いで逮捕されたのだ。この男の最初の逮捕は2013年6月のこと。側溝に入り、格子の下から女性のスカートの中を覗いていたのだが、20代女性と目が合い、逮捕に至った。 そして2015年8月、5時間側溝の中に仰向けで、30代女性のスカートの中を覗き逮捕。この時の供述では「生まれ変わったら道になりたい」と述べたらしい。また、週刊ポストは母親への直撃取材をしていたが、母親はこう答えていた。ゴルフを愛する人への冒涜「息子は小さいころから側溝や狭いところに入り込んで遊ぶのが好きで、中学生になっても続いていました。子供っぽいところが抜けきれていなかったみたいなのですが、それが年齢を重ねて性的な興味と結びついてしまって、こんなことをしてしまったみたいなんです」 つまり、元々側溝が好きだったのが、それがめぐりめぐって女性のスカートの中への興味に移ったというのだ。ンなワケあるか! それにしても目が合った女性の恐怖たるや……。気の毒過ぎる。(2)ビッグモーター社長「ゴルフを愛する人への冒涜」発言 中古車販売・修理業「ビッグモーター」の保険金不正請求問題だが、ここまで大騒動になったのは「あまりにも面白過ぎる社長会見」が影響したことであろう。従業員が靴下に入れたゴルフボールで車にわざと傷をつけた件について、兼重宏行社長は「ゴルフを愛する人への冒涜」と発言。 あまりにも素っ頓狂な言い訳だったため話題を呼んだわけだ。いや、普通に「明らかに非常識な行為をしていたことを謝罪します」ぐらい言えばいいのに。なぜかゴルフファンを味方につけようとしたのだ。 この「冒涜してしまい申し訳ない話法」が通用するのならば、どんな不祥事でも使えることとなる。上記「側溝男」が謝罪する場合は「側溝を利用する皆様への冒涜」「側溝を整備した方への冒涜」「側溝だからといってツバを吐かないマナーの良い皆様への冒涜」などと言えるだろう。つまらないヤツ(3)醤油ペロペロ小僧バカッター 2013年から猛威を振るい始めた「バカッター」だが、2015年、2019年もなかなか激しかった。バカッターとは「バカ+ツイッター」を表す言葉で、愚行をツイッター(現在のX)をはじめとしたSNSで公開することである。 第一弾とされるものは、2013年夏の「高知県のコンビニオーナーの息子が、父親の経営する店のアイスクリームケースに寝転がって冷をとる」写真である。その後、若者を中心にバカ写真を投稿し、毎度炎上するほか投稿者が退学や解雇処分となった。さらには、投稿したバイトを訴える飲食店も登場。 その後、バカッターは動画時代となり、よりパワーアップして燃焼力も高まったが、バカ人材が豊富な我が国は次々とバカッター職人を輩出し続ける。そんな中、今年もっとも話題になったバカッターは岐阜県の「醤油ペロペロ小僧」である。 スシロー店舗で醤油のさし口や湯呑みをペロペロと舐め、周ってくる寿司にも唾をつけた10代後半の少年のことである。親への取材が殺到し、本人が反省していることが多数報じられたが、運営会社の「あきんどスシロー」は約6700万円の損害賠償を求めた。同店舗内の醤油入れ等の交換や、評判の悪化などが根拠であるが、結局和解となった。 ペロペロ少年が自宅で反省している、といった報道も出たが、私はこの手のバカに対して、「こうしたバカげた非常識行為をしなくてはウケることがない、つまらないヤツなんだな」と毎度思う。本当に面白いヤツであれば、こんなことしないでも勝手にウケるのである。ウルトラKの反論(4)羽生結弦、結婚&わずか105日離婚の怪 これは本当に不可解だった。元々羽生結弦ファンに対して私は良い感情を持ってはいなかった。というのも、「恐い」のである。羽生に関する記事を出すと、X(旧ツイッター)で情報共有し、掲載したメディアと著者を猛烈に 攻撃する。それは、羽生の合宿所を訪れた、という記事でもそうだ。「ゆづの練習を妨げないで!」「ゆづは今、大事な時期なのにマスゴミがゆづの心を乱すのはやめて!」といった感じだ。こうして目をつけられたメディアは永遠に嫌われる。私が2020年に編集したとある記事は基本的には羽生のことを慮る記者が綿密な取材をしたもので、多くの羽生ファンはこの記事を喜んだ。 だが、「このサイトの記事だから許せない」という熱狂的ファンがXでキレまくり、執筆したライターにも攻撃を開始。そこで編集者である私は「その攻撃は不当である」といった声明をXで述べた。この時「羽生選手」という一言を書いたのだが、想像を絶するウルトラCどころかウルトラKぐらいの反論が熱狂的羽生ファンから寄せられた。「アンタが『羽生』と書き込むのは許せない!」 意味分からん。 羽生の105日婚についての真相はよく分からない。だが、もっとよく分からないファンによって支えられていたことだけはよく分かった。つまらん判断(5)ペッパーミルパフォーマンス、甲子園で注意される 野球の世界大会・WBCの日本代表で屈指の人気を誇ったのがセントルイス・カージナルスのラーズ・ヌートバーだ。初めて名前を聞いた時「誰じゃそいつ?」と思ったが、父がアメリカ人で母が日本人の選手だと知った。 日本にもルーツがあるということで貴重な枠を埋めていいのか? アメリカの野球を知っているというだけで選んでいいのか? と考えた方も多いだろうが、ヌートバーは1次ラウンドから決勝戦の7試合すべてに先発・センターで出場し、打率.269、7打点、四死球7で出塁率.424の活躍を見せた。守備も堅実で、最初こそ疑問を抱いた人も「ヌートバー、いや、『たっちゃん』がいてよかった」と思ったのではなかろうか。 そんなヌートバーを印象付けたのが、ヒットを打った後に塁上で見せる「ペッパーミルパフォーマンス」だ。胡椒挽き機を回すような動きなのだが、これがWBC期間中、ブームとなった。 そんな余勢をかって始まった春のセンバツ甲子園大会。若き高校生であれば当然マネしたくなるではないか! 東北高校の選手が相手のエラーで出塁した際にペッパーミルパフォーマンスをしたところ、審判から注意された。 佐藤洋監督は「なんでこんなことで、子どもたちが楽しんでいる野球を大人が止めるのかなと。ダメな理由を聞きたい」と試合後に述べた。結局「相手のエラーで出塁したのにそれを喜ぶのは高校生らしくない」という、つまらん判断だろう。「もはや逃れられない」となったら(6)BBCが報じたことでようやくジャニーズ問題を報じる日本メディアのヘタレっぷり 3月、英・BBCがジャニーズ性加害問題をドキュメンタリーで報じた。1999年に週刊文春が14週間にわたってこの件を追及していたというのに「所詮3流ゴシップ週刊誌がなんか言ってるwwwww」的に日本の大手メディアはスルーした。 だが、「外圧」が来た瞬間、大手メディアは屈し、いかにジャニーズを排除するか、というアピール合戦を展開したのである。元々「出禁」をくらっていた主婦と生活社の「週刊女性」等はジャニーズ批判を容赦なくしていたが、(1)海外メディア様が報じた(2)他の国内大手メディアも報じた――というお墨付きにより、あらゆるメディアが批判に回れるようになったのである。 それは広告主も同じだ。散々ジャニタレを起用していたというのに、この件が「もはや逃れられない!」となったら広告契約を解除する。とにかくダサ過ぎるのがこの美しい国・JAPANなのである。 現在パーティー券問題で揺れる自民党の「安倍派」は、解体や派閥名変更を検討していると報じられたが、あのさ、ジャニーズ事務所が「SMILE-UP.」に変更したのと同じことだろうが! 結局根本問題にはメスを入れないんだよな。令和の米騒動(7)クマ駆除へのクレーム相次ぐ これはすごく批判されるのが怖いのでサラリと書きます。2023年はクマによる人間への被害が例年と比較し、すさまじく多かったです。すると、秋田県を筆頭とする県の自治体に対して「かわいいクマを殺すのか!」「この人でなし!」などと抗議の電話やメールが殺到。 あなたたち、自分の町内をクマが闊歩していても同じこと言えますか? かなり怖いですよ、クマ。(8)中日ドラゴンズ「米騒動」 2023年シーズン、セ・リーグ最下位の中日ドラゴンズ。立浪和義監督への批判も相次ぎ、不可解とも評された京田陽太選手のトレードも含め、なにかと批判を浴びるセ・リーグ球団的ポジションになった。 そんなドラゴンズに今年降って湧いてきたのが「令和の米騒動」。立浪監督が試合前に炊飯ジャーの使用を禁止したというものだ。試合前に食べ過ぎてはいけないという措置だったが、「米騒動」と話題に。「立浪監督が選手に白米を食べるのを禁止と命令した」と曲解する書き込みもネットにはあった。 これに対し、12月12日にオンエアされた「Dra fes 4DAYS」(東海ラジオ)では真相が大西崇之コーチにより明かされた。これによると、端的にまとめると 「ジャーからドッカーンと取る選手がいてこれは食べ過ぎである、と考えた。おにぎりは置き、適正量を食べてもらいたいと考えたこと」とのこと。「米騒動」というキャッチーな言葉がウケまくったということなのかもしれない。いつ報告するのか(9)エッフェル姉さん、「私はいじめられてる……」。今井絵理子は成果出さず 自民党女性局が7月、パリへの視察を行ったが、この際、参議院議員で女性局長の松川るい氏がエッフェル塔を前に両腕を高く上げて「エッフェル塔ポーズ」を取りSNSに投稿。以後「エッフェル姉さん」と呼ばれるようになった。 円安の中、もはや庶民はパリ旅行に行くことは困難な中、「上級国民」がパリを「視察」という名目の観光旅行的なことをしていたことが批判のやり玉に。松川氏はこの写真を削除したが、娘も連れて行った上に大使館員に面倒を見させたことが後に明らかに。 上級国民様と下級国民の間の格差をまざまざと見せつけるこの写真には批判が殺到した。後に松川氏はSmartFlashから『松川るい議員、女性局長辞任へ…「私はいじめられている」と嘆くも“後見人”茂木幹事長が引導渡す』という記事を出されるなど、被害者としての意識もあったようだ。 この「視察」に参加した今井絵理子氏は無駄な外遊ではないことを示すべく、SNSで「さきの訪越、この度の訪仏はとても実りあるものでした。これからも様々な国の方々との交流を積極的に行っていきたいと思います。また追って活動報告します!!」と述べていたが、いつ報告するんだよ~。権威あるラーメン屋(10)ラーメンにティッシュを入れるな! ラーメン屋マナー論争続々 ラーメンというものはつくづくネットで話題になるものだ。今年はラーメン店をめぐり「店主が怒り」的な記事が時々見られた。それは「丼にティッシュを入れるな」や「ラーメン二郎で残すなら大盛りを頼むな!」的なもの。 これらの主張は分かるし、ティッシュを入れる者が非常識であることも分かる。ゴミ箱に捨てろ。だが、ラーメンの話題がネットで炎上しがちな理由は、結局ラーメン自体が「常連による権威の押し付け」的な側面もあるのでは。 私は「ラーメン二郎」に一度だけ行ったことがありますが、常連と店員による「マナー圧」「空気圧」に押され「ここはワシが行く店ではない」と生涯それ以降行ったことはありません。権威あるラーメン屋、怖い……。中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。デイリー新潮編集部
(1)「生まれ変わったら道になりたい…」側溝男、3回目の逮捕 ネットで人気の「側溝男」「側溝マン」、果てには5ちゃんねるの「変態番付」で力士風に「側溝道」というしこ名がつく神戸の無職男(36)。この男が8年ぶり3回目の逮捕をされた。
9月14日、動画撮影状態にしたスマホを神戸市内の側溝に仕掛け、性的姿態撮影処罰法違反の疑いで逮捕されたのだ。この男の最初の逮捕は2013年6月のこと。側溝に入り、格子の下から女性のスカートの中を覗いていたのだが、20代女性と目が合い、逮捕に至った。
そして2015年8月、5時間側溝の中に仰向けで、30代女性のスカートの中を覗き逮捕。この時の供述では「生まれ変わったら道になりたい」と述べたらしい。また、週刊ポストは母親への直撃取材をしていたが、母親はこう答えていた。
「息子は小さいころから側溝や狭いところに入り込んで遊ぶのが好きで、中学生になっても続いていました。子供っぽいところが抜けきれていなかったみたいなのですが、それが年齢を重ねて性的な興味と結びついてしまって、こんなことをしてしまったみたいなんです」
つまり、元々側溝が好きだったのが、それがめぐりめぐって女性のスカートの中への興味に移ったというのだ。ンなワケあるか! それにしても目が合った女性の恐怖たるや……。気の毒過ぎる。
(2)ビッグモーター社長「ゴルフを愛する人への冒涜」発言 中古車販売・修理業「ビッグモーター」の保険金不正請求問題だが、ここまで大騒動になったのは「あまりにも面白過ぎる社長会見」が影響したことであろう。従業員が靴下に入れたゴルフボールで車にわざと傷をつけた件について、兼重宏行社長は「ゴルフを愛する人への冒涜」と発言。
あまりにも素っ頓狂な言い訳だったため話題を呼んだわけだ。いや、普通に「明らかに非常識な行為をしていたことを謝罪します」ぐらい言えばいいのに。なぜかゴルフファンを味方につけようとしたのだ。
この「冒涜してしまい申し訳ない話法」が通用するのならば、どんな不祥事でも使えることとなる。上記「側溝男」が謝罪する場合は「側溝を利用する皆様への冒涜」「側溝を整備した方への冒涜」「側溝だからといってツバを吐かないマナーの良い皆様への冒涜」などと言えるだろう。
(3)醤油ペロペロ小僧バカッター 2013年から猛威を振るい始めた「バカッター」だが、2015年、2019年もなかなか激しかった。バカッターとは「バカ+ツイッター」を表す言葉で、愚行をツイッター(現在のX)をはじめとしたSNSで公開することである。
第一弾とされるものは、2013年夏の「高知県のコンビニオーナーの息子が、父親の経営する店のアイスクリームケースに寝転がって冷をとる」写真である。その後、若者を中心にバカ写真を投稿し、毎度炎上するほか投稿者が退学や解雇処分となった。さらには、投稿したバイトを訴える飲食店も登場。
その後、バカッターは動画時代となり、よりパワーアップして燃焼力も高まったが、バカ人材が豊富な我が国は次々とバカッター職人を輩出し続ける。そんな中、今年もっとも話題になったバカッターは岐阜県の「醤油ペロペロ小僧」である。
スシロー店舗で醤油のさし口や湯呑みをペロペロと舐め、周ってくる寿司にも唾をつけた10代後半の少年のことである。親への取材が殺到し、本人が反省していることが多数報じられたが、運営会社の「あきんどスシロー」は約6700万円の損害賠償を求めた。同店舗内の醤油入れ等の交換や、評判の悪化などが根拠であるが、結局和解となった。
ペロペロ少年が自宅で反省している、といった報道も出たが、私はこの手のバカに対して、「こうしたバカげた非常識行為をしなくてはウケることがない、つまらないヤツなんだな」と毎度思う。本当に面白いヤツであれば、こんなことしないでも勝手にウケるのである。
(4)羽生結弦、結婚&わずか105日離婚の怪 これは本当に不可解だった。元々羽生結弦ファンに対して私は良い感情を持ってはいなかった。というのも、「恐い」のである。羽生に関する記事を出すと、X(旧ツイッター)で情報共有し、掲載したメディアと著者を猛烈に 攻撃する。それは、羽生の合宿所を訪れた、という記事でもそうだ。
「ゆづの練習を妨げないで!」「ゆづは今、大事な時期なのにマスゴミがゆづの心を乱すのはやめて!」といった感じだ。こうして目をつけられたメディアは永遠に嫌われる。私が2020年に編集したとある記事は基本的には羽生のことを慮る記者が綿密な取材をしたもので、多くの羽生ファンはこの記事を喜んだ。
だが、「このサイトの記事だから許せない」という熱狂的ファンがXでキレまくり、執筆したライターにも攻撃を開始。そこで編集者である私は「その攻撃は不当である」といった声明をXで述べた。この時「羽生選手」という一言を書いたのだが、想像を絶するウルトラCどころかウルトラKぐらいの反論が熱狂的羽生ファンから寄せられた。
「アンタが『羽生』と書き込むのは許せない!」
意味分からん。
羽生の105日婚についての真相はよく分からない。だが、もっとよく分からないファンによって支えられていたことだけはよく分かった。
(5)ペッパーミルパフォーマンス、甲子園で注意される 野球の世界大会・WBCの日本代表で屈指の人気を誇ったのがセントルイス・カージナルスのラーズ・ヌートバーだ。初めて名前を聞いた時「誰じゃそいつ?」と思ったが、父がアメリカ人で母が日本人の選手だと知った。
日本にもルーツがあるということで貴重な枠を埋めていいのか? アメリカの野球を知っているというだけで選んでいいのか? と考えた方も多いだろうが、ヌートバーは1次ラウンドから決勝戦の7試合すべてに先発・センターで出場し、打率.269、7打点、四死球7で出塁率.424の活躍を見せた。守備も堅実で、最初こそ疑問を抱いた人も「ヌートバー、いや、『たっちゃん』がいてよかった」と思ったのではなかろうか。
そんなヌートバーを印象付けたのが、ヒットを打った後に塁上で見せる「ペッパーミルパフォーマンス」だ。胡椒挽き機を回すような動きなのだが、これがWBC期間中、ブームとなった。
そんな余勢をかって始まった春のセンバツ甲子園大会。若き高校生であれば当然マネしたくなるではないか! 東北高校の選手が相手のエラーで出塁した際にペッパーミルパフォーマンスをしたところ、審判から注意された。
佐藤洋監督は「なんでこんなことで、子どもたちが楽しんでいる野球を大人が止めるのかなと。ダメな理由を聞きたい」と試合後に述べた。結局「相手のエラーで出塁したのにそれを喜ぶのは高校生らしくない」という、つまらん判断だろう。
(6)BBCが報じたことでようやくジャニーズ問題を報じる日本メディアのヘタレっぷり
3月、英・BBCがジャニーズ性加害問題をドキュメンタリーで報じた。1999年に週刊文春が14週間にわたってこの件を追及していたというのに「所詮3流ゴシップ週刊誌がなんか言ってるwwwww」的に日本の大手メディアはスルーした。
だが、「外圧」が来た瞬間、大手メディアは屈し、いかにジャニーズを排除するか、というアピール合戦を展開したのである。元々「出禁」をくらっていた主婦と生活社の「週刊女性」等はジャニーズ批判を容赦なくしていたが、(1)海外メディア様が報じた(2)他の国内大手メディアも報じた――というお墨付きにより、あらゆるメディアが批判に回れるようになったのである。
それは広告主も同じだ。散々ジャニタレを起用していたというのに、この件が「もはや逃れられない!」となったら広告契約を解除する。とにかくダサ過ぎるのがこの美しい国・JAPANなのである。
現在パーティー券問題で揺れる自民党の「安倍派」は、解体や派閥名変更を検討していると報じられたが、あのさ、ジャニーズ事務所が「SMILE-UP.」に変更したのと同じことだろうが! 結局根本問題にはメスを入れないんだよな。
(7)クマ駆除へのクレーム相次ぐ
これはすごく批判されるのが怖いのでサラリと書きます。2023年はクマによる人間への被害が例年と比較し、すさまじく多かったです。すると、秋田県を筆頭とする県の自治体に対して「かわいいクマを殺すのか!」「この人でなし!」などと抗議の電話やメールが殺到。
あなたたち、自分の町内をクマが闊歩していても同じこと言えますか? かなり怖いですよ、クマ。
(8)中日ドラゴンズ「米騒動」 2023年シーズン、セ・リーグ最下位の中日ドラゴンズ。立浪和義監督への批判も相次ぎ、不可解とも評された京田陽太選手のトレードも含め、なにかと批判を浴びるセ・リーグ球団的ポジションになった。
そんなドラゴンズに今年降って湧いてきたのが「令和の米騒動」。立浪監督が試合前に炊飯ジャーの使用を禁止したというものだ。試合前に食べ過ぎてはいけないという措置だったが、「米騒動」と話題に。「立浪監督が選手に白米を食べるのを禁止と命令した」と曲解する書き込みもネットにはあった。
これに対し、12月12日にオンエアされた「Dra fes 4DAYS」(東海ラジオ)では真相が大西崇之コーチにより明かされた。これによると、端的にまとめると 「ジャーからドッカーンと取る選手がいてこれは食べ過ぎである、と考えた。おにぎりは置き、適正量を食べてもらいたいと考えたこと」とのこと。
「米騒動」というキャッチーな言葉がウケまくったということなのかもしれない。
(9)エッフェル姉さん、「私はいじめられてる……」。今井絵理子は成果出さず 自民党女性局が7月、パリへの視察を行ったが、この際、参議院議員で女性局長の松川るい氏がエッフェル塔を前に両腕を高く上げて「エッフェル塔ポーズ」を取りSNSに投稿。以後「エッフェル姉さん」と呼ばれるようになった。
円安の中、もはや庶民はパリ旅行に行くことは困難な中、「上級国民」がパリを「視察」という名目の観光旅行的なことをしていたことが批判のやり玉に。松川氏はこの写真を削除したが、娘も連れて行った上に大使館員に面倒を見させたことが後に明らかに。
上級国民様と下級国民の間の格差をまざまざと見せつけるこの写真には批判が殺到した。後に松川氏はSmartFlashから『松川るい議員、女性局長辞任へ…「私はいじめられている」と嘆くも“後見人”茂木幹事長が引導渡す』という記事を出されるなど、被害者としての意識もあったようだ。
この「視察」に参加した今井絵理子氏は無駄な外遊ではないことを示すべく、SNSで「さきの訪越、この度の訪仏はとても実りあるものでした。これからも様々な国の方々との交流を積極的に行っていきたいと思います。また追って活動報告します!!」と述べていたが、いつ報告するんだよ~。
(10)ラーメンにティッシュを入れるな! ラーメン屋マナー論争続々
ラーメンというものはつくづくネットで話題になるものだ。今年はラーメン店をめぐり「店主が怒り」的な記事が時々見られた。それは「丼にティッシュを入れるな」や「ラーメン二郎で残すなら大盛りを頼むな!」的なもの。
これらの主張は分かるし、ティッシュを入れる者が非常識であることも分かる。ゴミ箱に捨てろ。だが、ラーメンの話題がネットで炎上しがちな理由は、結局ラーメン自体が「常連による権威の押し付け」的な側面もあるのでは。
私は「ラーメン二郎」に一度だけ行ったことがありますが、常連と店員による「マナー圧」「空気圧」に押され「ここはワシが行く店ではない」と生涯それ以降行ったことはありません。権威あるラーメン屋、怖い……。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。
デイリー新潮編集部