「殺そうとは思っていなかった」
男はそう供述して起訴内容を否認した。
11月10日に大阪地裁で行われた、殺人や脅迫などの罪に問われている稲掛躍被告(56)の初公判。稲掛被告は’22年の大晦日に行われた忘年会で、同級生の新田浩之さん(当時55)を刺殺したとされる。
「事件現場となったのは、大阪市平野区のスナック前の路上です。稲掛被告はスナックを経営する女性から生活支援を受けていて、経済的に依存し好意を抱いていたようです。しかし女性は稲掛被告に『新田さんが好きだ』と告白。振られた稲掛被告は、忘年会中になんらかの形で恨みを募らせ『なめとったらあかんぞ!』と叫び新田さんを殺害したとされます。
稲掛被告が問われている罪は、新田さんを刺殺した件だけではありません。現場から逃走し、公衆電話から女性の携帯電話に連絡を入れ次のように脅したとされるんです。『お前を殺すまで捕まらないからな!』と。稲掛被告は『脅迫はしていない』と犯行を否認しています」(全国紙司法担当記者)
『FRIDAYデジタル』は今年1月6日配信の記事で、師走の刺殺事件について詳しく報じている。再録して、トラブルの経緯や稲掛被告の犯行後の驚愕言動を振り返りたい(内容は一部修正しています)――。
「タバコを買ってくるわ」
そう言って、男は忘年会会場のスナックを抜け出した。向かった先は近くのコンビニエンスストア。男は刃渡り約14.5cmの包丁を購入すると、忘年会が終わりスナックから出てきた同級生の右脇腹を深々と刺し殺害したーー。
大阪府警捜査1課が’23年1月2日に、殺人の疑いで逮捕したと発表したのが稲掛被告だった。’22年の大晦日12月31日深夜1時過ぎ、同区路上で同級生の新田さんをコンビニで手に入れた凶器で刺殺したとされる。府警の調べに対し、稲掛被告は「殺すつもりはなかった」と殺意を否認していた。
「現場のスナックは2次会会場で、十数人が参加していたそうです。地元の同級生により前日夜から忘年会が催され、稲掛被告は相当酔っ払っていたとか。参加者の話によると、被告と被害者の新田さんの間に特にトラブルはみうけられなかったといいます。
ただ、稲掛被告は殺意を否認していますが新田さんの右脇腹のキズは深さ13cmにも達していました。強い恨みがあったのでしょう。司法解剖の結果、死因は失血死と判明しています」(全国紙社会部記者)
稲掛被告は犯行後、自転車で逃走。忘年会の参加者からの通報で、行方を追っていた府警の捜査員が被告を発見したのは年が明けた’23年の元日だった。
「場所は、稲掛被告が以前住んでいた兵庫県姫路市内の路上です。捜査員に名前を聞かれ、当初『ミヤザキ』とウソの名前を供述。その後の取り調べに対しては、素直に応じていたようです」(同前)
同級生たちが久しぶりに語り合う、楽しいはずの忘年会。加害者と被害者の間に、いったい何があったのだろう。
「周囲からみれば問題はなかったのかもしれませんが、忘年会中に2人にしかわからないトラブルがあったのかもしれません。おそらく、それがスナックを経営する女性にまつわることだったと思われます。
忘年会前に凶器を準備していなかった状況から、突発的な犯行でしょう。しかし人を刺した経験がなく、酔った勢いも重なればとり返しのつかない結果を招きます。力加減がわからず、相手の命を奪うほどのキズを負わせてしまったんです。被告は酒が抜け、あらためて事の重大さを認識し青ざめたことでしょう」(別のベテラン社会部記者)
判決は11月27日に下される予定だ。