アルコール依存症者家族の自助団体「ふぁみりーすまいる」(京都府木津川市)が奈良市内の民家を借り、依存症者の家族が一時的に避難できる施設「ほっとハウス」を開設した。奈良県内には県が運営する家庭内暴力(DV)からの保護所などもあるが、滞在中は自由な外出が禁じられるなど利用者にとって不便な面も多い。同団体は「多くの当事者家族は遠くに逃げたいわけではなく、離れているうちに本人が亡くなってしまえば一生後悔する。家族のジレンマに寄り添うことができれば」と話す。【稲生陽】
【写真で見る】社会に衝撃を与えた事件 市郊外にある築約50年の民家の一室。新しい畳にベッド、テレビなどがそろう落ち着いた雰囲気で、徒歩圏内にバス停やコンビニエンスストアなどもある。 「警察に相談しても『離婚するか、シェルター(保護所)に行くか』と判断を迫られる。愛しているけど距離を取りたい、という思いを理解してもらうのは難しい」。副代表の山崎千里さん(63)が言う。かつては夫(57)の暴力に悩み、近隣からの通報で駆け付けた警察官に言われるまま被害届を出した。夫が傷害容疑で逮捕され、自身は公務員の仕事を辞めて離れた場所に転居することになり、深く後悔したという。夫婦で断酒会に通う今は「夫はお酒さえ飲まなければ優しい誠実な人。別れたかったわけではなく、離れている間は不安と孤独で本当につらかった」と振り返る。 依存症者家族はDVから警察を通じて避難するケースも多く、県の保護所を経て、民間の母子生活支援施設に長期滞在する人もいる。県によると、保護所の入所者は年間40~50人で滞在期間は平均2週間ほどだが、安全確保のため、保護所、民間施設とも滞在中は外出が禁止され、携帯電話も施設に預けられる。望めば短期間での退所もできるが、加害者のいる自宅に戻る場合は助言という形で強く引き留めるという。県こども家庭課は「安全な分、不自由な面も確かにある。被害者が次に住む場所を見つけるための施設なので、自宅に戻ることはそもそも想定していない」と説明する。 「ほっとハウス」は数日間の短期間利用を想定し、代表の西野時雨さん(51)と山崎さんらも滞在して避難者に寄り添う。フードバンク団体から食料の提供を受けており、避難者の利用料は不要としている。2021年にアルコール依存症で音信不通になっていた兄を亡くした西野さんは「依存症者は一人にしたら死んでしまうこともあり得る。暴力は怖いけど心配で離れられないという家族のジレンマは、自助団体だからこそ分かち合えることがあるはず」と話している。 利用の問い合わせは、西野さん([email protected])。当事者家族向けの回復プログラム作成や相談会、支援者向けの勉強会なども毎月無料で実施している。
市郊外にある築約50年の民家の一室。新しい畳にベッド、テレビなどがそろう落ち着いた雰囲気で、徒歩圏内にバス停やコンビニエンスストアなどもある。
「警察に相談しても『離婚するか、シェルター(保護所)に行くか』と判断を迫られる。愛しているけど距離を取りたい、という思いを理解してもらうのは難しい」。副代表の山崎千里さん(63)が言う。かつては夫(57)の暴力に悩み、近隣からの通報で駆け付けた警察官に言われるまま被害届を出した。夫が傷害容疑で逮捕され、自身は公務員の仕事を辞めて離れた場所に転居することになり、深く後悔したという。夫婦で断酒会に通う今は「夫はお酒さえ飲まなければ優しい誠実な人。別れたかったわけではなく、離れている間は不安と孤独で本当につらかった」と振り返る。
依存症者家族はDVから警察を通じて避難するケースも多く、県の保護所を経て、民間の母子生活支援施設に長期滞在する人もいる。県によると、保護所の入所者は年間40~50人で滞在期間は平均2週間ほどだが、安全確保のため、保護所、民間施設とも滞在中は外出が禁止され、携帯電話も施設に預けられる。望めば短期間での退所もできるが、加害者のいる自宅に戻る場合は助言という形で強く引き留めるという。県こども家庭課は「安全な分、不自由な面も確かにある。被害者が次に住む場所を見つけるための施設なので、自宅に戻ることはそもそも想定していない」と説明する。
「ほっとハウス」は数日間の短期間利用を想定し、代表の西野時雨さん(51)と山崎さんらも滞在して避難者に寄り添う。フードバンク団体から食料の提供を受けており、避難者の利用料は不要としている。2021年にアルコール依存症で音信不通になっていた兄を亡くした西野さんは「依存症者は一人にしたら死んでしまうこともあり得る。暴力は怖いけど心配で離れられないという家族のジレンマは、自助団体だからこそ分かち合えることがあるはず」と話している。
利用の問い合わせは、西野さん([email protected])。当事者家族向けの回復プログラム作成や相談会、支援者向けの勉強会なども毎月無料で実施している。