長いコロナ禍で一時は市場が減少したフィットネスジムが回復基調にある。
公益社団法人日本生産性本部の『レジャー白書2021年』によれば、2019年には4,900億円と過去最高の市場規模に拡大していたジムも、翌年のコロナ禍には3,200億円にまで落ち込んでいた。しかし、翌2022年には回復基調に乗り、前年比の約30%の増加を見せていて、今後もさらなる回復が見込まれている。
ジムといえば、20代や30代が主に通っているイメージだが、近年では健康維持を目的とした中高年やシニア層にもニーズが広がっている。
都内在住の専業主婦、アヤナさん(仮名・46歳)も、ふたりの子どもたちの子育てがひと段落し、フィットネスジムに通っているひとりだ。
写真:iStock
健康維持のために通い始めたジムだったが、それ以外に思いがけない楽しみができたという。男性インストラクターAさんの”推し活”だ。その詳細は<46歳、ジム通いの「専業主婦」が絶句、20代の「男性インストラクター」を”推した”ら、思いがけない地獄が待っていた…!>で明かした。
爽やかで誰にでも親切に接するAさんにはファンが多く、それに嫉妬したアヤナさん。Aさんに自分がTOP推しであることを認めてほしくて、誕生日を企画するのだったが、それが思わぬ落とし穴を招くことになった。
「誕生日イベントの準備は1ヵ月前から始めました。フロントスタッフさんとにスタジオの装飾を相談したり、当日の衣装や誕生日プレゼント、サプライズ……。Aさんのためにかけていた時間は本当に幸せでした。
誕生日はどうやったら盛り上がるだろう、サプライズで好きなアーティストの音楽を流したら驚くかな……なんて考えて、Aさんの表情を想像するとウキウキが止まらないんです。
一緒にレッスンを受けている仲間たちも協力的ですごく嬉しかったです。『顔写真入りのケーキをプレゼントしましょうよ』というアイデアも出て、SNSの写真から選んですぐに注文しました。」
装飾やケーキ代はアヤナさん負担、衣装代は個人負担で1着3000円。誕生日プレゼントには男性向けスキンケアグッズを選び、誕生日イベントに関する総額は2万円ほどになった。アヤナさんの無理もフィットネジムは聞き入れ、当日は早朝からスタジオ内に大量のバルーンを置いてお祝いした。
「名前入りの法被をレッスン仲間全員に着てもらい、アイドルのライブで使うようなうちわも仲間に作ってもらいました。Aさんも『こんな素敵な誕生日は初めてです』と喜んでくれて大満足でした」
アヤナさん曰く、当日のレッスンは15人の仲間たちと一緒に盛大にお祝いができたそうだ。しかしそれも束の間、SNSのある投稿を見たをアヤナさんはその後大きなショックを受ける。
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「別日に行われていた夜のレッスンでも、誕生日イベントが行われていたことをAさんのSNSで知ったんです。K-POPようなファッションの20代ばかりのグループで、飾りつけも私たちとは違ってオシャレ感が溢れ出ていました。
バストやピップラインを強調したセパレートのオシャレな衣装を着ている子もなかにはいて、やっぱりAさんからしたら、自分と同世代の女性からお祝いされた方が嬉しいだろうな……と切なくなりました」
自分が手がけたイベントとのあまりの差に落ち込み、Aさんとの年齢差を改めて再認識したアヤナさんだったが、その後Aさんについての衝撃の事実を知る。
「誕生日イベントから少し経ち、SNSの投稿で今後は別店舗のパーソナルジムでもトレーナーとしても活動することを知ったんです。1回6000円くらいなので専業主婦の私としては通えない金額です。いままでAさんのTOP推しを自負していただけに、通えない事実はショックでした。Aさんが遠くに行ってしまうようですごく悲しかった。
さらに、このタイミングで家族にAさん推しがバレてしまったんです。夫からは冷ややかな目線を向けるし、子どもたちからは『インストラクターに、マジかよ…』とドン引きされました」
パーソナルトレーナーになったAさんは、引き続きアヤナさんが通うフィットネスジムでもレッスンを開いていたが、しだいにその回数も減っていったそうだ。それと並行してアヤナさんの心の拠り所であった「推し活」もなくなっていったという。
「これまではジムに行けば会えてたAさんにも会えなくり、家族からは冷たい目で見られ、落ち込んだ状態のまま嫌な事ばかりを考えていたら、食事が喉を通らなくなりました。ジムに行く気持ちにすらなれず、その結果5キロほど痩せてしまいました」
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しかしこの『予想外の減量』によって、アヤナさんは再び自信を取り戻すことになる。メンタル的には辛かったものの、ジムに通っても落ちなかった体重が減ったのだ。
「久しぶりにジムに行くと仲間から『お久しぶり! あれ? 痩せた? めっちゃきれいになったね!』と何人かから言われて。周囲から綺麗になったと言われることの快感はすごいですね。Aさんや家族のことで悩んでいたことがどうでもよくなったんです。
痩せて綺麗になったのが嬉しくて、露出の多いタイトなウエアを買ってみたり、『フゥー!』とか『イエーイ』みたいな声出しも積極的にするようになりました。
そしたらもっとジムでの時間が楽しくなっちゃって。『アヤナさんがいると盛り上がるわ!』と仲間からの評価もこれまで以上に上がりました」
以前は平日だけのフィットネスジムだったが、休日も通うようになり、新たに知り合ったレッスメンバーたちとの新しいコミュニティも出来たという。
ジム内で存在感を増したアヤナさんがレッスンにのめり込む反面、家族との時間は激減し、夫や子ども達との溝はさらに深まる一方だそうだ。露出の多いウェアは家族に内緒で着ていたが、うっかり洗濯物を取り込み忘れたことで、バレてしまったという。
「それを見た夫と息子は「うわ、まじかよ」ドン引きし、娘はあからさまに気持ち悪がって話もしませんでした。今は必要最小限のことだけを話すだけで会話もありません。
夫の冷ややかな目線は伝わりますが専業主婦ですし、子どももいるので離婚はしません。夫は仕事が忙しく子ども達も大きくなって、家族で一緒に過ごす時間も減りました。それにジムに行く前からすごく親しい家族というわけでもないので、この状態でも特に問題ないとは思っています。仲間のいるフィットネスジムこそが”私の居場所”とです」
現在もフィットネスジム通いは続いており、最近はランチ会や幅広い年代の男女混合の飲み会にも参加し、ジム仲間との交流を楽しんでいるそうだ。
年齢関係なく推し活や趣味を謳歌する人が増えている。楽しむことはとても良いことだが、家族やパートナーの気持ちを考えることなく突き進み過ぎてしまうのはいかがなものかと思う。のめりこみには注意してほしい。
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