両親の離婚、家族崩壊、母の恋人からの性的虐待、性依存による自傷行為、精神疾患の発症、2度の自殺未遂、母親への殺意――すべて1人の女性の身に起こりました。23年間の壮絶な過去を赤裸々に綴った衝撃的なノンフィクションエッセイが刊行されました。『10歳で私は穢された』(橋本なずな著、双葉社)です。
【写真】『10歳で私は穢された』橋本なずな・著(双葉社)橋本なずなさん(以下、なずな)はまだ23歳。これだけの過去を言葉でつづった勇気に心を打たれますが、執筆に際し本書では以下のような決意が綴られていました。

「今回出版の機会を得て、長年封印していた忌まわしい記憶をすべて明かすことにしました。こみ上げる吐き気にえずき、ぐしゃぐしゃに泣きながら、それでも掘り起こしました」(本書より)誰にも言えなかった。「おじさん」がいなくなったら、ママは死んでしまう本書によれば、なずなさんが8歳のとき、酒に酔い暴力をふるった父親のDVがきっかけで、両親は離婚します。平和だったはずの家族は一瞬にして崩壊。ここからなずなさんの辛い日々が始まりました。両親の離婚後、唯一のきょうだいであるお兄さんが突然、家出。溺愛していた息子の行動にショックを受けた母親は、なずなさんの前で「死にたい」と泣き崩れます。「『死にたい』なんてお願いやから、言わんといて――。ママがいなくなったら、ひとりぽっちになってしまう」(本書より)そんな母親を前に、なずなさんは心に誓いました。母親に愛してもらうため、お兄ちゃんの分まで「いい子」になると。それから1年半後、母親は地元の卓球サークルで出会った「おじさん」と交際し始め、次第に笑顔が増えるようになりました。おじさんは、なずなさんに美味しいケーキを買ってきてくれたり、ゲームで遊んでくれたり、当初は優しく接してくれました。しかし、年末のある夜、事件が起きました。母親の入浴中、おじさんは一緒にこたつに当たっていたなずなさんにいきなり襲いかかってきたのです。「でも、誰にも言えなかった。『おじさん』がいなくなったら、ママは今度こそ死んでしまう。ママのためや。私が黙っていれば、すべてがうまくいくんや」(本書より)「生きていてもいい存在」だと思いたくて…なずなさんの思いとは裏腹に「おじさん」の性的虐待は続き、エスカレートしていきます。それは耐え難いむごいものでした。しかし、母親のことを思うと真実を口にすることはできず、なずなさんは1年近くもの間、歯を食いしばりながら「おじさん」の性的虐待を耐え抜きました。その後、母親とおじさんが別れたことにより、虐待から逃れたなずなさんでしたが、10歳の少女の心に与えたダメージは計り知れないものでした。その影響は大きくなずなさんは10代後半にして性依存に陥り心の病を発症します。「『自分は生きていてもいい存在だと思いたくて』、気付いた時には男性と積極的に性的関係を持つビッチになっていた。完全な自傷行為だった」(本書より)そして20歳の誕生日を目前に控えた2020年。彼氏との些細ないさかいから精神疾患を発症し、掛け持ちでアルバイトしていたジムと飲食店を休職。追い打ちをかけるようにコロナ禍。収入はゼロになりました。「もう、いやや。死のう。いつしかベルトを首に巻いていた。病院で目覚めた――死ねなかった。」(本書より)死のうとしても死ねなくて、ようやく気づいたことなずなさんは二度の自殺未遂をし、さらには愛していたはずの母への殺意をつのらす壮絶な生活を送りました。そして最後に見つけたのが「起業」という生き方でした。なずなさんの辛い過去や心の傷は一生消えることはありません。しかし、だからこそ、同じ悩みを持つ人を1人でも多く救いたいという夢を叶えるために、カウンセラーとユーザーを結ぶマッチングアプリ「Bloste(ブロステ)」を開設。これに合わせて社会人大学生として心理学を学びながら、新しい未来への一歩を踏み出しました。「死のうとして、死ねなくて、ようやく気付いたんです。 すべてを捧げた見返りに愛してもらうほど、私はちっぽけな存在やない。私の心と体は私のもんや。生きてるだけで、ほんまに価値がある存在なんや。 仕事で失敗しても、うっかり深夜にカップラーメンをすすってしまうダメダメな『橋本なずな』でも、笑って生きててええんや、と。私と同じように生きるのがしんどい皆さんが、新しい「スタート」を切るお手伝いができるのならば、こんなに嬉しいことはありません。喜んで、この身を皆さんのために捧げます。」(本書より)企画に至ったきっかけは担当編集者の友人からの「ある告白」壮絶なエピソードが赤裸々に綴られている本書ですが、相応なエネルギーがないと執筆できないことはよくわかります。できれば忘れたいはずであろう過去にあらためて向き合い言葉で綴ったなずなさんの勇気と強さに心を打たれました。担当編集者によれば、この本を企画したのは、友人との談話にあったと言います。「たまたま私の友人が珍しく泥酔し、40年前の少女の頃に肉親から受けた性的虐待を号泣しながら告白してくれたことがありました。その姿に大きな衝撃を受けたのが企画の発端です。『どうしても本にしたいテーマ』だったにもかかわらず、実名で登場していただける方がなかなか見つからなかったのですが、縁あってSNSなどで過去のつらい体験を発信している橋本なずなさんに辿りつきました」(担当編集者)「乗り越えてきたなずなさんのメッセージを今こそ届けたい」性的虐待を誰にも言えぬまま辛い記憶を抱えている人へ伝えたいことがあるそうです。「性的虐待の被害を受けたほとんどの方は、悪夢の記憶を胸に沈めたまま生きることを余儀なくされているのではないでしょうか。性的虐待は許し難い犯罪です。人格も尊厳も徹底的に破壊し、一生消えない傷を刻みつける。泣きながら、吐きながら、それでも明日を信じて乗り越えてきたなずなさんのメッセージを、今こそ届けたいです。『あなたの心と体は、あなただけのもの。生きているだけで、あなたには凄い価値があるんです』と」(編集担当者)「生きるのがしんどい」「辛いけれど誰に相談していいかわからない」。そんな時こそ、この本を手に取ってほしいと思います。「生きる価値」をもう一度信じる言葉が多く散りばめられています。(まいどなニュース特約・松田 義人)
橋本なずなさん(以下、なずな)はまだ23歳。これだけの過去を言葉でつづった勇気に心を打たれますが、執筆に際し本書では以下のような決意が綴られていました。
「今回出版の機会を得て、長年封印していた忌まわしい記憶をすべて明かすことにしました。こみ上げる吐き気にえずき、ぐしゃぐしゃに泣きながら、それでも掘り起こしました」(本書より)
本書によれば、なずなさんが8歳のとき、酒に酔い暴力をふるった父親のDVがきっかけで、両親は離婚します。平和だったはずの家族は一瞬にして崩壊。ここからなずなさんの辛い日々が始まりました。
両親の離婚後、唯一のきょうだいであるお兄さんが突然、家出。溺愛していた息子の行動にショックを受けた母親は、なずなさんの前で「死にたい」と泣き崩れます。
「『死にたい』なんてお願いやから、言わんといて――。ママがいなくなったら、ひとりぽっちになってしまう」(本書より)
そんな母親を前に、なずなさんは心に誓いました。母親に愛してもらうため、お兄ちゃんの分まで「いい子」になると。それから1年半後、母親は地元の卓球サークルで出会った「おじさん」と交際し始め、次第に笑顔が増えるようになりました。おじさんは、なずなさんに美味しいケーキを買ってきてくれたり、ゲームで遊んでくれたり、当初は優しく接してくれました。
しかし、年末のある夜、事件が起きました。母親の入浴中、おじさんは一緒にこたつに当たっていたなずなさんにいきなり襲いかかってきたのです。
「でも、誰にも言えなかった。『おじさん』がいなくなったら、ママは今度こそ死んでしまう。ママのためや。私が黙っていれば、すべてがうまくいくんや」(本書より)
なずなさんの思いとは裏腹に「おじさん」の性的虐待は続き、エスカレートしていきます。それは耐え難いむごいものでした。しかし、母親のことを思うと真実を口にすることはできず、なずなさんは1年近くもの間、歯を食いしばりながら「おじさん」の性的虐待を耐え抜きました。
その後、母親とおじさんが別れたことにより、虐待から逃れたなずなさんでしたが、10歳の少女の心に与えたダメージは計り知れないものでした。その影響は大きくなずなさんは10代後半にして性依存に陥り心の病を発症します。
「『自分は生きていてもいい存在だと思いたくて』、気付いた時には男性と積極的に性的関係を持つビッチになっていた。完全な自傷行為だった」(本書より)
そして20歳の誕生日を目前に控えた2020年。彼氏との些細ないさかいから精神疾患を発症し、掛け持ちでアルバイトしていたジムと飲食店を休職。追い打ちをかけるようにコロナ禍。収入はゼロになりました。
「もう、いやや。死のう。いつしかベルトを首に巻いていた。病院で目覚めた――死ねなかった。」(本書より)
なずなさんは二度の自殺未遂をし、さらには愛していたはずの母への殺意をつのらす壮絶な生活を送りました。そして最後に見つけたのが「起業」という生き方でした。
なずなさんの辛い過去や心の傷は一生消えることはありません。しかし、だからこそ、同じ悩みを持つ人を1人でも多く救いたいという夢を叶えるために、カウンセラーとユーザーを結ぶマッチングアプリ「Bloste(ブロステ)」を開設。これに合わせて社会人大学生として心理学を学びながら、新しい未来への一歩を踏み出しました。
「死のうとして、死ねなくて、ようやく気付いたんです。 すべてを捧げた見返りに愛してもらうほど、私はちっぽけな存在やない。私の心と体は私のもんや。生きてるだけで、ほんまに価値がある存在なんや。 仕事で失敗しても、うっかり深夜にカップラーメンをすすってしまうダメダメな『橋本なずな』でも、笑って生きててええんや、と。私と同じように生きるのがしんどい皆さんが、新しい「スタート」を切るお手伝いができるのならば、こんなに嬉しいことはありません。喜んで、この身を皆さんのために捧げます。」(本書より)
壮絶なエピソードが赤裸々に綴られている本書ですが、相応なエネルギーがないと執筆できないことはよくわかります。できれば忘れたいはずであろう過去にあらためて向き合い言葉で綴ったなずなさんの勇気と強さに心を打たれました。担当編集者によれば、この本を企画したのは、友人との談話にあったと言います。
「たまたま私の友人が珍しく泥酔し、40年前の少女の頃に肉親から受けた性的虐待を号泣しながら告白してくれたことがありました。その姿に大きな衝撃を受けたのが企画の発端です。『どうしても本にしたいテーマ』だったにもかかわらず、実名で登場していただける方がなかなか見つからなかったのですが、縁あってSNSなどで過去のつらい体験を発信している橋本なずなさんに辿りつきました」(担当編集者)
性的虐待を誰にも言えぬまま辛い記憶を抱えている人へ伝えたいことがあるそうです。
「性的虐待の被害を受けたほとんどの方は、悪夢の記憶を胸に沈めたまま生きることを余儀なくされているのではないでしょうか。性的虐待は許し難い犯罪です。人格も尊厳も徹底的に破壊し、一生消えない傷を刻みつける。泣きながら、吐きながら、それでも明日を信じて乗り越えてきたなずなさんのメッセージを、今こそ届けたいです。『あなたの心と体は、あなただけのもの。生きているだけで、あなたには凄い価値があるんです』と」(編集担当者)
「生きるのがしんどい」「辛いけれど誰に相談していいかわからない」。そんな時こそ、この本を手に取ってほしいと思います。「生きる価値」をもう一度信じる言葉が多く散りばめられています。
(まいどなニュース特約・松田 義人)