コロナ禍で女性の遊びかたにも大きな変化が訪れた。大勢が集まり、「密」となるホストクラブを避け、出張ホストや彼氏レンタルというマンツーマンスタイルを選択する女性が増加したのだ。その勢いに乗ってママ活で女性からお小遣いをもらおうと試みた男性もいる。 マッチングアプリや出会い系サイトを20年以上ウォッチし、著書に『美男子のお値段』などがあるライターの内藤みか(@micanaitoh)が実態をリポートする。
◆マンツーマンの遊びの良さ
コロナ禍以前は、出張ホストはあまり稼げないと言われていた。連日指名が入るような人気ホストはごく一部で、女性からのニーズもあまりなく、多くは専業にできるほどは稼げなかったのだ。
しかしコロナが大きな追い風となった。感染が拡大する中、出張ホスト遊びに目を向ける女性が増え、需要が一気に増えたのだ。ホストクラブは店内に数十名がひしめいているが、出張ホストならマンツーマンなので、感染リスクがあまり高くないと考えてのことだろう。
その流れに乗って、ママ活を始めた男性がいる。「ママ活もマンツーマンだから、ニーズがあるかと思ったんです」と語る那智さん(23歳)は、大学4年生。「出張ホストだと売上の半分くらいを運営に持っていかれちゃうけれど、ママ活なら稼ぎを全部自分のものにできるから」というのが理由だ。
◆自分のモテを試したい
きっかけは就活を終え、かなり時間ができたことだった。那智さんには勝算があった。芸能系オーディションの最終審査手前まで進んだ甘いマスクの持ち主で、身長が180センチを超えている。女性に好かれやすい外観の自分はおそらく稼げるだろうと踏んだのだ。
「一応、有名私立大学の学生でもあるし、今までも同年代にそこそこモテてきたんですよ。自分がかなり年上の女性にも好かれるか、試してみたくなったのもあります。それに出張ホストだと指名を断れないけれど、ママ活だったら相手を選べるし」
◆狙いは女性経営者
かなりのハイスペック男子だけあって、ママ活を始めてすぐに何人もの女性からお誘いメッセージが舞い込んだ。その中から、女性経営者だけに絞って返事をしたという。
「人妻はバレた時に夫から慰謝料を請求されたら面倒だからパスして、風俗で働いている可能性がある若くて派手目の女性は、性病感染のリスクを考えて避けました。女性経営者はお金もありそうだし、忙しくて恋愛してなさそうだから、需要もあるだろうと」
彼は、女性経営者たちと立て続けに食事デートをした。焼肉や寿司やフルコースディナーなど、豪華で高価なものをご馳走になったという。あえて自分から料金を請求しなかったが、半分以上の女性が帰りぎわに現金を渡してきたという。
「お金をくれない女性には、次回誘われた際に『交通費もかかるしちょっと生活が大変なので』と経済事情を理由に断りました。そうすればほとんどの女性は『お金を出すからまた会って』と言ってくれた」と、那智さんは語る。
◆現金以外の報酬も
デートを週に2~3回こなすようになると、収入は20万円を超えた。しかし、それ以上に伸ばすのは困難だった。「精神的に疲れるので毎日はデートを入れられなかったし、彼女たちがくれるのは1万円か2万円で、それ以上の額は抵抗があるみたいだったんで」と那智さんは振り返る。
「現金が無理ならモノでもらおうと考え、内定式に着るスーツが必要だとか、卒業論文のためにパソコンが欲しいなどとおねだりをし続けたんです。そうしたら、毎回服を買ってくれる人や、20万円のパソコンをポンと買ってくれる人もいたんで、言ってみるもんですね」

◆限界を感じた時
「恋愛に飢えている女性ほど、もっともっとと、キス以上を求めてきたんです。温泉旅行に行かないかと言われたことも何度もありましたが、絶対に夜のことを期待しているわけじゃないですか。いろんな理由をつけて、断り続けました」
那智さんは最初のうちは「性的なことをするのなら、そのぶんお手当も上乗せしてほしい」という気持ちがあった。しかし女性から「お小遣いを今までの倍あげるから、エッチもしたい」と切り出されたとき、「やっぱりそれはできない」と抵抗を感じたという。
月額20万円をラクに稼いだとは到底思えなかった。彼女らのメールにまめに返信したり、デートで彼氏のように振る舞ったりとかなり尽くしてきたからだ。
◆終わりはあっけなく
「結局は色恋になっちゃってたし、こんなんならホストになったほうが稼げるかもと、実際、ホストに体験入店もしたんです。でも大学にも行かなくてはならないので、深夜まで飲んでるわけにいかなくて、やっぱ無理だなと」
そしてママ活生活の終わりはあっけなく訪れた。那智さんに恋人ができたのだ。「彼女のことを本気で好きになっちゃったので、もうママ活できなくなって自主的にやめました。女性たちの連絡先も全部消して、今はコーヒーショップでバイトしてます」と言う。
「もう年上女性に迫られることもなく平和に働いてますよ。やっぱり僕には同年代とのデートが合ってますね。話も合うし、気も使わなくていいし。ママ活をしたからこそ、普通のデートの楽しさがよくわかりました」と笑う那智さんは、本当にママ活から卒業できたと言えるのかもしれない。
<取材・文/内藤みか>