コロナ禍以降、有名タレントの自殺報道が相次ぎ、メディアを騒がせてきた。最近では歌舞伎俳優・市川猿之助容疑者(47)の自殺ほう助事件が大きな話題になり、7月12日にはタレント・ryuchellさんが27歳の若さで命を絶ったニュースがあった。
【写真】「イクメン オブ ザイヤー2018」を受賞したryuchellさん こうした自殺報道の最後には、「いのちの電話」をはじめとする相談窓口の電話番号が記載されることが多い。「いのちの電話」の場合、ナビダイヤルに電話すると全国50か所にある協会のひとつを案内される仕組みだが、いま利用者の間でこんな声が聞こえている。──「何度かけても電話がつながらない」。

「愛知いのちの電話協会」の事務局長・加藤明宏氏は、理由をこう語る。「昔は相談員が200人ほどいましたが、高齢化もあって徐々に人数が減り、160人ほどになっています。すべての電話を取れるわけではなく、過去の調査では、応対できた数の10倍以上の電話がかかっているようで、なかなかつながらないとご批判をいただくこともあるんです」嫌がらせの電話も 自死に関する報道で「いのちの電話」などの相談窓口を記載するのは、報道が自殺願望(希死念慮)のある人に心理的な影響を与え、連鎖を起こす可能性があるからだ。『ルポ自殺』などの著書があるジャーナリストの渋井哲也氏はこう言う。「著名人の自殺報道は、手段・方法を広めてしまうという問題がある。またもともと願望があり、その著名人のファンであったり属性が似ていたりする人に、より強く影響する可能性があります。 メディアは記事の末尾やテレビのテロップで相談窓口を掲載していますが、ryuchellさんの取り上げられ方を見ると、『これを載せれば大きく報じていいんだ』という安易な意識を感じてしまう」 厚労省は女優・竹内結子さんの自殺があった2020年9月から、有名人の自殺が起きるたびにWHOのガイドラインを引用して報道の抑制と窓口の紹介を呼びかけてきた。「いのちの電話」が周知される一方で、苦悩もあると「千葉いのちの電話協会」相談員の60代女性が話す。「個人的な感覚ですが、自殺報道があると、電話の本数が増え、つながらなくなることが多くなる。嫌がらせなどの電話も増えます。私たちは自殺防止を第一に掲げているので、『今死ぬしかない』と思い詰めている方とつながってほしいという思いがある。電話番号が周知されるのはいいことなのですが、一方で心ない電話が増えてしまうのは、つらい状況だと言わざるを得ません」 社会の命綱となっている「いのちの電話」は、いまこの瞬間も様々な人の苦悩に耳を傾けている。主な相談窓口・いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟)ナビダイヤル:0570-783-556午前10時~午後10時フリーダイヤル:0120-783-556毎日午後4時~同9時毎月10日:午前8時~翌日午前8時※週刊ポスト2023年8月4日号
こうした自殺報道の最後には、「いのちの電話」をはじめとする相談窓口の電話番号が記載されることが多い。「いのちの電話」の場合、ナビダイヤルに電話すると全国50か所にある協会のひとつを案内される仕組みだが、いま利用者の間でこんな声が聞こえている。──「何度かけても電話がつながらない」。
「愛知いのちの電話協会」の事務局長・加藤明宏氏は、理由をこう語る。
「昔は相談員が200人ほどいましたが、高齢化もあって徐々に人数が減り、160人ほどになっています。すべての電話を取れるわけではなく、過去の調査では、応対できた数の10倍以上の電話がかかっているようで、なかなかつながらないとご批判をいただくこともあるんです」
自死に関する報道で「いのちの電話」などの相談窓口を記載するのは、報道が自殺願望(希死念慮)のある人に心理的な影響を与え、連鎖を起こす可能性があるからだ。『ルポ自殺』などの著書があるジャーナリストの渋井哲也氏はこう言う。
「著名人の自殺報道は、手段・方法を広めてしまうという問題がある。またもともと願望があり、その著名人のファンであったり属性が似ていたりする人に、より強く影響する可能性があります。
メディアは記事の末尾やテレビのテロップで相談窓口を掲載していますが、ryuchellさんの取り上げられ方を見ると、『これを載せれば大きく報じていいんだ』という安易な意識を感じてしまう」
厚労省は女優・竹内結子さんの自殺があった2020年9月から、有名人の自殺が起きるたびにWHOのガイドラインを引用して報道の抑制と窓口の紹介を呼びかけてきた。「いのちの電話」が周知される一方で、苦悩もあると「千葉いのちの電話協会」相談員の60代女性が話す。
「個人的な感覚ですが、自殺報道があると、電話の本数が増え、つながらなくなることが多くなる。嫌がらせなどの電話も増えます。私たちは自殺防止を第一に掲げているので、『今死ぬしかない』と思い詰めている方とつながってほしいという思いがある。電話番号が周知されるのはいいことなのですが、一方で心ない電話が増えてしまうのは、つらい状況だと言わざるを得ません」
社会の命綱となっている「いのちの電話」は、いまこの瞬間も様々な人の苦悩に耳を傾けている。
・いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟)
ナビダイヤル:0570-783-556午前10時~午後10時
フリーダイヤル:0120-783-556毎日午後4時~同9時毎月10日:午前8時~翌日午前8時
※週刊ポスト2023年8月4日号