「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の本部がある施設の外では、日本メディアからの取材攻勢に備えて厳戒態勢を敷いており、ピリピリとした雰囲気の中で合同結婚式が執り行われました」(民放テレビ局記者)
韓国のソウル市から車で2時間ほどの場所にある加平郡。旧統一教会の施設が建ち並ぶこの場所で、合同結婚式が行われたのは5月7日のこと。韓国では、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁の80歳の誕生記念行事や、各界から有識者を招いた総会など、8日間にわたって各種行事が開かれていた。教団の発表によれば、この日の合同結婚式にはオンラインも含めて世界約150ヵ国、1万6000人の男女が参加。本誌が関係者から入手した内部写真からは、各行事の異様な雰囲気が伝わってくる。
「天一国の誇るべき祝福家庭になることを祈ります」
集まった新郎新婦を前に、壇上から語りかけるのは韓総裁だ。参加者によると、金色の韓服を着た総裁の姿を間近にして、感極まって涙を流すカップルもいた。安倍晋三元首相銃撃事件後、初となる今回の式には、東京会場なども含め1000人近くの日本人が参加。そのうち約550人の日本人が韓国での式に出席した。
「参加費用として食口(信者)は70万円、2世の方は20万円を献金することになっています」(教団関係者)
合同結婚式の会場となった「HJグローバルアートセンター」は、ステージに向かって左手に合唱団、右手には国内外のVIP席が912席も用意され、「満席状態だった」と話すのは別の参加者だ。
「”聖婚問答”と呼ばれる誓いの儀式や、指輪の交換が行われました。その後、ゲスト歌手による公演があり、フィナーレでは真のお母さま(総裁)が歌をアカペラで披露する場面も。会場の食口たちも一緒に感謝の歌を熱唱していました」
’21年9月に教団の友好団体が開いたイベントには、安倍元首相とドナルド・トランプ前米大統領がビデオメッセージを寄せたことでも知られるが、今年も一連の行事にトランプ氏がビデオ出演した。
一見すると、豪華絢爛なこのイベントは、「内部を引き締める狙いもある」(前出・教団関係者)との見方がある。
「日本での批判が高まっている中、教団内部でもさまざまな歪みが生じており、最近では、ある最高幹部が更迭されたとの情報も出ている」(在韓ジャーリスト)
高額献金や2世問題などで今も苦しめられている人々の目に、この盛大なイベントは、どう映るのだろうか。
『FRIDAY』2023年6月2日号より
取材・文:甚野博則(ノンフィクションライター)