2023年5月8日、銀座のど真ん中で起きた仮面強盗事件。白昼堂々、高級時計ロレックスが強奪されたことで、日本中に衝撃を与えた。
通行人たちが撮影した映像はまるで映画のようだったし、国会や警視庁前など、“警察官が多い地域”を逃走したことも話題になった。
逮捕された少年らは、全員が16~19歳の少年だったが、その“素性”に注目が集まっている。私たちが取材を進めると、当初の予想を覆す事実も明らかになってきた。
事件当日、赤坂のマンションへの住居侵入で現行犯逮捕された4人の少年。「お互いに面識がない」という趣旨の供述をしたことで、“闇バイト”で集められた少年たちによる犯行ではないか、との印象を抱いた人も多いだろう。
しかし、その後の警視庁の捜査によって、4人のうち3人(19歳の少年2人と16歳の少年)は、顔見知りで地元の遊び仲間だったことが分かった。4人は全員、神奈川県在住だった。3人はいわゆる“不良グループ”のようなつながりだったとみられている。
さらに事件は、驚きの展開を見せる。
銀座の事件の6日前(5月2日)、岐阜・大垣市の住宅で、男4人が押し入って男性(70代)に暴行を加え、金庫が奪われる事件が発生。
10代の少年3人が逮捕されたが、そのうちのひとりが、「銀座仮面強盗事件で逮捕された19歳の少年に、岐阜の強盗を指示された」という趣旨の供述をしたというのだ。
これで銀座事件の少年らが、広域強盗グループである可能性が浮上する。さらに、岐阜で逮捕された少年の中には、銀座で逮捕された少年たちと同じ神奈川県在住の少年もいた。
広域にわたって強盗を繰り返す“不良グループ”なのだろうか。銀座の強盗で逮捕された少年が、岐阜事件の“指示役”だったとしたら―ー。
2つの事件の“キーマン”ともいえる19歳の少年。今回、彼の逮捕後の説明がFNNの取材で判明した。19歳の少年は「俺たちは闇バイトで集めた素人集団ではない。プロの犯罪集団なんだ」という趣旨の説明をしているというのだ。
令和の犯罪と言われる“闇バイト”ではなく、昔ながらの“不良少年グループ”の犯行なのか?後者だとしても、あまりにも広域かつ凶悪な犯罪の性質から、“昔ながら”とも言いづらい。
捜査幹部の話では、今回の事件の前から、少年犯罪グループにはある特徴があるという。実行犯などが仮に逮捕された場合、「警察には“闇バイトで応募した”と言え!」とリーダーから指示されているケースが多いというのだ。指示役や背景にいる人間が脅し、関係性を曖昧にして指示役に捜査が及ばないようにするためだろう。現代版“不良少年グループ”は、闇バイトを「隠れみの」にして凶悪化している可能性もある。
このほど、あるデータが警視庁から発表された。東京都内の少年らがどのようにして、犯罪の加担していくのか“きっかけ”を調べたものだ。
強盗のデータではなく、あくまで特殊詐欺の受け子・出し子で検挙された少年についての割合ではあるが、
●友人の紹介………………39.9%●先輩の紹介………………20.3%●SNS(闇バイトなど)…28.8%(2022年中)
つまり、「友人・先輩」の紹介の合計は、闇バイトを含むSNSきっかけを大きく上回り、倍以上なのだ。
特殊詐欺での“闇バイト”もかなり騒がれたが、少年の犯罪加担の理由は依然として「遊び仲間」など、リアルなつながりの不良少年グループいうケースが多いのだ。
別の捜査幹部はこう語る。闇バイトの組織形態は、ー臠函畛惻役 勧誘役 SNSで集められた実行役、という「ピラミッド型」。すぐに捕まるのはの実行役で、捜査が、勧誘役・指示役まで及ぶのは難しい一方、実行役同士もその場限りの「バイト感覚」なので、指示役への「忠誠心」はない。
一方「不良少年グループ」の場合は、遊び仲間グループの中に、リーダー格が存在する。それぞれが「顔見知り」でリアルなつながりがある不良グループのため“忠誠心”があり、「仲間のことは話さない」というパターンも多い。そのため、銀座のグループの少年のように、仲間を守るため「お互いを知らない」と供述するケースもある。
いずれにしろ「不良少年グループ」にも、背後には暴力団組織などがいるパターンはかなり多いと考えられる。
以前の少年犯罪より「凶悪」になった印象はあり、背後の指示役の徹底的な捜査、組織的背景の解明が待たれる。
(フジテレビ 社会部警視庁クラブ 林理恵)