「もし負けたらと思うと本当に怖かったです。負けたら、私が『反日の過激派』というレッテルは一生離れない」(辛淑玉さん)
沖縄の米軍基地反対運動を扱ったTOKYO MXのテレビ番組「ニュース女子」で名誉を傷つけられたとして、市民団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シン・スゴ)さんが、制作会社DHCテレビジョン(現・虎ノ門テレビ)に損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁はDHCテレビ側の上告を棄却・不受理とする決定をした。
損害賠償550万円の支払いと謝罪文のウェブサイト掲載を命じた1審・東京地裁判決、2審・東京高裁判決が確定した。決定は4月26日付。
5月1日に都内で開かれた記者会見で、辛さんは「大変だった。勝たなければいけない裁判でした。負けてはいけない裁判でした。何度もくじけそうになった」と振り返った。
さらに「ネットのガセネタとして扱われていたものが、地上波で流れてお墨付きが与えられた」としたうえで、制作会社やテレビ局に対して、番組で取り上げた沖縄の平和運動に取り組む人々にも謝罪すべきだと強調した。
2017年1月放送の番組は、基地建設の反対派が、警察などに暴力や犯罪行為などをしており、辛さんが経済的に支援しているなどと報じた。こうした報道内容について、1審判決は、辛さんの名誉を傷つけるものだと認め、2審判決も1審判決を支持した。
一方、番組の司会だった長谷川幸洋さんに対する請求は認められなかった。
辛さんの代理人をつとめた佃克彦弁護士は「他の類似事件に照らして、賠償額は高額と捉えられる」と評価する。DHCテレビのウェブサイトはすでに閉鎖されたため、謝罪文は掲載されないが、問題の番組がサイトで公開され続けることもなくなった。
2018年の提訴からおよそ5年の裁判に「勝訴」で決着がついたわけだが、辛さんの表情は曇ることもあった。
同年からドイツに移住し、現地の大学で働いていた。番組の放送をきっかけとしたネットの誹謗中傷に耐えられなくなったからだという。辛さんは自ら、ドイツ行きを「逃げた」と表現する。「すごく恥ずかしいんですけど、ドイツには逃げました。自分が死なないでなんとかいられたのは医者の力を得たから。暴力の場から逃してくれる人がいて、ドイツに行きました」●「差別が金になる社会」にNO在日朝鮮人女性の辛さんに対する誹謗中傷の背景として、辛さんは「レイシズムのほかにミソジニーもあると思う」「生意気な朝鮮人の女の口をふさぐことが彼らにとってどれだけ気持ちいいことか」と指摘する。「差別は金になります。この社会を覆っているのは差別ビジネスです。差別すれば視聴率が上がり、『いいね』が付き、差別した動画にも広告収入が入る。いま止めないとダメです」(辛さん)
同年からドイツに移住し、現地の大学で働いていた。番組の放送をきっかけとしたネットの誹謗中傷に耐えられなくなったからだという。辛さんは自ら、ドイツ行きを「逃げた」と表現する。
「すごく恥ずかしいんですけど、ドイツには逃げました。自分が死なないでなんとかいられたのは医者の力を得たから。暴力の場から逃してくれる人がいて、ドイツに行きました」
在日朝鮮人女性の辛さんに対する誹謗中傷の背景として、辛さんは「レイシズムのほかにミソジニーもあると思う」「生意気な朝鮮人の女の口をふさぐことが彼らにとってどれだけ気持ちいいことか」と指摘する。
「差別は金になります。この社会を覆っているのは差別ビジネスです。差別すれば視聴率が上がり、『いいね』が付き、差別した動画にも広告収入が入る。いま止めないとダメです」(辛さん)