「もー、限界です」「理不尽なことで怒られてさ そればっかやったらこっちもやる気でらんやん」――。海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)を母港とする護衛艦「あけぼの」の海士長だった西山大弥(ひろや)さん(当時20歳)は2021年2月に命を絶つ数日前、母美佐江さん(46)にLINE(ライン)でメッセージを送っていた。
海上自衛官自殺、両親が国を提訴 「長時間労働やパワハラ対策怠る」 同県川棚町出身の西山さんは4人兄弟の三男。海上自衛官だった兄2人(既に退官)の後を追い、高校卒業後の19年4月に入隊した。父賢二さん(48)は「給料の中から弟に小遣いを渡すなど、優しく面倒見の良い息子だった」と話す。

西山さんは入隊直後から、賢二さんに「複数の上官がそれぞれ言っていることが違い、誰の言うことを聞けばいいのかわからず、理不尽に怒られることもある。やめたい」と度々相談していた。賢二さんは「国民を守る仕事だから、しんどいこともある。分からないことがあれば、一番偉い人の言うことを聞いていればいい。もう少し頑張れ」などと励ましていたという。 西山さんは21年2月10日朝、あけぼのの艦内で自殺しているのが見つかった。その直前の同4~5日、美佐江さんに「もー、限界です」などとラインでメッセージを送っていたのが、最後のやり取りとなった。 賢二さんは「まさか息子だけを狙い撃ちにするような、陰湿なパワハラを受けていたとは思わなかった」と驚く。そして「知っていたら、自衛官をやめさせていた。息子の気持ちを理解してやれず、守ってやれなかったことを申しわけなく思う」と悔いる。 西山さんの同僚だった元自衛官の男性(22)も取材に応じた。男性は、西山さんが「自己反省ノート」などの指導を受ける原因ともなった、未成年の隊員同士の飲酒に参加しており「なぜ、西山だけが反省ノートの作成などを命じられたのか、不思議だった。上官から目をつけられているようだった」と振り返る。 男性によると、問題の飲み会以前にも上官の送別会で未成年だった自身も飲酒したことがあったが、指導されることはなかったという。男性は「『飲んでもいいけど、バレるなよ』と上官から言われたこともあった」と打ち明ける。 高校時代からの同級生でもあった友の死に、男性は願った。「これから海自に憧れて入隊する人が苦しい思いをしないよう、組織が変わってほしい」【松本美緒】 ◇ 西山さんが自殺したのは、海自が長時間労働やパワーハラスメントを防ぐなどの対応を怠ったためだとして、西山さんの両親が国に計約7800万円の損害賠償を求める訴訟を長崎地裁大村支部に起こした。相談窓口・#いのちSOS 「生きることに疲れた」などの思いを専門の相談員が受け止め、一緒に支援策を考えます。 0120・061・338=フリーダイヤル。月・木、金曜は24時間。火・水・土・日曜は午前6時~翌午前0時・いのちの電話 さまざまな困難に直面し、自殺を考えている人のための相談窓口です。研修を受けたボランティアが対応します。 0570・783・556=ナビダイヤル。午前10時~午後10時。 0120・783・556=フリーダイヤル。午後4時~同9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時、IP電話は03-6634-7830(有料)まで。・まもろうよ こころ(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/) さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/) 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。
同県川棚町出身の西山さんは4人兄弟の三男。海上自衛官だった兄2人(既に退官)の後を追い、高校卒業後の19年4月に入隊した。父賢二さん(48)は「給料の中から弟に小遣いを渡すなど、優しく面倒見の良い息子だった」と話す。
西山さんは入隊直後から、賢二さんに「複数の上官がそれぞれ言っていることが違い、誰の言うことを聞けばいいのかわからず、理不尽に怒られることもある。やめたい」と度々相談していた。賢二さんは「国民を守る仕事だから、しんどいこともある。分からないことがあれば、一番偉い人の言うことを聞いていればいい。もう少し頑張れ」などと励ましていたという。
西山さんは21年2月10日朝、あけぼのの艦内で自殺しているのが見つかった。その直前の同4~5日、美佐江さんに「もー、限界です」などとラインでメッセージを送っていたのが、最後のやり取りとなった。
賢二さんは「まさか息子だけを狙い撃ちにするような、陰湿なパワハラを受けていたとは思わなかった」と驚く。そして「知っていたら、自衛官をやめさせていた。息子の気持ちを理解してやれず、守ってやれなかったことを申しわけなく思う」と悔いる。
西山さんの同僚だった元自衛官の男性(22)も取材に応じた。男性は、西山さんが「自己反省ノート」などの指導を受ける原因ともなった、未成年の隊員同士の飲酒に参加しており「なぜ、西山だけが反省ノートの作成などを命じられたのか、不思議だった。上官から目をつけられているようだった」と振り返る。
男性によると、問題の飲み会以前にも上官の送別会で未成年だった自身も飲酒したことがあったが、指導されることはなかったという。男性は「『飲んでもいいけど、バレるなよ』と上官から言われたこともあった」と打ち明ける。
高校時代からの同級生でもあった友の死に、男性は願った。「これから海自に憧れて入隊する人が苦しい思いをしないよう、組織が変わってほしい」【松本美緒】

西山さんが自殺したのは、海自が長時間労働やパワーハラスメントを防ぐなどの対応を怠ったためだとして、西山さんの両親が国に計約7800万円の損害賠償を求める訴訟を長崎地裁大村支部に起こした。
相談窓口
・#いのちSOS
「生きることに疲れた」などの思いを専門の相談員が受け止め、一緒に支援策を考えます。
0120・061・338=フリーダイヤル。月・木、金曜は24時間。火・水・土・日曜は午前6時~翌午前0時
・いのちの電話
さまざまな困難に直面し、自殺を考えている人のための相談窓口です。研修を受けたボランティアが対応します。
0570・783・556=ナビダイヤル。午前10時~午後10時。
0120・783・556=フリーダイヤル。午後4時~同9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時、IP電話は03-6634-7830(有料)まで。
・まもろうよ こころ(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/)
さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。
・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/)
悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。