埼玉県警狭山署管内の金子駐在所(入間市南峯)で、サバトラのメス猫が「猫駐在」として活躍している。
駐在員の浅倉要一巡査部長(62)は「愛くるしくて大切な所員です」と話す。猫駐在は署員手作りの制帽をかぶり、駐在所の窓から地域の人たちを見守っている。(水野友晴)
JR八高線金子駅から徒歩1分。金子駐在所の中には、猫がテーブルの上で伸びやあくびをしている。浅倉さんは「猫駐在はいつもこんな感じで働いてますよ」と優しくなでながら話す。
猫と浅倉さんとの出会いは2021年12月。駐在所の近くでさまよっていて、浅倉さんが近づいても逃げなかった。誰かの猫かもしれないと思い、その日は見守ったが、日に日に痩せていったことから約1週間後に保護した。狭山署で飼い主を調べるため、マイクロチップの有無を検査したがなかった。飼い主が現れるまで、妻の美佐子さん(61)と相談して飼うことに決めた。
飼い始めてすぐに甘えん坊で人なつっこい性格だとわかった。駐在所の窓から外を眺めるのが大好きで、リードをつけて外でひなたぼっこをすることも。浅倉さんと朝と夜のパトロールである散歩も欠かさない。
いつからか「猫をなでたい」「写真を撮りたい」と、子供から高齢者まで多くの人が駐在所を訪れるようになった。住民と話す機会も増え、浅倉さんは猫を一緒になでながら「特殊詐欺に気をつけてね」などと伝えている。男子高校生に警察の仕事について話したこともあった。その後、男子高校生は県警を受験し見事合格した。美佐子さんは「猫をきっかけにいろんな話ができる」と目を細める。
そうした活躍が評価され、今年1月、狭山署地域課員手作りの制帽が猫に贈られた。神永修一地域課長は「署内のアイドル的な存在で、多くの署員に大事にされている」と語る。
浅倉さんや地域の人は「猫」や「猫駐在」と呼んでいる。猫に名前をつけないのは、飼い主が現れるかもしれないという思いがあるからだ。浅倉さんは「飼い主が現れるまで、これからも一緒に地域を見守りたい」と意気込んでいる。