「いまさら三権分立って言われても……」。ルフィグループの移送準備を進めてきた警視庁ではこんな声が飛び交っているという。確かに気持ちがわからないでもない。苦労を重ねて日程を固めた直後、まさかの“ちゃぶ台返し”をされたのだから…。
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【写真11枚】露出度の高い“挑発的なドレス”をまとうマニラの「美人ホステス」 ルフィが豪遊したパブでの実際の写真をみる“でっちあげ訴訟”を終わらせないと送還できない ルフィ騒動が始まって1週間。日比両国は、特殊詐欺容疑で警視庁から逮捕状が出ている4人の早期引き渡しを話し合ってきた。そこに障壁として立ちはだかっていたのが、渡辺優樹容疑者ら3人がいまも抱えるフィリピン国内での裁判である。

渡辺優樹容疑者「彼らは、妻から暴力を振るわれたなどという理由で告訴されている。その裁判が終わらないと法的に国外退去させられないのです。もっとも、フィリピン当局は強制送還を逃れるためにでっち上げた告訴と見ています」(社会部記者) そんな国内事情を抱えながらも、レムリア司法相は早期の移送実現に向けて強気な発言を繰り返してきた。「ほぼ毎日、日本メディアの前で『日本政府に全面的に協力する』、『出来る限り早く送還したい』と言い続けて来ました。1月31日には『一人は一両日中に』、『上手くいけば今週末までに、4人のうち2人を引き渡すことができる』とも発言しました」(同)航空会社との調整 フィリピン側がここまで急ぐのも、8日にマルコス大統領の初訪日が控えているからだ。フィリピンにとって日本は最大のODA貢献国。初訪日を成功させるためにも強制送還を手土産にしたいのである。 一方、日本側は一貫して4人同時の引き渡しを要請してきた。往復するより一度で済ませた方がはるかに楽だからである。 「警備上の理由もありますが、航空会社との調整が厄介なのです。一番後ろの席に捜査員が挟んで座るのですが、座席の確保が必要。そもそも、航空会社は他の乗客に迷惑がかかる容疑者移送を嫌がります。そんな面倒を二度もするくらいならば、早く裁判を終結させて4人同時に、というのが日本側の要望です」(同) 渡辺容疑者は21年4月にフィリピン当局に拘束されたが、「元妻」が告訴したのはその1カ月後。確かに、タイミングだけ見ても不自然である。実際、今村磨人容疑者に対する告訴は、昨年末に棄却された。藤田聖也容疑者についても棄却される見通しが立っている。そもそも、4人全員が告訴されたこと自体がおかしな話なのである。「いったい何が起きているのだ」 司法省は裁判所に渡辺・小島智信両容疑者に対する告訴の棄却を求め、急遽、2日に二人の審理を実施する運びになった。「これで送り出す側の見通しがようやく立ったと、双方、胸をなで下ろした。マルコス大統領訪日に間に合ったねと。警視庁は航空会社と調整した結果、7日に送還を決めました」(同) それが2月1日のことである。だが、その審理でまさかの大どんでん返しが起きた。裁判所は告訴を棄却せず、7日午前に再審理すると判断したのだ。 「警視庁幹部は『いったい何が起きたんだ』と慌てふためいていました。他国に失礼な言い方にはなりますが、本来、三権分立がある以上、棄却するか否かは裁判所が独自に判断するものです。けれど、ドゥテルテ時代に麻薬撲滅政策で超法規的な殺人を行ってきたような国家なので、まさか、政府の方針に裁判所が従わないとは誰も想定していなかった」(同)先がまったく読めない 7日午前に再審理されるが、結果を待ってから夜の便にリスケというわけにもいかないという。なぜ裁判官は棄却しなかったのか。現地で取材を続ける記者も首をかしげる。「裁判官のキャラなのではないか。日本にもたまに独自色のある判断を下す裁判官がいますがあれと同じ。もちろん棄却しないと完全に決めたわけではなく、慎重に証拠を調べてから判断したいということなんでしょう。この結果を受け、レムリア氏も『2人を先に送還する方向で調整したい』と話していますが、日本側がそれを呑むかは未知数です。もっとも怖いのは、裁判所が審理続行を決めること。そうなったら裁判が終わるまで2人の引き渡しが先延ばしされることになってしまう。場合によっては1年以上かかることも予想されます」 いつになったら終わるのか、先が見えないーー。あちこちからこんなため息ばかり聞こえてくるのである。デイリー新潮編集部
ルフィ騒動が始まって1週間。日比両国は、特殊詐欺容疑で警視庁から逮捕状が出ている4人の早期引き渡しを話し合ってきた。そこに障壁として立ちはだかっていたのが、渡辺優樹容疑者ら3人がいまも抱えるフィリピン国内での裁判である。
「彼らは、妻から暴力を振るわれたなどという理由で告訴されている。その裁判が終わらないと法的に国外退去させられないのです。もっとも、フィリピン当局は強制送還を逃れるためにでっち上げた告訴と見ています」(社会部記者)
そんな国内事情を抱えながらも、レムリア司法相は早期の移送実現に向けて強気な発言を繰り返してきた。
「ほぼ毎日、日本メディアの前で『日本政府に全面的に協力する』、『出来る限り早く送還したい』と言い続けて来ました。1月31日には『一人は一両日中に』、『上手くいけば今週末までに、4人のうち2人を引き渡すことができる』とも発言しました」(同)
フィリピン側がここまで急ぐのも、8日にマルコス大統領の初訪日が控えているからだ。フィリピンにとって日本は最大のODA貢献国。初訪日を成功させるためにも強制送還を手土産にしたいのである。
一方、日本側は一貫して4人同時の引き渡しを要請してきた。往復するより一度で済ませた方がはるかに楽だからである。
「警備上の理由もありますが、航空会社との調整が厄介なのです。一番後ろの席に捜査員が挟んで座るのですが、座席の確保が必要。そもそも、航空会社は他の乗客に迷惑がかかる容疑者移送を嫌がります。そんな面倒を二度もするくらいならば、早く裁判を終結させて4人同時に、というのが日本側の要望です」(同)
渡辺容疑者は21年4月にフィリピン当局に拘束されたが、「元妻」が告訴したのはその1カ月後。確かに、タイミングだけ見ても不自然である。実際、今村磨人容疑者に対する告訴は、昨年末に棄却された。藤田聖也容疑者についても棄却される見通しが立っている。そもそも、4人全員が告訴されたこと自体がおかしな話なのである。
司法省は裁判所に渡辺・小島智信両容疑者に対する告訴の棄却を求め、急遽、2日に二人の審理を実施する運びになった。
「これで送り出す側の見通しがようやく立ったと、双方、胸をなで下ろした。マルコス大統領訪日に間に合ったねと。警視庁は航空会社と調整した結果、7日に送還を決めました」(同)
それが2月1日のことである。だが、その審理でまさかの大どんでん返しが起きた。裁判所は告訴を棄却せず、7日午前に再審理すると判断したのだ。
「警視庁幹部は『いったい何が起きたんだ』と慌てふためいていました。他国に失礼な言い方にはなりますが、本来、三権分立がある以上、棄却するか否かは裁判所が独自に判断するものです。けれど、ドゥテルテ時代に麻薬撲滅政策で超法規的な殺人を行ってきたような国家なので、まさか、政府の方針に裁判所が従わないとは誰も想定していなかった」(同)
7日午前に再審理されるが、結果を待ってから夜の便にリスケというわけにもいかないという。なぜ裁判官は棄却しなかったのか。現地で取材を続ける記者も首をかしげる。
「裁判官のキャラなのではないか。日本にもたまに独自色のある判断を下す裁判官がいますがあれと同じ。もちろん棄却しないと完全に決めたわけではなく、慎重に証拠を調べてから判断したいということなんでしょう。この結果を受け、レムリア氏も『2人を先に送還する方向で調整したい』と話していますが、日本側がそれを呑むかは未知数です。もっとも怖いのは、裁判所が審理続行を決めること。そうなったら裁判が終わるまで2人の引き渡しが先延ばしされることになってしまう。場合によっては1年以上かかることも予想されます」
いつになったら終わるのか、先が見えないーー。あちこちからこんなため息ばかり聞こえてくるのである。
デイリー新潮編集部