「子どもが性被害にあった」と聞くと、「大人の男性から女児への加害」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ですが中には、女性の加害者や男児の被害者もたくさん存在しています。そして「子どもから子どもへの性加害」も――。
1月27日に発売された、ゆっぺさん作のエッセイ漫画『5歳の私は、クラスの男子から性被害を受けました。~なんで言わないの?~』では、幼児から幼児をはじめとする「子ども同士の性被害」の実態が描かれています。
自らの体験をマンガ化した想いについて、ゆっぺさんにお話を聞きました。3回にわたりお届けします。※本作は、著者のゆっぺさんが30年以上前に体験した実話です。現在の幼稚園や保育園での対応とは異なります。また、当時の幼稚園や保育園で働く先生方を批判するものでもありません。
◆性被害のことを親に知られたら“怒られる”と思った
――幼稚園のお昼寝中に、同級生の「ボス太郎」くんが下着の中に手を入れてきたと漫画にありました。当時はどのような気持ちでしたか。
ゆっぺさん(以下、ゆっぺ)「子どもなので性被害という言葉はわからなかったのですが、今まで受けていたいじめとは明らかに違うと感じました。当時は『恥ずかしい』『誰にも知られたくない』という気持ちが大きかったです」
――当時は、ご両親にも相談できなかったとマンガにありました。
ゆっぺ「はい。私の家は親がとても厳しかったので、親に知られてしまったら逆に叱られると思ったんです。当時は『怒られるから隠さなきゃいけない』と、必死に親にバレないようにしていました。でも幼稚園のトイレで排泄行為をのぞいてくるなど、ボス太郎くんの加害内容がどんどんエスカレートしていったので、耐えきれなくなって幼稚園の先生に相談しました」
◆子どものイタズラとして流されてしまった
――先生は話を聞いて助けてくれたのでしょうか?
ゆっぺ「私は自己主張するのが苦手で、さらには話しかけたタイミングが悪かったこともあり、萎縮してしまってうまく伝えることができませんでした。それで結局『男の子は、好きな女の子にイタズラするもの』という言葉で片付けられてしまいました」 ◆“ズボン下ろし”や“スカートめくり”も性加害
――SOSが、うまく伝わらず流されてしまったんですね……。
ゆっぺ「漫画の中でも描いていますが、“ズボン下ろし”や“スカートめくり”といった子ども同士の性加害行為を『よくある子どものイタズラ』『過剰に反応しすぎ』と軽視する大人もいます。でも大人が軽視して見過ごすことで、子どもはさらに追い詰められていきますし、加害行為もエスカレートしていきます。
そうならないためにも、どんな些細(ささい)なSOSでも、子どもの声に耳を傾けて対応してあげてほしいと思います」
◆いなかったことにしていた「5歳の傷ついた私」
――子ども同士の性被害という、衝撃的な内容のエッセイ漫画を描こうと思ったきっかけを教えてください。
ゆっぺ「5歳の時、幼稚園の同級生から性被害にあったことはずっと誰にも言えずにいました。誰にも言うつもりもなくて『なかったこと』として封印していたんです。でも、エッセイ漫画でこの話を描いた時、なかったことにしていた当時の気持ちが鮮明によみがえってきたんです。いなかったことにしていた5歳の傷ついた私が、目の前に現れたような感覚になりました」
――ご自身でなかったことにしていたんですね。

何があったのか、どんな気持ちだったのかを漫画に描くことで、自分の中にあった苦しみが吐き出され、5歳の私を『辛かったよね』『悲しかったよね』と抱きしめてあげられたような気持ちになりました」 ◆「嘘つきと批判されるかも」覚悟してマンガを公開
――漫画にすることで、過去の自分の苦しみを認めてあげられた。
ゆっぺ「こんな経験をしている人はいないと思っていたし、この話を誰かにしたら『そんなことあるはずない』『嘘つき』と批判されるだろうと思っていました。でも、同じような経験をした人が全国に一人でもいて、その人が共感して辛い気持ちを吐き出してくれたらそれでいいと思ったんです。最初はそんな気持ちで漫画を描いて、ブログで公開することにしました」
――実際、反響はどうでしたか。
ゆっぺ「ブログに公開したところ、嘘つきというコメントどころか『私も同じ経験をした』という声が多く寄せられて、ただただびっくりしています。保育園や幼稚園で同じクラスの子から性被害を受けたという話もありましたが、きょうだいや近所に住む上級生から性被害を受けたという声も多くて、子ども同士の性被害の多さと深刻さに驚いています」
――ゆっぺさんのブログのコメント欄が、同じ経験をしたことがあるという声であふれていました。
ゆっぺ「まさか、子ども同士でこんなことが起きているとは……と目を覆いたくなるようなお話もたくさんありました。私たち大人の想像を超えるところで、子どもたちが深刻な性被害をうけているんです」
◆お尻に石や粘土を入れられた子どもも
――私たちの知らないところで被害が起きていると思うと、ぞっとします。
ゆっぺ「私の下着に手を入れたボス太郎くんですが、私以外の児童のお尻に石や粘土を入れていたことが発覚して問題になりました。でも普通の5歳児が、こんなことを自分でゼロから思いついて行動にうつすなんて考えにくいですよね。もしかすると、成人向けの本やビデオから影響を受けたのかもしれません。それが大人や年上のきょうだいなどから故意に見せられたものなのか、隠されていたのをボス太郎くんが見つけたのかはわかりませんが……。いずれにせよ、親が日ごろから子どもの行動に目をむけておくことはとても大切だと感じます。『子どもだから』『知らなかった』ではすまされない問題が、大人の知らないところで起きています」
子ども同士の性被害は、子どもが被害を訴えることが難しくより深刻化します。次回は、思春期の性被害についてさらにゆっぺさんへお話を聞いていきます。【ゆっぺ】「ライブドアブログ OF THE YEAR2021」最優秀グランプリを受賞した『ゆっぺのゆる漫画ブログ』を運営。2022年にはライブドアブログ殿堂入りも果たす。『女教師Aが地位も名誉も失った話』、『女友達の裏の顔!?』などのヒット作を連発し、2021年には主婦ブロガー初の月間3,000万PVという快挙を達成。初の著書『5歳の私は、クラスの男子から性被害を受けました。~なんで言わないの?~』が1月27日に発売。Instagram:@yuppe2、Twitter:@yuppe__