警察が捜し求めていた男は、すでに死んでいた。
【画像】中学時代の倉光(卒業アルバムより) 昨年11月に、東京都立大教授で社会学者の宮台真司氏(63)が大学構内で切りつけられて重傷を負った事件。防犯カメラには大柄で特徴的な男の姿が映っており、当初はすぐに犯人が見つかるかに思われたが、「犯人が捨てたペットボトルからDNA型は検出されたものの、警察庁のデータベースには登録なし。大学周辺には防犯カメラも少なく、足取りは途絶えていた状況でした。そんな中、カメラにも映っていた自転車の購入記録を洗っていたところ、1月30日、ようやく1人の男の存在が浮上します」(社会部記者)

自転車に乗る容疑者の姿(警視庁提供) ところが、その男、倉光実容疑者(41)は1カ月以上前に自殺していたのだ。「倉光は神奈川県相模原市出身。中学卒業後、県内の野球強豪校に進学したものの、2年生の途中で退学した。内向的な性格だったようで、以降は就職やアルバイトをすることもなく、引きこもり状態になってしまった。母親は『精神を病んでしまって……』と周囲に嘆いていました」(同前) その母親が2013年、息子に買い与えたのが、自宅から300メートルほど離れた小さな家。1階も2階も約30平米程度だ。「近隣住民らによれば、倉光は別宅から朝、両親が暮らす家に向かい、夜に戻る生活を送っていた。母親が時折、掃除に来ることもあったそうです」(同前)防犯カメラの映像が公開された日から食事を取らなくなり… そんな倉光は事件のちょうど1週間前、宮台氏の研究室を“下見”していた。「11月22日昼2時頃、キャンパスに侵入し、宮台氏の研究室がある階を行き来していたのです。一旦近くのコンビニなどに立ち寄った後、夕方6時半頃に再び研究室の階に戻った。この日、宮台氏は週1の講義で大学へ足を運んでいました。スケジュールはHP上に記載されており、予め把握していたと見られます」(同前) そして11月29日、犯行に及んだ倉光。防犯カメラの映像が公開されたのは、12月12日のことだった。「両親によれば、倉光はその日から食事を取らなくなり、別宅の荷物を処分するなど身辺整理を始めたといいます。その後、12月17日に別宅で自殺しているのが発見された。両親は1月27日に公開された防犯カメラの映像で息子と確信したようですが、犯人ではないと思いたい気持ちがあり、通報はしなかったそうです」(捜査関係者) 倉光はなぜ宮台氏を狙ったのか。「自宅と別宅から斧やナイフなど凶器が発見されたのに加え、父親が購入した宮台氏の共著『おどろきの中国』(講談社現代新書)が見つかった。覇権国家・中国の社会体制を分析した一冊で、自宅のリビングに置かれていました」(同前) 押収したハードディスクなど残された物証から、動機の解明が進められる。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年2月16日号)
昨年11月に、東京都立大教授で社会学者の宮台真司氏(63)が大学構内で切りつけられて重傷を負った事件。防犯カメラには大柄で特徴的な男の姿が映っており、当初はすぐに犯人が見つかるかに思われたが、
「犯人が捨てたペットボトルからDNA型は検出されたものの、警察庁のデータベースには登録なし。大学周辺には防犯カメラも少なく、足取りは途絶えていた状況でした。そんな中、カメラにも映っていた自転車の購入記録を洗っていたところ、1月30日、ようやく1人の男の存在が浮上します」(社会部記者)
自転車に乗る容疑者の姿(警視庁提供)
ところが、その男、倉光実容疑者(41)は1カ月以上前に自殺していたのだ。
「倉光は神奈川県相模原市出身。中学卒業後、県内の野球強豪校に進学したものの、2年生の途中で退学した。内向的な性格だったようで、以降は就職やアルバイトをすることもなく、引きこもり状態になってしまった。母親は『精神を病んでしまって……』と周囲に嘆いていました」(同前)
その母親が2013年、息子に買い与えたのが、自宅から300メートルほど離れた小さな家。1階も2階も約30平米程度だ。
「近隣住民らによれば、倉光は別宅から朝、両親が暮らす家に向かい、夜に戻る生活を送っていた。母親が時折、掃除に来ることもあったそうです」(同前)
そんな倉光は事件のちょうど1週間前、宮台氏の研究室を“下見”していた。
「11月22日昼2時頃、キャンパスに侵入し、宮台氏の研究室がある階を行き来していたのです。一旦近くのコンビニなどに立ち寄った後、夕方6時半頃に再び研究室の階に戻った。この日、宮台氏は週1の講義で大学へ足を運んでいました。スケジュールはHP上に記載されており、予め把握していたと見られます」(同前)
そして11月29日、犯行に及んだ倉光。防犯カメラの映像が公開されたのは、12月12日のことだった。「両親によれば、倉光はその日から食事を取らなくなり、別宅の荷物を処分するなど身辺整理を始めたといいます。その後、12月17日に別宅で自殺しているのが発見された。両親は1月27日に公開された防犯カメラの映像で息子と確信したようですが、犯人ではないと思いたい気持ちがあり、通報はしなかったそうです」(捜査関係者) 倉光はなぜ宮台氏を狙ったのか。「自宅と別宅から斧やナイフなど凶器が発見されたのに加え、父親が購入した宮台氏の共著『おどろきの中国』(講談社現代新書)が見つかった。覇権国家・中国の社会体制を分析した一冊で、自宅のリビングに置かれていました」(同前) 押収したハードディスクなど残された物証から、動機の解明が進められる。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年2月16日号)
そして11月29日、犯行に及んだ倉光。防犯カメラの映像が公開されたのは、12月12日のことだった。
「両親によれば、倉光はその日から食事を取らなくなり、別宅の荷物を処分するなど身辺整理を始めたといいます。その後、12月17日に別宅で自殺しているのが発見された。両親は1月27日に公開された防犯カメラの映像で息子と確信したようですが、犯人ではないと思いたい気持ちがあり、通報はしなかったそうです」(捜査関係者)
倉光はなぜ宮台氏を狙ったのか。
「自宅と別宅から斧やナイフなど凶器が発見されたのに加え、父親が購入した宮台氏の共著『おどろきの中国』(講談社現代新書)が見つかった。覇権国家・中国の社会体制を分析した一冊で、自宅のリビングに置かれていました」(同前)
押収したハードディスクなど残された物証から、動機の解明が進められる。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年2月16日号)