赤ちゃんの微量の血液から難病の可能性を調べられると知っていますか? 免疫が働かないある難病については6人に1人が遺伝子検査を受けたとの調査結果もあり、医師らはさらなる拡大を訴えています。ただ、数千円以上の自己負担が必要で、公費負担を求める声があります。【原田啓之】
「こんな肺見たことない」 見過ごされた我が子の病気 「受けておいてよかった」。2021年5月に長女を出産した愛知県岡崎市の中村怜奈さん(27)は笑みを浮かべる。長女舞奈(まいな)ちゃんは生後6日目に発熱し、嘔吐(おうと)した。生まれてすぐ受けた検査で「重症複合免疫不全症(SCID)」の可能性が判明した。

5万人に1人が発症し、軽い感染症でも命の危険がある。すぐに大学病院に搬送され、免疫を正常化させるための造血幹細胞移植を受けた。1歳半となった今は健康に過ごしている。検査は、出産した産科クリニックで勧められ、有料だったが受けておいてよかったと思っている。 検査は、生まれつきの病気を調べるため全額公費で実施されている新生児マススクリーニングのオプションとして一部医療機関が取り入れている。新生児スクリーニング自体は、40年以上前から実施され、生後数日の赤ちゃんのかかとから採った少量の血液を調べる。 公費となる国の対象疾患は最初はフェニルケトン尿症を含む5疾患だったが、検査技術の向上で現在は酵素やホルモンの異常など20種類に増えた。ほぼ全ての赤ちゃんが受けている。 一方、SCIDのほか、体の筋肉が動かせなくなる「脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)(SMA)」もオプションだ。SCIDの検査は21年に新生児の6人に1人が受けたとの調査結果を、日本医療研究開発機構(AMED)の研究班がまとめた。17年に愛知県で始まり、現在は20以上の都道府県に広まっているが、実施する医療機関がごく一部の自治体もある。 医療機関が検査を実施していても、料金面で検査を希望しない妊婦もいる。与野党の国会議員には、無料化を求める意見がある。ただ「検査結果には一定の誤りが含まれるし、費用対効果も十分に検証する必要がある」(厚生労働省関係者)と慎重論もある。 舞奈ちゃんを診療した名古屋大病院の村松秀城講師(小児科学)は「SCIDは検査法も治療法も確立されている。米国では既に新生児スクリーニングの対象になっており、日本もすぐに導入すべきだ」と訴えている。
「受けておいてよかった」。2021年5月に長女を出産した愛知県岡崎市の中村怜奈さん(27)は笑みを浮かべる。長女舞奈(まいな)ちゃんは生後6日目に発熱し、嘔吐(おうと)した。生まれてすぐ受けた検査で「重症複合免疫不全症(SCID)」の可能性が判明した。
5万人に1人が発症し、軽い感染症でも命の危険がある。すぐに大学病院に搬送され、免疫を正常化させるための造血幹細胞移植を受けた。1歳半となった今は健康に過ごしている。検査は、出産した産科クリニックで勧められ、有料だったが受けておいてよかったと思っている。
検査は、生まれつきの病気を調べるため全額公費で実施されている新生児マススクリーニングのオプションとして一部医療機関が取り入れている。新生児スクリーニング自体は、40年以上前から実施され、生後数日の赤ちゃんのかかとから採った少量の血液を調べる。
公費となる国の対象疾患は最初はフェニルケトン尿症を含む5疾患だったが、検査技術の向上で現在は酵素やホルモンの異常など20種類に増えた。ほぼ全ての赤ちゃんが受けている。
一方、SCIDのほか、体の筋肉が動かせなくなる「脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)(SMA)」もオプションだ。SCIDの検査は21年に新生児の6人に1人が受けたとの調査結果を、日本医療研究開発機構(AMED)の研究班がまとめた。17年に愛知県で始まり、現在は20以上の都道府県に広まっているが、実施する医療機関がごく一部の自治体もある。
医療機関が検査を実施していても、料金面で検査を希望しない妊婦もいる。与野党の国会議員には、無料化を求める意見がある。ただ「検査結果には一定の誤りが含まれるし、費用対効果も十分に検証する必要がある」(厚生労働省関係者)と慎重論もある。
舞奈ちゃんを診療した名古屋大病院の村松秀城講師(小児科学)は「SCIDは検査法も治療法も確立されている。米国では既に新生児スクリーニングの対象になっており、日本もすぐに導入すべきだ」と訴えている。