私たちの取材で明らかになった、ある老舗旅館による助成金の不正受給問題。旅館の新社長がきょう、記者会見を開きました。
ある疑惑を追って、兵庫県芦屋市の高級住宅街に向かった。
しばらくして、家に招き入れられた。
妻「ダメですよ、カメラはテレビで映るでしょ」
孝晃氏「ええがな、撮りいや、この格好でええなら」
金沢孝晃会長。石川県加賀市にある旅館「加賀百万石」のオーナー会社のトップだ。
創業1907年の老舗で、かつて昭和天皇も宿泊したことのある、高級旅館。そこで、不正が行われているという情報が…
「タイムカードを押させないような指示書が貼ってあった」
タイムカードを押させないのは、国の助成金を不正に受け取るためではないかという。
業績が悪化した会社が従業員を休ませた場合、「休業手当」を出す必要がある。その一部を、国が助成する雇用調整助成金。だが、タイムカードを押させず「休んでいた」と偽って、実際には働いていた人の分まで申請していれば、それは不正にあたる。
Q.どうしてそのような指示をしたか
「するわけがない。するわけがない」
ところが、そうした指示の証拠があるという人が現れた。元従業員のAさん。旅館のシフト表を見せてくれた。
従業員の名前の下に「タイムカード押印」という欄があり、そこに×印。すぐ上には「出勤」の「出」の文字が…
元従業員Aさん「×のところはタイムカードを押さない」
その「シフト表」を金沢会長に見せると…
金沢孝晃会長「タイムカードを打っていないということ?こんなものを見たら絶対にアカンと言うわな、何をしとるんやと」
シフト表を初めて見たという会長。しかし、助成金の申請がどうなっているかはわからないという。
ところが、私たちはさらに決定的な資料を入手した。
「給与明細一覧表」。見せてくれた元従業員のBさんには、20数万円の「休業手当」が支払われたとなっているが…
Q.休業した覚えはない?
元従業員Bさん「休業した覚えはないですね。タイムカードを押さずに通常出勤しています。確実に不正ですよね、これは。国を騙して自分たちの肥やしにしているのは、絶対に許されないと思う」
再び金沢会長の自宅へ。すると、妻の昌代専務が応じるという。
金沢昌代専務「現場に確認したら、出てきた時もあったというのは聞いています」
Q.そうするとそれは…
金沢昌代専務「出勤にしないとだめですよね」
Q.休業していたことになっているが、助成金の申請に入ってしまっている
金沢昌代専務「ですね」
Q.そこはまずかった
金沢昌代専務「そうですよ、把握できてなかったですからね」
ついに、働いていた人の分まで、助成金を申請していたことを認めた。だが、不正は現場の担当者が勝手に行ったものだとして、オーナー会社会長ら上層部の関与は否定した。
きょう会見を行った、旅館の運営会社の社長は。
Q.(オーナー会社の)会長の指示ではなかったのか
みやびの宿加賀百万石吉田久彦社長「(会長が)すごく怒っていたんですね、従業員に対して。その怒っているところを見て、本当に知らなかったんだなと個人的には感じました」
社長は、オーナー会社の不正受給は4000万円に上るとして、労働局の求めに応じ、これまでに受け取った助成金1億数千万円を返還するとしています。