列車を撮影するために集まった人たちの一部が、駅員とトラブルになっている映像です。こうした迷惑行為が伝えられるなかで、鉄道会社が始めた有料の撮影イベントが今、人気を集めています。参加費が5万円の高額イベントも完売する状況だということです。
■特急「かもめ」46年に幕 ファン集結
先月開業した、西九州新幹線「かもめ」。出発セレモニーが行われた、その数時間前のホームには、最終電車を待つ鉄道ファンがたくさんいました。
新幹線の開業に伴い46年の歴史に幕を下ろしたのが、長崎と博多を結んでいた特急「かもめ」です。
白に黒、異なる色の車両が使われていた「かもめ」。
終点の長崎駅では、午前0時を回っても大勢の鉄道ファンらが別れを惜しみました。
最後の日の日中には、沿線の撮影スポットにたくさんの鉄道ファンがいました。
静岡の鉄道ファン:「静岡から来ました。白いほうは海外っぽい感じがして、僕は好きなんで。黒いほうは、あんまり好きじゃないんですけど」
弟に撮影を頼まれた男性:「(福岡の)弟から『きょう最終日だからカメラで撮ってくれ』とカメラ渡されて。なかなか、しかし(撮影)してみると面白いね」「(Q.どこが面白いですか?)撮る前の緊張感?一瞬だから緊張するもんね」
■警笛鳴らすも…お構いなし“運行に支障”
駅のホームを埋め尽くす鉄道ファン。
目当ては、さよならイベントとして運行していた小田急の1000形未更新車。
車内アナウンス:「ホーム上ですね。点字ブロックの外側をはみ出たような感じで撮影されている方が、大勢いらっしゃいます」
何度、警笛を鳴らしても、次から次に、黄色い点字ブロックをはみ出して、カメラを構えています。
動画を撮影した男性:「一歩でも間違えたら事故になるので、危ないですね」
なかには、スマホだけを点字ブロックの外側において撮影する人もいます。その結果…。
車内アナウンス:「安全と事故防止のため、速度をかなり落として運転しております。ご了承下さい」
小田急電鉄によると、今回のイベントでは事前に運行区間を公表していなかったが、鉄道ファンがSNSなどを通じて情報を入手し、集まったのではないかといいます。
動画を撮影した男性:「命が一番大事なので、そこは安全にルールを守ったうえで撮影してほしい」
■踏切よじ登る危険撮影「人として…」
乗客:「うわ~すごい車」
よく見ると、田んぼの真ん中にある道路には、絶え間なく続く車の行列があります。
動画を撮影した男性:「急行『津軽』を撮るために、あそこで待っていたという感じですね」
急行「津軽」は3年ぶりに、秋田駅-青森駅間で臨時運行された列車です。
ずらっと並んだ車列の先には、三脚を立ててカメラを構える大勢の人がいます。さらに、50人以上の鉄道ファンが線路脇の狭いスペースに陣取り、一斉にカメラを構えています。踏切脇でシャッターを切る人の姿もありました。
動画を撮影した男性:「(車内は)軽くざわついていました。止まりかねないといえば、そうなんですけど、許されはしないですね」
東急目黒線の踏切の前で、カメラを構える2人組。
周りを見てみると、踏切によじ登る3人の鉄道ファン。両手でカメラを持ちながら、片足立ちで前のめりに。その前には、カメラを手に待ち構える人の姿も見られます。
写真を撮影した男性:「非常に危険だとは思っていますね。間違いなくこれはルールどころじゃなくて、人としてやってはいけないこと」
東急によると、近付いていた列車は踏切の異常を察知して、緊急停止したといいます。
■「下がれよ!」ホーム上で危険な場所取り
客:「危ない」
駅員:「下がって下さい」
客:「手を出すな」
怒号が飛び交うのは、姫路駅の構内。ホームを埋め尽くす“鉄道ファン”のお目当ては一日限りで復活した急行「鷲羽」。かつて、大阪と四国への連絡船が発着する宇野を結んだ急行列車です。
客:「下がれよ」
駅員:「後ろの人も撮れないので、ルールを守って撮って下さい」
40年以上前に姿を消した急行「鷲羽」の復活した姿をフレームに収めようと、熾烈(しれつ)な場所取り合戦。
駅員:「下がって下さいよ。線路に落ちますよ。それがマナーだと思います」
駅員の制止もお構いなしで、シャッターを切り続けます。
駅員:「列車が後ろから入ってきてますよ。下がって、下がって」
その場にいた男性:「30分前くらいに人が集まってきましたね。100人以上。びっくりしました」
■「5万円撮影会」わずか7時間で完売
鉄道への情熱が“暴走”したとも言える、こうしたマナー違反。
その一方で、ある鉄道会社の取り組みが話題になっています。
JR東日本が去年8月から始めた、有料の撮影イベント。なかには2時間で5万円という価格にもかかわらず、わずか7時間で完売したイベントがあると言います。
実際に取材しました。
カメラを構える大勢の方の目の先には、復活した人気車両が並んでいます。
車両基地内の線路はイベントの参加者でにぎわいます。
イベントに参加・鉄道ファン:「自分も子どものころから親しまれた列車だったので。やっぱり、このカラーリングが一番良いと思います。一番かっこいい」
東北・上越新幹線の大宮と上野を結ぶ「新幹線リレー号」。37年前に廃止となりましたが、当時の塗装が再現され、鉄道ファンの前に姿を現しました。
この日、仙台から始発の新幹線でやってきたと言う男性。
イベントに参加・仙台の鉄道ファン:「非常に新鮮で珍しいものがいっぱいで、興奮しています」「(Q.撮影した写真はどう活用する?)家に大きい画面があるので、ゆっくり見ながらお酒を飲んだりしたい」
「5万円」という値段設定。参加者は、次のように話します。
イベントに参加・鉄道ファン:「(5万円の)価値はあると思います。時間も長いので」「(Q.こういったイベントでじっくり?)そのほうが、いいと思います。安全面を考えると」
■長野…“懐かしさ”も味わえる撮影会
一方、長野でも、長野電鉄が企画した撮影会が行われました。2070円の「1日フリー乗車券」を買った人を対象に、線路に入って止まった電車を撮影できるイベントです。
職員:「この後、4番線には3000系車両を並べます。電車が入ってきて危険ですので、ちょっといったん、こちらかこちらにずれて頂きまして」
参加したファンも、しっかり指示に従います。
鉄道ファンの男性:「(Q.どこから来たんですか?)神奈川です」「(Q.すごい体勢で写真撮ってましたが、下から撮ると良い?)ボケて、かっこいいみたいな」「お金出せば、基本的に良い人が来るイメージなんで。こういうイベントなら、悪い人は来ないかなと」
イベントの目玉は、引退し解体することが決まった、かつて東京の地下鉄日比谷線を走っていた車両です。
鉄道ファン:「自分が小さいころ、よく日比谷線で。東京で走っている時から、ずっとよく乗ってた」
首都圏で走っていた車両を譲り受けて使っている長野電鉄。“懐かしさ”も、鉄道ファンを引き付けているといいます。
長野電鉄 鉄道事業部 運輸課・鈴木優介課長補佐:「(イベントが)少しでも収入になればと思っております」
■“新幹線×ブルーインパルス”ファン集結
特急「かもめ」が引退した翌日、西九州新幹線の開業日。
長崎駅の上空をブルーインパルスが飛ぶことになり、高台の撮影スポットには新幹線とブルーインパルスのコラボレーションを撮ろうと多くの人が集まりましたが、天気はあいにくの雨。それでも、辛抱強く待ち続けます。
そして、ブルーインパルスが飛びました。
ファンの中には前日、特急「かもめ」を撮影していた男性の姿も見られました。
静岡の鉄道ファン:「新幹線もばっちり入って、あわよくばブルーインパルスも一緒に撮れたらいいなと思ってたんですけど。(新幹線と)タイミング合わずに、重なることなくという感じでした」