「ホス狂い」と呼ばれる女性をご存じだろうか。彼女たちの多くはデリヘルやソープ、パパ活などで稼いだお金を、お気に入りのホストに注ぎ込んでいる。「担当」と呼ばれる本命のホストに請われるまま数百万のシャンパンタワーを入れ、時には売掛まで作る姿は、痛ましい。
しかし、彼女たちがホストにダマされ、搾取される被害者に見えるとしたら、それは少し現実とは違う。むしろ彼女たちは、自分たちが営業されている=金銭が介在した関係と知りながら、ホストに課金し続けるのだ。
まだ、若い女性たちが将来を投げうってまで、ホストにお金を貢ぎ続ける――。社会問題化するこの実態を、前編記事に引き続き、実際に「ホス狂い」になった有香さん(22歳・仮名)のインタビューをもとに、現代のホスト業界の実態、なぜ「ホス狂い」になる女性が生まれるのかを見ていく。
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都内の大学に通う清楚な女子大生・有香(22歳・仮名)はホストに貢ぐお金を稼ぐために、大学中退を決心する。彼女はホストから本営”を掛けられた過去を明かした。
有香もまた、Tinderで知り合った二人のホストから本営”を掛けられたという。本営”とは、ホスト側が客の女性に、恋愛感情があるかのような態度を取る色恋営業”の一種で、その名の通り客の女性を本命のカノジョ”と思い込ませる営業方法だ。
いくら本命のカノジョ”として扱われても、結局は営業上の疑似カノジョ”なので、店にそれなりのお金を落とすことを望まれるし、イベント時や月末などには呼ばれ、高級ボトルやシャンパンなどの高額の支払いを負うことにもなる。したがって、店に多額のお金を落としてくれる太客”や、その中でも最もお金を使うエース”が本営の対象となることが多い。
また、本営”をより強固にするために、同棲営業(営業の一環として同棲する)や、結婚営業(ホストをあがったら結婚しようと約束をする。両親を紹介される場合もある)と、さらに一歩踏み込んだ付き合いに発展することもある。もちろん本営”とされる客は、一人のホストにつき一人だけというわけではなく、数人の本営が存在し、彼女らの家を順繰りに訪ね歩くかたちで、複数人の女性と同棲をしているホストもいるという。
一方で、イチャイチャしたり、時に外でデートをしたりと恋愛しているスタンスではあるものの、付き合っているという事実がない状態だったり、本命のカノジョではない(と女性側が認識している)場合は 色カノ”となる。 「今は付き合えないけど、真剣だ」「いつか付き合えたらいいと思っている」などと希望を持たせるようなことを言われれば、多少現状に不満があろうとも、未来の明るい展望を期待して「それまで頑張ろう」となるのは当然で、さすが女心の核心をついたテクニックといえる。宿カノ”家カノ”趣味カノ”……また、ルックスやスタイルが好みだったり、身体の相性が合うなどの理由で、セックス目的で付き合っている相手はヤリカノ”、終電を逃してしまったり、同棲中の本営と喧嘩して一緒にいるのが気まずいときなどに、宿や家を提供してもらうことを目的とする宿カノ”家カノ”、あまり売り上げへの貢献はないがルックスが好みだったり話が合うので、ホスト自身の趣味で付き合っている趣味カノ”といったものも存在する。ちなみに、これらの営業とはまったく関係のない、店に呼ばれることのない彼女は本カノ”と呼ばれ、ホスラブをはじめとする掲示板などでは本カノを自称する書き込み主が、ほかの女性たちを煽ったり、また、特定のホストの本カノはいったい誰か、といった推理でたびたび、盛り上がっている。ヤリカノ”は一般的に言うセフレ”とどう違うのか……という疑問もあるが、フレンドではなくカノジョという言葉を使われたほうが嬉しいという女心を汲んだものだと考えれば納得もいく。 とにかくホストには様々な役割を担ったカノジョ”が複数存在する。だから「好きだ」と囁かれ「本命だから」と告げられ、肉体関係もあり、ホテルに泊まったり、自宅に泊まりに来ることもあり、さらには同棲をスタートして、両親に紹介までされたとしても、それらはすべて営業”という可能性もあるということだ。もちろん、女性客が、自分がどこに当て嵌められているのかは知る由もない。人の気持ちは流動的だから、ホスト自身もはっきりと区別がついているのかは不明であって趣味カノ”が色カノ”になったり、色カノ”が本営”になることもあり得る。 本カノ”以外のカノジョはすべて営業上の疑似カノジョだということは間違いないが、本カノ”だったはずが、いつの間にか店に通うようになり、エース”になっていた、という話もある。というわけで、有香もまた「本カノなのか、本営なのか」で悩むことになった。なぜならば、Uに呼び出されるのは、いつもプライベートの時間で、店の外だったからだ。女性の同情を買う営業テク「Uはお酒が弱くて、夜中にいきなり『酔っちゃったから、迎えに来て』って連絡が来るんですよ。仕方なく終電で新宿まで迎えに出て、店の前でつかまえて、お水を買ってあげて。そこを通りかかるお店の従業員の人たちから『なんだあの二人は?』みたいな視線を浴びながら、担いでタクシーに乗せて彼の家まで送って。その時点でもう電車がないから、彼の家に泊まって始発で帰ってそのまま学校行ってって、そういうことが週1から2回くらいあって。介護してるみたいな感じで、疲れ果てちゃって。今考えると、担当が酔っ払ったときに、気軽に呼んでもらえる存在ってうらやましいなって思うんですけど、そのときは自分が彼女だと信じ込んでいるから、『なんで都合よく使われないといけないんだろう』としか思えなくて。しかも彼は、お客さんとも枕(セックス)したりするから、泊まりに行ったときに身体のあちこちにキスマークついてるみたいなのが耐えられなくて」(有香、以下同)有香の自宅に泊めていれば家カノ”とも判断できるが、泊まるのはUの家だ。となると、店に呼ばれるか否かが判断の決め手となる。実際、有香は店に、一度だけ足を運んだ。「それも全然楽しくなくって。人生二度目のホストクラブですよ。まだ全然、行き慣れてない状態で、緊張していたせいもあるけどソファの背もたれに寄りかかって座ってたら、その日に家に帰ってから『なんであんな態度だったの? もっと楽しそうにしてよ』って文句を言われて。なのに、売り上げがあがらない日が続くと、Uが病み営”をかけてくるのが鬱陶しくて。当時、わたしは普通のアルバイトしかしてなくてお金がなかったから、ホストクラブに気軽に通える余裕もなかったし。だから『営業として付き合っているのかな』とか思いながら、『わからないから信じたい』って気持ちもありつつ、『でも、お店に通ってお金を使ってあげることもできない、どうしよう』って状態になってしまったんです」 病み営”とは、しんどそうなところや、苦しんでいるところをアピールして、女性の同情や庇護欲に訴える営業テクニックだ。普段は本営や、疑似恋愛を装う色営、友達のような関係を築く友営であっても、売り上げをあげたい月末やイベント時など、ここぞというときに使う場合もある。もちろん、本当に売り上げが心配で、本カノである有香に不安を漏らしている可能性だってある。 週に数回、夜中に呼び出され、肉体関係もあり、店に会いに行ったこともあるが、それも一度きり。あっという間に200万果たしてUにとって自分は「本カノなのか、本営なのか」と、悩んでいた最中、有香はTinderでマッチしたもう一人のホスト、Kの店へと足を運ぶことになった。 大金を使うと気持ちが入っちゃって、 もう引けなくなる 一応は彼氏”がいながらも、Kに会いに行くことにしたのは、有香にとってKはアイドルのような存在だったからだ。プライベートでデートをするのではなく、店に行くのだから浮気とも、また違う。「もともと、Kのほうが自分のタイプに近くて。新しいお店に出勤を始めたっていうので、どうしても一度、会いたくてお店に行ったら、すごく楽しかったし、イチャイチャもしてくれて。それでガンってハマって、あっという間に200万円くらい使っちゃったんです」200万はこれまでの貯金や、親への借金、クレジットカードも限度額ギリギリまで使い、かき集められるところから集めたという。こうしてKに瞬く間にハマってしまった――狂った――有香は、すぐにUに別れを告げた。その理由として、Tinderで知り合った別のホストにハマってしまったこと。翌月に控えているKの誕生日には、小計100万円のシャンパンをおろす(ホストクラブではシャンパンを注文することを、おろすという。小計はメニューに書かれている値段で、小計100万円のシャンパンの場合、税金・サービス料などが加算されておおよそ会計額は150万円ほどになる)予定であることを、Uに伝えたものの、Uは「俺のほうが大事にするから、戻ってきたほうがいい」と譲らない。仕方なく、有香はすでに200万円ほど使っていることを告白し、ようやくUは諦めて別れることを了承してくれたという。photo by gettyimages「Uもホストなので、大金を使うと気持ちが入っちゃって、もう引けなくなってるっていうことを、わかってくれたんですよね。Uの店に行ったときに使ったのは2万円だけだったし」いくら売り上げをあげたかが、自分の価値に直結するホストにとっては、金は愛の深さの証といってもいい。自らに費やされたのはたった2万円、相手の男には200万円。あっさり身を引くほどのダメージをUは被ったことは間違いない。もう親に頼れないから「デリ」こうして無事にUと別れた有香は、Kに完全移行するも、すでに貯金は使い果たしている状態だった。が、目前にはKの誕生日が迫っている。「もう親に借りるのも無理で、これ以上は自分で働くしかないなって。手っ取り早いし、それしかないと思って、デリで働くことにしたんです。あとは高校生の頃から細々とやっているパパ活と」デリヘル、通称デリは、客の自宅やホテルなどに出張し、性的なサービスを提供する風俗だ。パパ活は、パパ活アプリや交際クラブなどで相手を見つけ、茶飯(お茶や食事をすること)で一回1~2万円ほどの現金をもらうのと同時に、買い物代などを支払ってもらう。そうして得た金銭で、11月のKの誕生日にはシャンパンをおろし、月間で200万円、その翌月の12月の中旬までで140万ほど費やしたところで、突如、Kと連絡が取れなくなってしまったという。「本当はクリスマスにも会う予定があったのに『体調を崩した』って会えなくて。Kには、わたしがエースだって言われていたから、クリスマスに会えないっていうのは、本カノと会うからだろうって思ったけど、信じたくないって気持ちもあって。わたしとKが出会ったのは10月の終わり頃だったので、代わりにクリスマスと月の記念日をまとめて『締め日にやろうな』って言われていたのに、まったく連絡が付かなくなっちゃって」 締め日というのは、月の最終営業日のこと。その月の総売り上げが決定すると同時に、ナンバーと呼ばれる各ホストの売り上げ順位も決まる。ナンバーの上位に入ることを目論んでいるホストは、締め日には多額の金を使ってくれる太客を店に呼び、呼ばれた客たちは、担当をひとつでも上のナンバーに押し上げるべく、高額なボトルやシャンパンのオーダー合戦を繰り広げる。担当ホストが逮捕され…エースであるはずの有香は、呼ばれて当然のはずであったが、当日を過ぎても音沙汰がなかったという。『いちばん、お金使ってるよ』と 言われて嬉しくて 「LINEのブロックはされてないから、年始に営業が始まったら、また連絡が来るかなと思って。しつこくせずに、年明けの営業でシャンパンをおろせるように稼いで、いい子にして待っておこうと思ってたら、営業が始まっても連絡が来なくて。いよいよどうしたのかなって思ったら、実は警察に捕まってることが判明したんです」実はKには、ホストを始める二年ほど前から付き合っていて、一緒に暮らしてもいる 本カノ”の女性がいた。が、その女性に対して殴るなどのDV行為を行っていた上に、12月に入ってからは、二人で飼っている犬にまであたるようにもなり、耐えきれなくなった女性が警察に通報。Kは逮捕されることになったという。有香がそのことを聞いたのは、Kの親友のYからだった。ちなみにYは、Kとは別の店でやはりホストをしている。 「Yとは実際に会ったことはなくて、でもTwitterではお互いにフォローしてつながっていたんです。で、『この人なら何か知ってるかも』ってDMを送ったら、実は本カノにDVをして捕まってるって話が出てきて。でも、その事実を知っても、わたしがKのことを好きな気持ちは1ミリも変わらなかったし、本カノと別れてくれれば、わたしが本カノに昇格できるだろうから好都合くらいのノリでした。むしろYのほうが、親友がそんなことになって元気がない感じだったから『焼肉でもご馳走するよ』って誘って一緒に食事をしたあとに、年明けの初営業だっていうYのお店に行くことになったんだけど、それが楽しくって、それから5日くらい連続で通ったんです。たぶんお互いが寂しくて一人になりたくなかったこともあって、毎日のようにアフターしてくれたり、『今日も泊まりに来る?』みたいな感じで家に誘われたりして。そうしたら『いちばん、お金使ってるよ』って言われて。わたしはエースでいたいって気持ちが強いので、嬉しくて」 なぜエース”を目指すのか実はそこが最初から疑問だった。というのもKと出会った月、有香は借金までして200万円を突っ込んでいる。Uに対しても「お金がなくて、店に通えなくて申し訳ない」という気持ちを抱いていたと語っていた。有香からは、積極的にホストに多額の金を投じたい”という意向を感じる。TinderでUやKとマッチングしたのも、担当を見つけることを期待しての、いわばホス活”のようなものといえるのではないか。 もちろん、もともとホストクラブに興味があったことは、すでに聞いている。だとしても「ちょっと覗いてみるだけ」というライトな感じではなくエース”、言い換えればホス狂い”になることを望んでいるような気がしてならないのだ。本カノっていうよりも パートナーとして一緒にいたい 有香はなぜエース”を目指すのか。「私は好きなタイミングでお店に行って、ガーッと飲んで、ホストの順位とかも気にせず、月に20万くらいで遊ぶっていう遊び方には興味がないんです。けど、自分が本営されてるってことは、ほかの客にも本営してるとして、本営の中の一番が誰かっていったら、いちばんお金を使ってる子だと思う。本カノになれないなら、せめていちばん使ってる子の位置にいたい。100万円くらいで本営されたところで、上には200万円とか300万円とか使う子がいるから、圧倒的な1位にはなれないし、それ以上に自分より使う存在がいるのが無理。いちばんじゃないと嫌、自己満足なんですけど。圧倒的エースがいい」 そんなふうにエース”へのこだわりを持つ有香にとって、Yの発言は、心を揺らすのに十分だった。その後、釈放されたKから再び連絡があり、やはり好きだという気持ちは消えずに会いに行ったものの、Yから、『Kにはまた別の本カノ”ができた』と聞かされ、「結局、本カノと切れても、選ばれるのはエースじゃないんだなっていう現実を感じて、一気に冷めちゃった」という。そして今の有香の担当はYだ。Kからすると、親友であるはずのYに、有香を横取りされたという話になる。が、有香の心変わりが責められるいわれはない。なぜならば、誰を担当にするかは、客である有香が決めることだからだ。「今の担当とは、出会い方が特殊だからか、絆というか、戦友というか……友達みたいな感じ。『本営してくれ』ってふざけて言ったこともあるんですよ。そしたら『マジでできないんだよな』って。でも、実際に『ホテルに行こう』って言われたら、『どうしたの?』ってなっちゃうし、終わっちゃう気がする。もちろん、結ばれたいって気持ちがないわけではないけど、でも本カノになったりとか、同棲して結婚したりすると、嫌な面が絶対に見えてくるわけじゃないですか。好きだからこそ見えないほうがいいのかなって。綺麗で、かわいい人と幸せになってほしいと思ったりもするけど……いろいろ考えます。でもなるようにしかならないから、考えないようにしようって。本カノっていうよりもパートナーとして一緒にいたいですね。親友って位置でもいいし、お互いが信頼し合える存在として、できればずっと一緒に居続けたい」親友のような絆で結ばれたホストのエース”で居続けるため、有香はもうすぐ大学をやめる。これが彼女の選択”だ。
一方で、イチャイチャしたり、時に外でデートをしたりと恋愛しているスタンスではあるものの、付き合っているという事実がない状態だったり、本命のカノジョではない(と女性側が認識している)場合は 色カノ”となる。 「今は付き合えないけど、真剣だ」「いつか付き合えたらいいと思っている」などと希望を持たせるようなことを言われれば、多少現状に不満があろうとも、未来の明るい展望を期待して「それまで頑張ろう」となるのは当然で、さすが女心の核心をついたテクニックといえる。
また、ルックスやスタイルが好みだったり、身体の相性が合うなどの理由で、セックス目的で付き合っている相手はヤリカノ”、終電を逃してしまったり、同棲中の本営と喧嘩して一緒にいるのが気まずいときなどに、宿や家を提供してもらうことを目的とする宿カノ”家カノ”、あまり売り上げへの貢献はないがルックスが好みだったり話が合うので、ホスト自身の趣味で付き合っている趣味カノ”といったものも存在する。
ちなみに、これらの営業とはまったく関係のない、店に呼ばれることのない彼女は本カノ”と呼ばれ、ホスラブをはじめとする掲示板などでは本カノを自称する書き込み主が、ほかの女性たちを煽ったり、また、特定のホストの本カノはいったい誰か、といった推理でたびたび、盛り上がっている。
ヤリカノ”は一般的に言うセフレ”とどう違うのか……という疑問もあるが、フレンドではなくカノジョという言葉を使われたほうが嬉しいという女心を汲んだものだと考えれば納得もいく。 とにかくホストには様々な役割を担ったカノジョ”が複数存在する。
だから「好きだ」と囁かれ「本命だから」と告げられ、肉体関係もあり、ホテルに泊まったり、自宅に泊まりに来ることもあり、さらには同棲をスタートして、両親に紹介までされたとしても、それらはすべて営業”という可能性もあるということだ。
もちろん、女性客が、自分がどこに当て嵌められているのかは知る由もない。人の気持ちは流動的だから、ホスト自身もはっきりと区別がついているのかは不明であって趣味カノ”が色カノ”になったり、色カノ”が本営”になることもあり得る。
本カノ”以外のカノジョはすべて営業上の疑似カノジョだということは間違いないが、本カノ”だったはずが、いつの間にか店に通うようになり、エース”になっていた、という話もある。というわけで、有香もまた「本カノなのか、本営なのか」で悩むことになった。なぜならば、Uに呼び出されるのは、いつもプライベートの時間で、店の外だったからだ。女性の同情を買う営業テク「Uはお酒が弱くて、夜中にいきなり『酔っちゃったから、迎えに来て』って連絡が来るんですよ。仕方なく終電で新宿まで迎えに出て、店の前でつかまえて、お水を買ってあげて。そこを通りかかるお店の従業員の人たちから『なんだあの二人は?』みたいな視線を浴びながら、担いでタクシーに乗せて彼の家まで送って。その時点でもう電車がないから、彼の家に泊まって始発で帰ってそのまま学校行ってって、そういうことが週1から2回くらいあって。介護してるみたいな感じで、疲れ果てちゃって。今考えると、担当が酔っ払ったときに、気軽に呼んでもらえる存在ってうらやましいなって思うんですけど、そのときは自分が彼女だと信じ込んでいるから、『なんで都合よく使われないといけないんだろう』としか思えなくて。しかも彼は、お客さんとも枕(セックス)したりするから、泊まりに行ったときに身体のあちこちにキスマークついてるみたいなのが耐えられなくて」(有香、以下同)有香の自宅に泊めていれば家カノ”とも判断できるが、泊まるのはUの家だ。となると、店に呼ばれるか否かが判断の決め手となる。実際、有香は店に、一度だけ足を運んだ。「それも全然楽しくなくって。人生二度目のホストクラブですよ。まだ全然、行き慣れてない状態で、緊張していたせいもあるけどソファの背もたれに寄りかかって座ってたら、その日に家に帰ってから『なんであんな態度だったの? もっと楽しそうにしてよ』って文句を言われて。なのに、売り上げがあがらない日が続くと、Uが病み営”をかけてくるのが鬱陶しくて。当時、わたしは普通のアルバイトしかしてなくてお金がなかったから、ホストクラブに気軽に通える余裕もなかったし。だから『営業として付き合っているのかな』とか思いながら、『わからないから信じたい』って気持ちもありつつ、『でも、お店に通ってお金を使ってあげることもできない、どうしよう』って状態になってしまったんです」 病み営”とは、しんどそうなところや、苦しんでいるところをアピールして、女性の同情や庇護欲に訴える営業テクニックだ。普段は本営や、疑似恋愛を装う色営、友達のような関係を築く友営であっても、売り上げをあげたい月末やイベント時など、ここぞというときに使う場合もある。もちろん、本当に売り上げが心配で、本カノである有香に不安を漏らしている可能性だってある。 週に数回、夜中に呼び出され、肉体関係もあり、店に会いに行ったこともあるが、それも一度きり。あっという間に200万果たしてUにとって自分は「本カノなのか、本営なのか」と、悩んでいた最中、有香はTinderでマッチしたもう一人のホスト、Kの店へと足を運ぶことになった。 大金を使うと気持ちが入っちゃって、 もう引けなくなる 一応は彼氏”がいながらも、Kに会いに行くことにしたのは、有香にとってKはアイドルのような存在だったからだ。プライベートでデートをするのではなく、店に行くのだから浮気とも、また違う。「もともと、Kのほうが自分のタイプに近くて。新しいお店に出勤を始めたっていうので、どうしても一度、会いたくてお店に行ったら、すごく楽しかったし、イチャイチャもしてくれて。それでガンってハマって、あっという間に200万円くらい使っちゃったんです」200万はこれまでの貯金や、親への借金、クレジットカードも限度額ギリギリまで使い、かき集められるところから集めたという。こうしてKに瞬く間にハマってしまった――狂った――有香は、すぐにUに別れを告げた。その理由として、Tinderで知り合った別のホストにハマってしまったこと。翌月に控えているKの誕生日には、小計100万円のシャンパンをおろす(ホストクラブではシャンパンを注文することを、おろすという。小計はメニューに書かれている値段で、小計100万円のシャンパンの場合、税金・サービス料などが加算されておおよそ会計額は150万円ほどになる)予定であることを、Uに伝えたものの、Uは「俺のほうが大事にするから、戻ってきたほうがいい」と譲らない。仕方なく、有香はすでに200万円ほど使っていることを告白し、ようやくUは諦めて別れることを了承してくれたという。photo by gettyimages「Uもホストなので、大金を使うと気持ちが入っちゃって、もう引けなくなってるっていうことを、わかってくれたんですよね。Uの店に行ったときに使ったのは2万円だけだったし」いくら売り上げをあげたかが、自分の価値に直結するホストにとっては、金は愛の深さの証といってもいい。自らに費やされたのはたった2万円、相手の男には200万円。あっさり身を引くほどのダメージをUは被ったことは間違いない。もう親に頼れないから「デリ」こうして無事にUと別れた有香は、Kに完全移行するも、すでに貯金は使い果たしている状態だった。が、目前にはKの誕生日が迫っている。「もう親に借りるのも無理で、これ以上は自分で働くしかないなって。手っ取り早いし、それしかないと思って、デリで働くことにしたんです。あとは高校生の頃から細々とやっているパパ活と」デリヘル、通称デリは、客の自宅やホテルなどに出張し、性的なサービスを提供する風俗だ。パパ活は、パパ活アプリや交際クラブなどで相手を見つけ、茶飯(お茶や食事をすること)で一回1~2万円ほどの現金をもらうのと同時に、買い物代などを支払ってもらう。そうして得た金銭で、11月のKの誕生日にはシャンパンをおろし、月間で200万円、その翌月の12月の中旬までで140万ほど費やしたところで、突如、Kと連絡が取れなくなってしまったという。「本当はクリスマスにも会う予定があったのに『体調を崩した』って会えなくて。Kには、わたしがエースだって言われていたから、クリスマスに会えないっていうのは、本カノと会うからだろうって思ったけど、信じたくないって気持ちもあって。わたしとKが出会ったのは10月の終わり頃だったので、代わりにクリスマスと月の記念日をまとめて『締め日にやろうな』って言われていたのに、まったく連絡が付かなくなっちゃって」 締め日というのは、月の最終営業日のこと。その月の総売り上げが決定すると同時に、ナンバーと呼ばれる各ホストの売り上げ順位も決まる。ナンバーの上位に入ることを目論んでいるホストは、締め日には多額の金を使ってくれる太客を店に呼び、呼ばれた客たちは、担当をひとつでも上のナンバーに押し上げるべく、高額なボトルやシャンパンのオーダー合戦を繰り広げる。担当ホストが逮捕され…エースであるはずの有香は、呼ばれて当然のはずであったが、当日を過ぎても音沙汰がなかったという。『いちばん、お金使ってるよ』と 言われて嬉しくて 「LINEのブロックはされてないから、年始に営業が始まったら、また連絡が来るかなと思って。しつこくせずに、年明けの営業でシャンパンをおろせるように稼いで、いい子にして待っておこうと思ってたら、営業が始まっても連絡が来なくて。いよいよどうしたのかなって思ったら、実は警察に捕まってることが判明したんです」実はKには、ホストを始める二年ほど前から付き合っていて、一緒に暮らしてもいる 本カノ”の女性がいた。が、その女性に対して殴るなどのDV行為を行っていた上に、12月に入ってからは、二人で飼っている犬にまであたるようにもなり、耐えきれなくなった女性が警察に通報。Kは逮捕されることになったという。有香がそのことを聞いたのは、Kの親友のYからだった。ちなみにYは、Kとは別の店でやはりホストをしている。 「Yとは実際に会ったことはなくて、でもTwitterではお互いにフォローしてつながっていたんです。で、『この人なら何か知ってるかも』ってDMを送ったら、実は本カノにDVをして捕まってるって話が出てきて。でも、その事実を知っても、わたしがKのことを好きな気持ちは1ミリも変わらなかったし、本カノと別れてくれれば、わたしが本カノに昇格できるだろうから好都合くらいのノリでした。むしろYのほうが、親友がそんなことになって元気がない感じだったから『焼肉でもご馳走するよ』って誘って一緒に食事をしたあとに、年明けの初営業だっていうYのお店に行くことになったんだけど、それが楽しくって、それから5日くらい連続で通ったんです。たぶんお互いが寂しくて一人になりたくなかったこともあって、毎日のようにアフターしてくれたり、『今日も泊まりに来る?』みたいな感じで家に誘われたりして。そうしたら『いちばん、お金使ってるよ』って言われて。わたしはエースでいたいって気持ちが強いので、嬉しくて」 なぜエース”を目指すのか実はそこが最初から疑問だった。というのもKと出会った月、有香は借金までして200万円を突っ込んでいる。Uに対しても「お金がなくて、店に通えなくて申し訳ない」という気持ちを抱いていたと語っていた。有香からは、積極的にホストに多額の金を投じたい”という意向を感じる。TinderでUやKとマッチングしたのも、担当を見つけることを期待しての、いわばホス活”のようなものといえるのではないか。 もちろん、もともとホストクラブに興味があったことは、すでに聞いている。だとしても「ちょっと覗いてみるだけ」というライトな感じではなくエース”、言い換えればホス狂い”になることを望んでいるような気がしてならないのだ。本カノっていうよりも パートナーとして一緒にいたい 有香はなぜエース”を目指すのか。「私は好きなタイミングでお店に行って、ガーッと飲んで、ホストの順位とかも気にせず、月に20万くらいで遊ぶっていう遊び方には興味がないんです。けど、自分が本営されてるってことは、ほかの客にも本営してるとして、本営の中の一番が誰かっていったら、いちばんお金を使ってる子だと思う。本カノになれないなら、せめていちばん使ってる子の位置にいたい。100万円くらいで本営されたところで、上には200万円とか300万円とか使う子がいるから、圧倒的な1位にはなれないし、それ以上に自分より使う存在がいるのが無理。いちばんじゃないと嫌、自己満足なんですけど。圧倒的エースがいい」 そんなふうにエース”へのこだわりを持つ有香にとって、Yの発言は、心を揺らすのに十分だった。その後、釈放されたKから再び連絡があり、やはり好きだという気持ちは消えずに会いに行ったものの、Yから、『Kにはまた別の本カノ”ができた』と聞かされ、「結局、本カノと切れても、選ばれるのはエースじゃないんだなっていう現実を感じて、一気に冷めちゃった」という。そして今の有香の担当はYだ。Kからすると、親友であるはずのYに、有香を横取りされたという話になる。が、有香の心変わりが責められるいわれはない。なぜならば、誰を担当にするかは、客である有香が決めることだからだ。「今の担当とは、出会い方が特殊だからか、絆というか、戦友というか……友達みたいな感じ。『本営してくれ』ってふざけて言ったこともあるんですよ。そしたら『マジでできないんだよな』って。でも、実際に『ホテルに行こう』って言われたら、『どうしたの?』ってなっちゃうし、終わっちゃう気がする。もちろん、結ばれたいって気持ちがないわけではないけど、でも本カノになったりとか、同棲して結婚したりすると、嫌な面が絶対に見えてくるわけじゃないですか。好きだからこそ見えないほうがいいのかなって。綺麗で、かわいい人と幸せになってほしいと思ったりもするけど……いろいろ考えます。でもなるようにしかならないから、考えないようにしようって。本カノっていうよりもパートナーとして一緒にいたいですね。親友って位置でもいいし、お互いが信頼し合える存在として、できればずっと一緒に居続けたい」親友のような絆で結ばれたホストのエース”で居続けるため、有香はもうすぐ大学をやめる。これが彼女の選択”だ。
本カノ”以外のカノジョはすべて営業上の疑似カノジョだということは間違いないが、本カノ”だったはずが、いつの間にか店に通うようになり、エース”になっていた、という話もある。というわけで、有香もまた「本カノなのか、本営なのか」で悩むことになった。なぜならば、Uに呼び出されるのは、いつもプライベートの時間で、店の外だったからだ。
「Uはお酒が弱くて、夜中にいきなり『酔っちゃったから、迎えに来て』って連絡が来るんですよ。仕方なく終電で新宿まで迎えに出て、店の前でつかまえて、お水を買ってあげて。そこを通りかかるお店の従業員の人たちから『なんだあの二人は?』みたいな視線を浴びながら、担いでタクシーに乗せて彼の家まで送って。その時点でもう電車がないから、彼の家に泊まって始発で帰ってそのまま学校行ってって、そういうことが週1から2回くらいあって。介護してるみたいな感じで、疲れ果てちゃって。今考えると、担当が酔っ払ったときに、気軽に呼んでもらえる存在ってうらやましいなって思うんですけど、そのときは自分が彼女だと信じ込んでいるから、『なんで都合よく使われないといけないんだろう』としか思えなくて。しかも彼は、お客さんとも枕(セックス)したりするから、泊まりに行ったときに身体のあちこちにキスマークついてるみたいなのが耐えられなくて」(有香、以下同)
有香の自宅に泊めていれば家カノ”とも判断できるが、泊まるのはUの家だ。となると、店に呼ばれるか否かが判断の決め手となる。実際、有香は店に、一度だけ足を運んだ。
「それも全然楽しくなくって。人生二度目のホストクラブですよ。まだ全然、行き慣れてない状態で、緊張していたせいもあるけどソファの背もたれに寄りかかって座ってたら、その日に家に帰ってから『なんであんな態度だったの? もっと楽しそうにしてよ』って文句を言われて。なのに、売り上げがあがらない日が続くと、Uが病み営”をかけてくるのが鬱陶しくて。当時、わたしは普通のアルバイトしかしてなくてお金がなかったから、ホストクラブに気軽に通える余裕もなかったし。だから『営業として付き合っているのかな』とか思いながら、『わからないから信じたい』って気持ちもありつつ、『でも、お店に通ってお金を使ってあげることもできない、どうしよう』って状態になってしまったんです」
病み営”とは、しんどそうなところや、苦しんでいるところをアピールして、女性の同情や庇護欲に訴える営業テクニックだ。普段は本営や、疑似恋愛を装う色営、友達のような関係を築く友営であっても、売り上げをあげたい月末やイベント時など、ここぞというときに使う場合もある。もちろん、本当に売り上げが心配で、本カノである有香に不安を漏らしている可能性だってある。 週に数回、夜中に呼び出され、肉体関係もあり、店に会いに行ったこともあるが、それも一度きり。あっという間に200万果たしてUにとって自分は「本カノなのか、本営なのか」と、悩んでいた最中、有香はTinderでマッチしたもう一人のホスト、Kの店へと足を運ぶことになった。 大金を使うと気持ちが入っちゃって、 もう引けなくなる 一応は彼氏”がいながらも、Kに会いに行くことにしたのは、有香にとってKはアイドルのような存在だったからだ。プライベートでデートをするのではなく、店に行くのだから浮気とも、また違う。「もともと、Kのほうが自分のタイプに近くて。新しいお店に出勤を始めたっていうので、どうしても一度、会いたくてお店に行ったら、すごく楽しかったし、イチャイチャもしてくれて。それでガンってハマって、あっという間に200万円くらい使っちゃったんです」200万はこれまでの貯金や、親への借金、クレジットカードも限度額ギリギリまで使い、かき集められるところから集めたという。こうしてKに瞬く間にハマってしまった――狂った――有香は、すぐにUに別れを告げた。その理由として、Tinderで知り合った別のホストにハマってしまったこと。翌月に控えているKの誕生日には、小計100万円のシャンパンをおろす(ホストクラブではシャンパンを注文することを、おろすという。小計はメニューに書かれている値段で、小計100万円のシャンパンの場合、税金・サービス料などが加算されておおよそ会計額は150万円ほどになる)予定であることを、Uに伝えたものの、Uは「俺のほうが大事にするから、戻ってきたほうがいい」と譲らない。仕方なく、有香はすでに200万円ほど使っていることを告白し、ようやくUは諦めて別れることを了承してくれたという。photo by gettyimages「Uもホストなので、大金を使うと気持ちが入っちゃって、もう引けなくなってるっていうことを、わかってくれたんですよね。Uの店に行ったときに使ったのは2万円だけだったし」いくら売り上げをあげたかが、自分の価値に直結するホストにとっては、金は愛の深さの証といってもいい。自らに費やされたのはたった2万円、相手の男には200万円。あっさり身を引くほどのダメージをUは被ったことは間違いない。もう親に頼れないから「デリ」こうして無事にUと別れた有香は、Kに完全移行するも、すでに貯金は使い果たしている状態だった。が、目前にはKの誕生日が迫っている。「もう親に借りるのも無理で、これ以上は自分で働くしかないなって。手っ取り早いし、それしかないと思って、デリで働くことにしたんです。あとは高校生の頃から細々とやっているパパ活と」デリヘル、通称デリは、客の自宅やホテルなどに出張し、性的なサービスを提供する風俗だ。パパ活は、パパ活アプリや交際クラブなどで相手を見つけ、茶飯(お茶や食事をすること)で一回1~2万円ほどの現金をもらうのと同時に、買い物代などを支払ってもらう。そうして得た金銭で、11月のKの誕生日にはシャンパンをおろし、月間で200万円、その翌月の12月の中旬までで140万ほど費やしたところで、突如、Kと連絡が取れなくなってしまったという。「本当はクリスマスにも会う予定があったのに『体調を崩した』って会えなくて。Kには、わたしがエースだって言われていたから、クリスマスに会えないっていうのは、本カノと会うからだろうって思ったけど、信じたくないって気持ちもあって。わたしとKが出会ったのは10月の終わり頃だったので、代わりにクリスマスと月の記念日をまとめて『締め日にやろうな』って言われていたのに、まったく連絡が付かなくなっちゃって」 締め日というのは、月の最終営業日のこと。その月の総売り上げが決定すると同時に、ナンバーと呼ばれる各ホストの売り上げ順位も決まる。ナンバーの上位に入ることを目論んでいるホストは、締め日には多額の金を使ってくれる太客を店に呼び、呼ばれた客たちは、担当をひとつでも上のナンバーに押し上げるべく、高額なボトルやシャンパンのオーダー合戦を繰り広げる。担当ホストが逮捕され…エースであるはずの有香は、呼ばれて当然のはずであったが、当日を過ぎても音沙汰がなかったという。『いちばん、お金使ってるよ』と 言われて嬉しくて 「LINEのブロックはされてないから、年始に営業が始まったら、また連絡が来るかなと思って。しつこくせずに、年明けの営業でシャンパンをおろせるように稼いで、いい子にして待っておこうと思ってたら、営業が始まっても連絡が来なくて。いよいよどうしたのかなって思ったら、実は警察に捕まってることが判明したんです」実はKには、ホストを始める二年ほど前から付き合っていて、一緒に暮らしてもいる 本カノ”の女性がいた。が、その女性に対して殴るなどのDV行為を行っていた上に、12月に入ってからは、二人で飼っている犬にまであたるようにもなり、耐えきれなくなった女性が警察に通報。Kは逮捕されることになったという。有香がそのことを聞いたのは、Kの親友のYからだった。ちなみにYは、Kとは別の店でやはりホストをしている。 「Yとは実際に会ったことはなくて、でもTwitterではお互いにフォローしてつながっていたんです。で、『この人なら何か知ってるかも』ってDMを送ったら、実は本カノにDVをして捕まってるって話が出てきて。でも、その事実を知っても、わたしがKのことを好きな気持ちは1ミリも変わらなかったし、本カノと別れてくれれば、わたしが本カノに昇格できるだろうから好都合くらいのノリでした。むしろYのほうが、親友がそんなことになって元気がない感じだったから『焼肉でもご馳走するよ』って誘って一緒に食事をしたあとに、年明けの初営業だっていうYのお店に行くことになったんだけど、それが楽しくって、それから5日くらい連続で通ったんです。たぶんお互いが寂しくて一人になりたくなかったこともあって、毎日のようにアフターしてくれたり、『今日も泊まりに来る?』みたいな感じで家に誘われたりして。そうしたら『いちばん、お金使ってるよ』って言われて。わたしはエースでいたいって気持ちが強いので、嬉しくて」 なぜエース”を目指すのか実はそこが最初から疑問だった。というのもKと出会った月、有香は借金までして200万円を突っ込んでいる。Uに対しても「お金がなくて、店に通えなくて申し訳ない」という気持ちを抱いていたと語っていた。有香からは、積極的にホストに多額の金を投じたい”という意向を感じる。TinderでUやKとマッチングしたのも、担当を見つけることを期待しての、いわばホス活”のようなものといえるのではないか。 もちろん、もともとホストクラブに興味があったことは、すでに聞いている。だとしても「ちょっと覗いてみるだけ」というライトな感じではなくエース”、言い換えればホス狂い”になることを望んでいるような気がしてならないのだ。本カノっていうよりも パートナーとして一緒にいたい 有香はなぜエース”を目指すのか。「私は好きなタイミングでお店に行って、ガーッと飲んで、ホストの順位とかも気にせず、月に20万くらいで遊ぶっていう遊び方には興味がないんです。けど、自分が本営されてるってことは、ほかの客にも本営してるとして、本営の中の一番が誰かっていったら、いちばんお金を使ってる子だと思う。本カノになれないなら、せめていちばん使ってる子の位置にいたい。100万円くらいで本営されたところで、上には200万円とか300万円とか使う子がいるから、圧倒的な1位にはなれないし、それ以上に自分より使う存在がいるのが無理。いちばんじゃないと嫌、自己満足なんですけど。圧倒的エースがいい」 そんなふうにエース”へのこだわりを持つ有香にとって、Yの発言は、心を揺らすのに十分だった。その後、釈放されたKから再び連絡があり、やはり好きだという気持ちは消えずに会いに行ったものの、Yから、『Kにはまた別の本カノ”ができた』と聞かされ、「結局、本カノと切れても、選ばれるのはエースじゃないんだなっていう現実を感じて、一気に冷めちゃった」という。そして今の有香の担当はYだ。Kからすると、親友であるはずのYに、有香を横取りされたという話になる。が、有香の心変わりが責められるいわれはない。なぜならば、誰を担当にするかは、客である有香が決めることだからだ。「今の担当とは、出会い方が特殊だからか、絆というか、戦友というか……友達みたいな感じ。『本営してくれ』ってふざけて言ったこともあるんですよ。そしたら『マジでできないんだよな』って。でも、実際に『ホテルに行こう』って言われたら、『どうしたの?』ってなっちゃうし、終わっちゃう気がする。もちろん、結ばれたいって気持ちがないわけではないけど、でも本カノになったりとか、同棲して結婚したりすると、嫌な面が絶対に見えてくるわけじゃないですか。好きだからこそ見えないほうがいいのかなって。綺麗で、かわいい人と幸せになってほしいと思ったりもするけど……いろいろ考えます。でもなるようにしかならないから、考えないようにしようって。本カノっていうよりもパートナーとして一緒にいたいですね。親友って位置でもいいし、お互いが信頼し合える存在として、できればずっと一緒に居続けたい」親友のような絆で結ばれたホストのエース”で居続けるため、有香はもうすぐ大学をやめる。これが彼女の選択”だ。
病み営”とは、しんどそうなところや、苦しんでいるところをアピールして、女性の同情や庇護欲に訴える営業テクニックだ。普段は本営や、疑似恋愛を装う色営、友達のような関係を築く友営であっても、売り上げをあげたい月末やイベント時など、ここぞというときに使う場合もある。
もちろん、本当に売り上げが心配で、本カノである有香に不安を漏らしている可能性だってある。 週に数回、夜中に呼び出され、肉体関係もあり、店に会いに行ったこともあるが、それも一度きり。
果たしてUにとって自分は「本カノなのか、本営なのか」と、悩んでいた最中、有香はTinderでマッチしたもう一人のホスト、Kの店へと足を運ぶことになった。 大金を使うと気持ちが入っちゃって、 もう引けなくなる 一応は彼氏”がいながらも、Kに会いに行くことにしたのは、有香にとってKはアイドルのような存在だったからだ。プライベートでデートをするのではなく、店に行くのだから浮気とも、また違う。
「もともと、Kのほうが自分のタイプに近くて。新しいお店に出勤を始めたっていうので、どうしても一度、会いたくてお店に行ったら、すごく楽しかったし、イチャイチャもしてくれて。それでガンってハマって、あっという間に200万円くらい使っちゃったんです」
200万はこれまでの貯金や、親への借金、クレジットカードも限度額ギリギリまで使い、かき集められるところから集めたという。こうしてKに瞬く間にハマってしまった――狂った――有香は、すぐにUに別れを告げた。
その理由として、Tinderで知り合った別のホストにハマってしまったこと。翌月に控えているKの誕生日には、小計100万円のシャンパンをおろす(ホストクラブではシャンパンを注文することを、おろすという。
小計はメニューに書かれている値段で、小計100万円のシャンパンの場合、税金・サービス料などが加算されておおよそ会計額は150万円ほどになる)予定であることを、Uに伝えたものの、Uは「俺のほうが大事にするから、戻ってきたほうがいい」と譲らない。仕方なく、有香はすでに200万円ほど使っていることを告白し、ようやくUは諦めて別れることを了承してくれたという。
photo by gettyimages
「Uもホストなので、大金を使うと気持ちが入っちゃって、もう引けなくなってるっていうことを、わかってくれたんですよね。Uの店に行ったときに使ったのは2万円だけだったし」
いくら売り上げをあげたかが、自分の価値に直結するホストにとっては、金は愛の深さの証といってもいい。自らに費やされたのはたった2万円、相手の男には200万円。あっさり身を引くほどのダメージをUは被ったことは間違いない。
こうして無事にUと別れた有香は、Kに完全移行するも、すでに貯金は使い果たしている状態だった。が、目前にはKの誕生日が迫っている。
「もう親に借りるのも無理で、これ以上は自分で働くしかないなって。手っ取り早いし、それしかないと思って、デリで働くことにしたんです。あとは高校生の頃から細々とやっているパパ活と」
デリヘル、通称デリは、客の自宅やホテルなどに出張し、性的なサービスを提供する風俗だ。パパ活は、パパ活アプリや交際クラブなどで相手を見つけ、茶飯(お茶や食事をすること)で一回1~2万円ほどの現金をもらうのと同時に、買い物代などを支払ってもらう。
そうして得た金銭で、11月のKの誕生日にはシャンパンをおろし、月間で200万円、その翌月の12月の中旬までで140万ほど費やしたところで、突如、Kと連絡が取れなくなってしまったという。
「本当はクリスマスにも会う予定があったのに『体調を崩した』って会えなくて。Kには、わたしがエースだって言われていたから、クリスマスに会えないっていうのは、本カノと会うからだろうって思ったけど、信じたくないって気持ちもあって。わたしとKが出会ったのは10月の終わり頃だったので、代わりにクリスマスと月の記念日をまとめて『締め日にやろうな』って言われていたのに、まったく連絡が付かなくなっちゃって」
締め日というのは、月の最終営業日のこと。その月の総売り上げが決定すると同時に、ナンバーと呼ばれる各ホストの売り上げ順位も決まる。ナンバーの上位に入ることを目論んでいるホストは、締め日には多額の金を使ってくれる太客を店に呼び、呼ばれた客たちは、担当をひとつでも上のナンバーに押し上げるべく、高額なボトルやシャンパンのオーダー合戦を繰り広げる。担当ホストが逮捕され…エースであるはずの有香は、呼ばれて当然のはずであったが、当日を過ぎても音沙汰がなかったという。『いちばん、お金使ってるよ』と 言われて嬉しくて 「LINEのブロックはされてないから、年始に営業が始まったら、また連絡が来るかなと思って。しつこくせずに、年明けの営業でシャンパンをおろせるように稼いで、いい子にして待っておこうと思ってたら、営業が始まっても連絡が来なくて。いよいよどうしたのかなって思ったら、実は警察に捕まってることが判明したんです」実はKには、ホストを始める二年ほど前から付き合っていて、一緒に暮らしてもいる 本カノ”の女性がいた。が、その女性に対して殴るなどのDV行為を行っていた上に、12月に入ってからは、二人で飼っている犬にまであたるようにもなり、耐えきれなくなった女性が警察に通報。Kは逮捕されることになったという。有香がそのことを聞いたのは、Kの親友のYからだった。ちなみにYは、Kとは別の店でやはりホストをしている。 「Yとは実際に会ったことはなくて、でもTwitterではお互いにフォローしてつながっていたんです。で、『この人なら何か知ってるかも』ってDMを送ったら、実は本カノにDVをして捕まってるって話が出てきて。でも、その事実を知っても、わたしがKのことを好きな気持ちは1ミリも変わらなかったし、本カノと別れてくれれば、わたしが本カノに昇格できるだろうから好都合くらいのノリでした。むしろYのほうが、親友がそんなことになって元気がない感じだったから『焼肉でもご馳走するよ』って誘って一緒に食事をしたあとに、年明けの初営業だっていうYのお店に行くことになったんだけど、それが楽しくって、それから5日くらい連続で通ったんです。たぶんお互いが寂しくて一人になりたくなかったこともあって、毎日のようにアフターしてくれたり、『今日も泊まりに来る?』みたいな感じで家に誘われたりして。そうしたら『いちばん、お金使ってるよ』って言われて。わたしはエースでいたいって気持ちが強いので、嬉しくて」 なぜエース”を目指すのか実はそこが最初から疑問だった。というのもKと出会った月、有香は借金までして200万円を突っ込んでいる。Uに対しても「お金がなくて、店に通えなくて申し訳ない」という気持ちを抱いていたと語っていた。有香からは、積極的にホストに多額の金を投じたい”という意向を感じる。TinderでUやKとマッチングしたのも、担当を見つけることを期待しての、いわばホス活”のようなものといえるのではないか。 もちろん、もともとホストクラブに興味があったことは、すでに聞いている。だとしても「ちょっと覗いてみるだけ」というライトな感じではなくエース”、言い換えればホス狂い”になることを望んでいるような気がしてならないのだ。本カノっていうよりも パートナーとして一緒にいたい 有香はなぜエース”を目指すのか。「私は好きなタイミングでお店に行って、ガーッと飲んで、ホストの順位とかも気にせず、月に20万くらいで遊ぶっていう遊び方には興味がないんです。けど、自分が本営されてるってことは、ほかの客にも本営してるとして、本営の中の一番が誰かっていったら、いちばんお金を使ってる子だと思う。本カノになれないなら、せめていちばん使ってる子の位置にいたい。100万円くらいで本営されたところで、上には200万円とか300万円とか使う子がいるから、圧倒的な1位にはなれないし、それ以上に自分より使う存在がいるのが無理。いちばんじゃないと嫌、自己満足なんですけど。圧倒的エースがいい」 そんなふうにエース”へのこだわりを持つ有香にとって、Yの発言は、心を揺らすのに十分だった。その後、釈放されたKから再び連絡があり、やはり好きだという気持ちは消えずに会いに行ったものの、Yから、『Kにはまた別の本カノ”ができた』と聞かされ、「結局、本カノと切れても、選ばれるのはエースじゃないんだなっていう現実を感じて、一気に冷めちゃった」という。そして今の有香の担当はYだ。Kからすると、親友であるはずのYに、有香を横取りされたという話になる。が、有香の心変わりが責められるいわれはない。なぜならば、誰を担当にするかは、客である有香が決めることだからだ。「今の担当とは、出会い方が特殊だからか、絆というか、戦友というか……友達みたいな感じ。『本営してくれ』ってふざけて言ったこともあるんですよ。そしたら『マジでできないんだよな』って。でも、実際に『ホテルに行こう』って言われたら、『どうしたの?』ってなっちゃうし、終わっちゃう気がする。もちろん、結ばれたいって気持ちがないわけではないけど、でも本カノになったりとか、同棲して結婚したりすると、嫌な面が絶対に見えてくるわけじゃないですか。好きだからこそ見えないほうがいいのかなって。綺麗で、かわいい人と幸せになってほしいと思ったりもするけど……いろいろ考えます。でもなるようにしかならないから、考えないようにしようって。本カノっていうよりもパートナーとして一緒にいたいですね。親友って位置でもいいし、お互いが信頼し合える存在として、できればずっと一緒に居続けたい」親友のような絆で結ばれたホストのエース”で居続けるため、有香はもうすぐ大学をやめる。これが彼女の選択”だ。
締め日というのは、月の最終営業日のこと。その月の総売り上げが決定すると同時に、ナンバーと呼ばれる各ホストの売り上げ順位も決まる。ナンバーの上位に入ることを目論んでいるホストは、締め日には多額の金を使ってくれる太客を店に呼び、呼ばれた客たちは、担当をひとつでも上のナンバーに押し上げるべく、高額なボトルやシャンパンのオーダー合戦を繰り広げる。
エースであるはずの有香は、呼ばれて当然のはずであったが、当日を過ぎても音沙汰がなかったという。
『いちばん、お金使ってるよ』と 言われて嬉しくて 「LINEのブロックはされてないから、年始に営業が始まったら、また連絡が来るかなと思って。しつこくせずに、年明けの営業でシャンパンをおろせるように稼いで、いい子にして待っておこうと思ってたら、営業が始まっても連絡が来なくて。いよいよどうしたのかなって思ったら、実は警察に捕まってることが判明したんです」
実はKには、ホストを始める二年ほど前から付き合っていて、一緒に暮らしてもいる 本カノ”の女性がいた。が、その女性に対して殴るなどのDV行為を行っていた上に、12月に入ってからは、二人で飼っている犬にまであたるようにもなり、耐えきれなくなった女性が警察に通報。Kは逮捕されることになったという。有香がそのことを聞いたのは、Kの親友のYからだった。ちなみにYは、Kとは別の店でやはりホストをしている。
「Yとは実際に会ったことはなくて、でもTwitterではお互いにフォローしてつながっていたんです。で、『この人なら何か知ってるかも』ってDMを送ったら、実は本カノにDVをして捕まってるって話が出てきて。でも、その事実を知っても、わたしがKのことを好きな気持ちは1ミリも変わらなかったし、本カノと別れてくれれば、わたしが本カノに昇格できるだろうから好都合くらいのノリでした。むしろYのほうが、親友がそんなことになって元気がない感じだったから『焼肉でもご馳走するよ』って誘って一緒に食事をしたあとに、年明けの初営業だっていうYのお店に行くことになったんだけど、それが楽しくって、それから5日くらい連続で通ったんです。たぶんお互いが寂しくて一人になりたくなかったこともあって、毎日のようにアフターしてくれたり、『今日も泊まりに来る?』みたいな感じで家に誘われたりして。そうしたら『いちばん、お金使ってるよ』って言われて。わたしはエースでいたいって気持ちが強いので、嬉しくて」 なぜエース”を目指すのか実はそこが最初から疑問だった。というのもKと出会った月、有香は借金までして200万円を突っ込んでいる。Uに対しても「お金がなくて、店に通えなくて申し訳ない」という気持ちを抱いていたと語っていた。有香からは、積極的にホストに多額の金を投じたい”という意向を感じる。TinderでUやKとマッチングしたのも、担当を見つけることを期待しての、いわばホス活”のようなものといえるのではないか。 もちろん、もともとホストクラブに興味があったことは、すでに聞いている。だとしても「ちょっと覗いてみるだけ」というライトな感じではなくエース”、言い換えればホス狂い”になることを望んでいるような気がしてならないのだ。本カノっていうよりも パートナーとして一緒にいたい 有香はなぜエース”を目指すのか。「私は好きなタイミングでお店に行って、ガーッと飲んで、ホストの順位とかも気にせず、月に20万くらいで遊ぶっていう遊び方には興味がないんです。けど、自分が本営されてるってことは、ほかの客にも本営してるとして、本営の中の一番が誰かっていったら、いちばんお金を使ってる子だと思う。本カノになれないなら、せめていちばん使ってる子の位置にいたい。100万円くらいで本営されたところで、上には200万円とか300万円とか使う子がいるから、圧倒的な1位にはなれないし、それ以上に自分より使う存在がいるのが無理。いちばんじゃないと嫌、自己満足なんですけど。圧倒的エースがいい」 そんなふうにエース”へのこだわりを持つ有香にとって、Yの発言は、心を揺らすのに十分だった。その後、釈放されたKから再び連絡があり、やはり好きだという気持ちは消えずに会いに行ったものの、Yから、『Kにはまた別の本カノ”ができた』と聞かされ、「結局、本カノと切れても、選ばれるのはエースじゃないんだなっていう現実を感じて、一気に冷めちゃった」という。そして今の有香の担当はYだ。Kからすると、親友であるはずのYに、有香を横取りされたという話になる。が、有香の心変わりが責められるいわれはない。なぜならば、誰を担当にするかは、客である有香が決めることだからだ。「今の担当とは、出会い方が特殊だからか、絆というか、戦友というか……友達みたいな感じ。『本営してくれ』ってふざけて言ったこともあるんですよ。そしたら『マジでできないんだよな』って。でも、実際に『ホテルに行こう』って言われたら、『どうしたの?』ってなっちゃうし、終わっちゃう気がする。もちろん、結ばれたいって気持ちがないわけではないけど、でも本カノになったりとか、同棲して結婚したりすると、嫌な面が絶対に見えてくるわけじゃないですか。好きだからこそ見えないほうがいいのかなって。綺麗で、かわいい人と幸せになってほしいと思ったりもするけど……いろいろ考えます。でもなるようにしかならないから、考えないようにしようって。本カノっていうよりもパートナーとして一緒にいたいですね。親友って位置でもいいし、お互いが信頼し合える存在として、できればずっと一緒に居続けたい」親友のような絆で結ばれたホストのエース”で居続けるため、有香はもうすぐ大学をやめる。これが彼女の選択”だ。
「Yとは実際に会ったことはなくて、でもTwitterではお互いにフォローしてつながっていたんです。で、『この人なら何か知ってるかも』ってDMを送ったら、実は本カノにDVをして捕まってるって話が出てきて。でも、その事実を知っても、わたしがKのことを好きな気持ちは1ミリも変わらなかったし、本カノと別れてくれれば、わたしが本カノに昇格できるだろうから好都合くらいのノリでした。むしろYのほうが、親友がそんなことになって元気がない感じだったから『焼肉でもご馳走するよ』って誘って一緒に食事をしたあとに、年明けの初営業だっていうYのお店に行くことになったんだけど、それが楽しくって、それから5日くらい連続で通ったんです。たぶんお互いが寂しくて一人になりたくなかったこともあって、毎日のようにアフターしてくれたり、『今日も泊まりに来る?』みたいな感じで家に誘われたりして。そうしたら『いちばん、お金使ってるよ』って言われて。わたしはエースでいたいって気持ちが強いので、嬉しくて」
実はそこが最初から疑問だった。というのもKと出会った月、有香は借金までして200万円を突っ込んでいる。Uに対しても「お金がなくて、店に通えなくて申し訳ない」という気持ちを抱いていたと語っていた。
有香からは、積極的にホストに多額の金を投じたい”という意向を感じる。TinderでUやKとマッチングしたのも、担当を見つけることを期待しての、いわばホス活”のようなものといえるのではないか。 もちろん、もともとホストクラブに興味があったことは、すでに聞いている。だとしても「ちょっと覗いてみるだけ」というライトな感じではなくエース”、言い換えればホス狂い”になることを望んでいるような気がしてならないのだ。
本カノっていうよりも パートナーとして一緒にいたい 有香はなぜエース”を目指すのか。
「私は好きなタイミングでお店に行って、ガーッと飲んで、ホストの順位とかも気にせず、月に20万くらいで遊ぶっていう遊び方には興味がないんです。けど、自分が本営されてるってことは、ほかの客にも本営してるとして、本営の中の一番が誰かっていったら、いちばんお金を使ってる子だと思う。本カノになれないなら、せめていちばん使ってる子の位置にいたい。100万円くらいで本営されたところで、上には200万円とか300万円とか使う子がいるから、圧倒的な1位にはなれないし、それ以上に自分より使う存在がいるのが無理。いちばんじゃないと嫌、自己満足なんですけど。圧倒的エースがいい」
そんなふうにエース”へのこだわりを持つ有香にとって、Yの発言は、心を揺らすのに十分だった。その後、釈放されたKから再び連絡があり、やはり好きだという気持ちは消えずに会いに行ったものの、Yから、『Kにはまた別の本カノ”ができた』と聞かされ、「結局、本カノと切れても、選ばれるのはエースじゃないんだなっていう現実を感じて、一気に冷めちゃった」という。そして今の有香の担当はYだ。Kからすると、親友であるはずのYに、有香を横取りされたという話になる。が、有香の心変わりが責められるいわれはない。なぜならば、誰を担当にするかは、客である有香が決めることだからだ。「今の担当とは、出会い方が特殊だからか、絆というか、戦友というか……友達みたいな感じ。『本営してくれ』ってふざけて言ったこともあるんですよ。そしたら『マジでできないんだよな』って。でも、実際に『ホテルに行こう』って言われたら、『どうしたの?』ってなっちゃうし、終わっちゃう気がする。もちろん、結ばれたいって気持ちがないわけではないけど、でも本カノになったりとか、同棲して結婚したりすると、嫌な面が絶対に見えてくるわけじゃないですか。好きだからこそ見えないほうがいいのかなって。綺麗で、かわいい人と幸せになってほしいと思ったりもするけど……いろいろ考えます。でもなるようにしかならないから、考えないようにしようって。本カノっていうよりもパートナーとして一緒にいたいですね。親友って位置でもいいし、お互いが信頼し合える存在として、できればずっと一緒に居続けたい」親友のような絆で結ばれたホストのエース”で居続けるため、有香はもうすぐ大学をやめる。これが彼女の選択”だ。
そんなふうにエース”へのこだわりを持つ有香にとって、Yの発言は、心を揺らすのに十分だった。その後、釈放されたKから再び連絡があり、やはり好きだという気持ちは消えずに会いに行ったものの、Yから、『Kにはまた別の本カノ”ができた』と聞かされ、「結局、本カノと切れても、選ばれるのはエースじゃないんだなっていう現実を感じて、一気に冷めちゃった」という。
そして今の有香の担当はYだ。
Kからすると、親友であるはずのYに、有香を横取りされたという話になる。が、有香の心変わりが責められるいわれはない。なぜならば、誰を担当にするかは、客である有香が決めることだからだ。
「今の担当とは、出会い方が特殊だからか、絆というか、戦友というか……友達みたいな感じ。『本営してくれ』ってふざけて言ったこともあるんですよ。そしたら『マジでできないんだよな』って。でも、実際に『ホテルに行こう』って言われたら、『どうしたの?』ってなっちゃうし、終わっちゃう気がする。もちろん、結ばれたいって気持ちがないわけではないけど、でも本カノになったりとか、同棲して結婚したりすると、嫌な面が絶対に見えてくるわけじゃないですか。好きだからこそ見えないほうがいいのかなって。綺麗で、かわいい人と幸せになってほしいと思ったりもするけど……いろいろ考えます。でもなるようにしかならないから、考えないようにしようって。本カノっていうよりもパートナーとして一緒にいたいですね。親友って位置でもいいし、お互いが信頼し合える存在として、できればずっと一緒に居続けたい」
親友のような絆で結ばれたホストのエース”で居続けるため、有香はもうすぐ大学をやめる。これが彼女の選択”だ。