寝床の中でだらだらと10分以上を過ごし、二度寝してしまう。こんな朝を過ごしてはいないだろうか。しかし、こうした日常の何気ない行動は改めたほうがいい。
「朝の時間を有意義に使わなければ、体のリズムを整えることができず、うつ病や不眠症などのリスクが上がってしまいます」(東北大学特任教授の村田裕之氏)
だからといって「朝から活発に動こう」と起き抜けに運動を行うのは非常に危険だ。多くの人が誤解していることだが、
「高齢者にとって朝、起きてからの45分間は、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高い危険な時間帯です。ラジオ体操や散歩などの運動を行うのは避けておくべきでしょう」(東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏)
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朝の45分はあなたの生死の分かれ目とも言えるぐらい、大切な時間なのだが、では、具体的にどのようなことを実践すればよいのだろうか。「一日を元気に始め、健康状態を保つための鍵となるのが、精神を安定させる神経伝達物質の『セロトニン』です。この分泌を促進させるためには、医薬品に頼るのではなく、自宅での生活習慣を見直すことが重要なのです」(前出・村田氏)理想の「45分」の過ごし方を、時系列で紹介しよう。まず実践してほしいのが、「一日イメージトレーニング」だ。目が覚めてからの数分間で、前日の反省やその日の健康チェックを行う。精神科医の樺沢紫苑氏が解説する。「目を開けるとセロトニンの分泌がスタートし、脳は覚醒状態に移行します。その上で、『昨日飲み過ぎて体調が悪いので60点、今日はアルコールを控えて運動をしよう』など、点数付けをしながら目標設定を行う。すると、幸福物質である『ドーパミン』も分泌され、脳が活性化し、一日のモチベーションを高めてくれるのです」重大疾病のリスクを低減させる布団から出たら、カーテンを開けるか、ベランダに出るなどして朝日を浴びることを意識してほしい。これは、起きてすぐに行うことに意味がある。眠りを誘う「メラトニン」というホルモンの分泌をコントロールすることができるからだ。「雨や曇りの日であっても効果が見込めます。毎朝5分以上は太陽の光を浴びましょう。この際、併せて息を大きく深く吐き出すような呼吸をすると、さらに効果的です」(前出・村田氏)寝起きの体は軽い脱水状態にある。そのまま放っておくと血圧が上昇し、起きてからの45分間で最も発生しやすい、心筋梗塞や脳卒中といった重大疾病のリスクがさらに高まってしまうのだ。「寝ている間に、皮膚や呼気からは200cc程度、膀胱に溜まる分を含めれば約500ccの水分が放出されています。そのため、起きてからすぐにコップ1杯程度の水分を補給する必要があるのです。白湯か常温水を飲むことで、自律神経を優しく起こしてあげられます。冷水や熱いお湯は、休息状態にある胃腸に負担をかけてしまうため、避けたほうがいいでしょう」(前出・梶本氏) トイレを済ませてから体重測定をするのも、健康状態を保つ秘訣だ。「体重は、増えすぎても減りすぎてもいけません。毎日同じ時間、同じ条件で測定し続けることで初めてコントロールできるのです。食事の影響を受けにくい朝食前に記録すれば、体調の変化に敏感になり、脳を活性化させてくれる効果もあります」(前出・樺沢氏)朝風呂や朝シャワーも、自律神経を整える上で重要な習慣と言えるだろう。「寝ている間は副交感神経が優位になっていますが、起きると交感神経が優位になります。朝風呂で体温を上げることで、この切り替えを促進することができるのです」(前出・村田氏)同居する家族がいる場合、朝食はなるべく一緒に摂ることを心掛けたい。村田氏が続ける。「近しい人と話しながら食べることでストレスが緩和され、セロトニンの分泌が促進されます。一人暮らしの場合は、近所の人と井戸端会議をするなどして、会話の機会を作りましょう」起きてから昼までの間に体調が優れない場合、その原因の多くは、低血圧・低血糖・低セロトニンのいずれかだ。衰えた表情筋を鍛えるこれを解決してくれる万能食材がある。バナナだ。良質な炭水化物を含んだバナナを食べれば、低血糖が速やかに改善する上に、冒頭で紹介したセロトニンを生成するのに必要な必須アミノ酸のトリプトファンや、ビタミンB6を効率的に摂取することができる。バナナが苦手な人も、心配する必要はない。トリプトファンは大豆製品にも含まれているため、脳の働きを活性化させる効果があるわかめを具材にした味噌汁を飲むといいだろう。 食後の歯磨きや、身支度をする際にも、脳を活性化させる習慣が隠されている。樺沢氏が語る。「コロナ禍でマスクをしている時間が増えたこともあり、表情筋が衰えてしまっている人が少なくありません。鏡の前で笑顔トレーニングを行うことで顔の筋肉を動かせば、セロトニンの分泌が活発になります。人間関係にも好影響を与えるため、毎日続けましょう」明日の朝からの行動が、今後の寿命を決める。後編記事『レバー、うな重、オリーブオイルもNG「70歳を過ぎたら食べてはいけない」モノ15』では、食生活の観点から気を付けておきたい点を紹介する。「週刊現代」2022年9月24・10月1日号より
朝の45分はあなたの生死の分かれ目とも言えるぐらい、大切な時間なのだが、では、具体的にどのようなことを実践すればよいのだろうか。
「一日を元気に始め、健康状態を保つための鍵となるのが、精神を安定させる神経伝達物質の『セロトニン』です。この分泌を促進させるためには、医薬品に頼るのではなく、自宅での生活習慣を見直すことが重要なのです」(前出・村田氏)
理想の「45分」の過ごし方を、時系列で紹介しよう。
まず実践してほしいのが、「一日イメージトレーニング」だ。目が覚めてからの数分間で、前日の反省やその日の健康チェックを行う。精神科医の樺沢紫苑氏が解説する。
「目を開けるとセロトニンの分泌がスタートし、脳は覚醒状態に移行します。その上で、『昨日飲み過ぎて体調が悪いので60点、今日はアルコールを控えて運動をしよう』など、点数付けをしながら目標設定を行う。
すると、幸福物質である『ドーパミン』も分泌され、脳が活性化し、一日のモチベーションを高めてくれるのです」
布団から出たら、カーテンを開けるか、ベランダに出るなどして朝日を浴びることを意識してほしい。これは、起きてすぐに行うことに意味がある。眠りを誘う「メラトニン」というホルモンの分泌をコントロールすることができるからだ。
「雨や曇りの日であっても効果が見込めます。毎朝5分以上は太陽の光を浴びましょう。この際、併せて息を大きく深く吐き出すような呼吸をすると、さらに効果的です」(前出・村田氏)
寝起きの体は軽い脱水状態にある。そのまま放っておくと血圧が上昇し、起きてからの45分間で最も発生しやすい、心筋梗塞や脳卒中といった重大疾病のリスクがさらに高まってしまうのだ。
「寝ている間に、皮膚や呼気からは200cc程度、膀胱に溜まる分を含めれば約500ccの水分が放出されています。そのため、起きてからすぐにコップ1杯程度の水分を補給する必要があるのです。
白湯か常温水を飲むことで、自律神経を優しく起こしてあげられます。冷水や熱いお湯は、休息状態にある胃腸に負担をかけてしまうため、避けたほうがいいでしょう」(前出・梶本氏)
トイレを済ませてから体重測定をするのも、健康状態を保つ秘訣だ。「体重は、増えすぎても減りすぎてもいけません。毎日同じ時間、同じ条件で測定し続けることで初めてコントロールできるのです。食事の影響を受けにくい朝食前に記録すれば、体調の変化に敏感になり、脳を活性化させてくれる効果もあります」(前出・樺沢氏)朝風呂や朝シャワーも、自律神経を整える上で重要な習慣と言えるだろう。「寝ている間は副交感神経が優位になっていますが、起きると交感神経が優位になります。朝風呂で体温を上げることで、この切り替えを促進することができるのです」(前出・村田氏)同居する家族がいる場合、朝食はなるべく一緒に摂ることを心掛けたい。村田氏が続ける。「近しい人と話しながら食べることでストレスが緩和され、セロトニンの分泌が促進されます。一人暮らしの場合は、近所の人と井戸端会議をするなどして、会話の機会を作りましょう」起きてから昼までの間に体調が優れない場合、その原因の多くは、低血圧・低血糖・低セロトニンのいずれかだ。衰えた表情筋を鍛えるこれを解決してくれる万能食材がある。バナナだ。良質な炭水化物を含んだバナナを食べれば、低血糖が速やかに改善する上に、冒頭で紹介したセロトニンを生成するのに必要な必須アミノ酸のトリプトファンや、ビタミンB6を効率的に摂取することができる。バナナが苦手な人も、心配する必要はない。トリプトファンは大豆製品にも含まれているため、脳の働きを活性化させる効果があるわかめを具材にした味噌汁を飲むといいだろう。 食後の歯磨きや、身支度をする際にも、脳を活性化させる習慣が隠されている。樺沢氏が語る。「コロナ禍でマスクをしている時間が増えたこともあり、表情筋が衰えてしまっている人が少なくありません。鏡の前で笑顔トレーニングを行うことで顔の筋肉を動かせば、セロトニンの分泌が活発になります。人間関係にも好影響を与えるため、毎日続けましょう」明日の朝からの行動が、今後の寿命を決める。後編記事『レバー、うな重、オリーブオイルもNG「70歳を過ぎたら食べてはいけない」モノ15』では、食生活の観点から気を付けておきたい点を紹介する。「週刊現代」2022年9月24・10月1日号より
トイレを済ませてから体重測定をするのも、健康状態を保つ秘訣だ。
「体重は、増えすぎても減りすぎてもいけません。毎日同じ時間、同じ条件で測定し続けることで初めてコントロールできるのです。食事の影響を受けにくい朝食前に記録すれば、体調の変化に敏感になり、脳を活性化させてくれる効果もあります」(前出・樺沢氏)
朝風呂や朝シャワーも、自律神経を整える上で重要な習慣と言えるだろう。
「寝ている間は副交感神経が優位になっていますが、起きると交感神経が優位になります。朝風呂で体温を上げることで、この切り替えを促進することができるのです」(前出・村田氏)
同居する家族がいる場合、朝食はなるべく一緒に摂ることを心掛けたい。村田氏が続ける。
「近しい人と話しながら食べることでストレスが緩和され、セロトニンの分泌が促進されます。一人暮らしの場合は、近所の人と井戸端会議をするなどして、会話の機会を作りましょう」
起きてから昼までの間に体調が優れない場合、その原因の多くは、低血圧・低血糖・低セロトニンのいずれかだ。
これを解決してくれる万能食材がある。バナナだ。良質な炭水化物を含んだバナナを食べれば、低血糖が速やかに改善する上に、冒頭で紹介したセロトニンを生成するのに必要な必須アミノ酸のトリプトファンや、ビタミンB6を効率的に摂取することができる。
バナナが苦手な人も、心配する必要はない。トリプトファンは大豆製品にも含まれているため、脳の働きを活性化させる効果があるわかめを具材にした味噌汁を飲むといいだろう。
食後の歯磨きや、身支度をする際にも、脳を活性化させる習慣が隠されている。樺沢氏が語る。「コロナ禍でマスクをしている時間が増えたこともあり、表情筋が衰えてしまっている人が少なくありません。鏡の前で笑顔トレーニングを行うことで顔の筋肉を動かせば、セロトニンの分泌が活発になります。人間関係にも好影響を与えるため、毎日続けましょう」明日の朝からの行動が、今後の寿命を決める。後編記事『レバー、うな重、オリーブオイルもNG「70歳を過ぎたら食べてはいけない」モノ15』では、食生活の観点から気を付けておきたい点を紹介する。「週刊現代」2022年9月24・10月1日号より
食後の歯磨きや、身支度をする際にも、脳を活性化させる習慣が隠されている。樺沢氏が語る。
「コロナ禍でマスクをしている時間が増えたこともあり、表情筋が衰えてしまっている人が少なくありません。鏡の前で笑顔トレーニングを行うことで顔の筋肉を動かせば、セロトニンの分泌が活発になります。人間関係にも好影響を与えるため、毎日続けましょう」
明日の朝からの行動が、今後の寿命を決める。
後編記事『レバー、うな重、オリーブオイルもNG「70歳を過ぎたら食べてはいけない」モノ15』では、食生活の観点から気を付けておきたい点を紹介する。
「週刊現代」2022年9月24・10月1日号より