福岡県篠栗(ささぐり)町で2020年4月に碇翔士郎(いかりしょうじろう)ちゃん(当時5歳)が十分な食事を与えられず餓死した事件を巡り、翔士郎ちゃんの母親の「ママ友」で保護責任者遺棄致死罪などに問われた赤堀恵美子被告(49)に対する裁判員裁判の論告求刑公判が8日、福岡地裁(冨田敦史裁判長)であり、検察側は懲役15年を求刑した。赤堀被告は詐欺と窃盗の罪にも問われているが、弁護側はいずれも無罪を主張している。判決は21日に言い渡される。
【図解】5歳餓死 事件の構図と経緯 公判で検察側の証人として出廷した母親の碇利恵被告(40)=保護責任者遺棄致死罪で有罪判決を受け控訴中=は、赤堀被告のうそを信じて生活費全般を渡し、赤堀被告から食事制限などを指示されたと説明。検察側も碇被告の証言に沿って立証を進め、赤堀被告の刑事責任を追及している。 碇被告の証言によると、「旦那が浮気している」などという赤堀被告のうそを信じた碇被告は離婚。赤堀被告が吹き込んだ、元夫を巡る訴訟があり、暴力団関係者の「ボス」に和解金を支払う必要があるなどという架空の話も信じ込み、生活費全般を赤堀被告に渡していた。 また、赤堀被告は「裁判で勝つために質素な生活をしないといけない」として、碇家にさまざまなルールを課して食事内容も制限。しつけにも介入して翔士郎ちゃんに暴力を振るった。翔士郎ちゃんは次第に衰弱し、碇被告は赤堀被告に相談したが「ボスに迷惑をかけてはいけない」という赤堀被告のうそを信じ、病院に連れて行かなかった。 亡くなる数時間前、翔士郎ちゃんは異常を訴えてうずくまった。赤堀被告が様子を見に来たが、触ると反応があったため「大丈夫」と帰宅。その後、翔士郎ちゃんは餓死したという。 これに対し、赤堀被告は「(碇被告に)指示はしていない」とし、生活費も「受け取っていない」などと碇被告の証言を全面的に否定。碇被告の証言を裏付けるようなLINE(ライン)のやりとりも残されているが、赤堀被告は「碇(被告)に、そう打つよう指示された」と反論した。 また、碇被告が証言した架空の訴訟や食事制限などのルールについて、赤堀被告はそういう話を「していない」と反論。翔士郎ちゃんに対する暴行も否定した。死亡直前に翔士郎ちゃんの様子を見に来た時は「寝ていると思った」といい「碇(被告)には病院に連れて行くよう促したが、しなかった」と主張した。 起訴状によると、赤堀被告は碇被告と共謀し、19年8月ごろから碇被告の子供の食事の量や回数を減らし、同10月ごろからは翔士郎ちゃんに食事を数日間与えないことを複数回継続。翔士郎ちゃんが重度の低栄養状態となったのに十分な食事を与えず、20年4月に自宅で餓死させたとされる。また、生活費など約198万円を碇被告からだまし取るなどしたとしている。 碇被告は6月にあった自らの公判で、今回の赤堀被告の公判とほぼ同じ内容の主張をしていた。福岡地裁判決は碇被告の主張をほぼ採用し、赤堀被告による支配の影響を認定。碇被告について「被害者としての側面もある」として、求刑の懲役10年を大きく下回る懲役5年とした。碇被告側は執行猶予付き判決を求めていたこともあり、控訴している。【平塚雄太】
公判で検察側の証人として出廷した母親の碇利恵被告(40)=保護責任者遺棄致死罪で有罪判決を受け控訴中=は、赤堀被告のうそを信じて生活費全般を渡し、赤堀被告から食事制限などを指示されたと説明。検察側も碇被告の証言に沿って立証を進め、赤堀被告の刑事責任を追及している。
碇被告の証言によると、「旦那が浮気している」などという赤堀被告のうそを信じた碇被告は離婚。赤堀被告が吹き込んだ、元夫を巡る訴訟があり、暴力団関係者の「ボス」に和解金を支払う必要があるなどという架空の話も信じ込み、生活費全般を赤堀被告に渡していた。
また、赤堀被告は「裁判で勝つために質素な生活をしないといけない」として、碇家にさまざまなルールを課して食事内容も制限。しつけにも介入して翔士郎ちゃんに暴力を振るった。翔士郎ちゃんは次第に衰弱し、碇被告は赤堀被告に相談したが「ボスに迷惑をかけてはいけない」という赤堀被告のうそを信じ、病院に連れて行かなかった。
亡くなる数時間前、翔士郎ちゃんは異常を訴えてうずくまった。赤堀被告が様子を見に来たが、触ると反応があったため「大丈夫」と帰宅。その後、翔士郎ちゃんは餓死したという。
これに対し、赤堀被告は「(碇被告に)指示はしていない」とし、生活費も「受け取っていない」などと碇被告の証言を全面的に否定。碇被告の証言を裏付けるようなLINE(ライン)のやりとりも残されているが、赤堀被告は「碇(被告)に、そう打つよう指示された」と反論した。
また、碇被告が証言した架空の訴訟や食事制限などのルールについて、赤堀被告はそういう話を「していない」と反論。翔士郎ちゃんに対する暴行も否定した。死亡直前に翔士郎ちゃんの様子を見に来た時は「寝ていると思った」といい「碇(被告)には病院に連れて行くよう促したが、しなかった」と主張した。
起訴状によると、赤堀被告は碇被告と共謀し、19年8月ごろから碇被告の子供の食事の量や回数を減らし、同10月ごろからは翔士郎ちゃんに食事を数日間与えないことを複数回継続。翔士郎ちゃんが重度の低栄養状態となったのに十分な食事を与えず、20年4月に自宅で餓死させたとされる。また、生活費など約198万円を碇被告からだまし取るなどしたとしている。
碇被告は6月にあった自らの公判で、今回の赤堀被告の公判とほぼ同じ内容の主張をしていた。福岡地裁判決は碇被告の主張をほぼ採用し、赤堀被告による支配の影響を認定。碇被告について「被害者としての側面もある」として、求刑の懲役10年を大きく下回る懲役5年とした。碇被告側は執行猶予付き判決を求めていたこともあり、控訴している。【平塚雄太】