うつ状態なのに体が勝手に動いて働けてしまう。だからこそ、苦しいー心と体が限界を突破しているのに動いてしまうその状態はゾンビにも喩えることができる。そんな人々が増えているという。その実態を追った。
◆外では笑顔を振りまき、家では脱力状態に
「慢性的に気分がふさぎ込んでいるが、死にたいとまでは思わない。病院で処方された精神安定剤や睡眠薬を飲んでも、だるいだけ。何の助けにもなりませんでした」
すべてが面倒くさいと笑顔で語る緒方克彦さん(仮名・40歳・専門職)。とある高度な資格を取得後に都心で起業して3年。経営は順調だが、心中は複雑だ。
「社会から浮くと自分が損するじゃないですか。だからいつも笑顔で愛嬌を振りまいて、すごく疲れます」
◆「やると決めたことができないと、今以上に気持ちが沈んでしまうから」
家にいるときは無気力状態に陥り、ベッドから動けなくなるという。このような状態でありながら、なぜ働くことができるのだろう?
「責任感のほうが強いからかな。やると決めたことができないと、今以上に気持ちが沈んでしまうことがわかり切っているから、予定通りにこなしたいんです。気持ちとは無関係に、機械的に動く感じ。あとは、子供と猫を養わなければならないので……」
◆「できる限り、頭を使わないように気を付けてます」
平日は基本的に動けないため、何もせずに一日を浪費してしまった自責の念から逃れるべく、できるだけ家で過ごす時間を少なくしている。
「どうしても仕事とかしたくなくなっちゃったときは、無理せず遊びに行く。できる限り、頭を使わないように気を付けてます。温泉に浸かってるとか、おいしいものを食べるとか。あとは、スマホの通知はなるべく見ない」
薬も効かないため、自主的なストレス解消法を模索しているが、根本解決には至っていないようだ。
取材・文/週刊SPA!編集部