外国人の国保、保険料を前納できる仕組み導入へ…納付率低く医療費「踏み倒し」へ対策

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外国人による医療費の未払いを防ぐため、厚生労働省は国民健康保険(国保)の保険料を前納できる仕組みを導入する方針を決めた。
窓口業務を担う市区町村の判断で来年4月にも開始できるよう必要な条例の改正例などを通知する。保険料の未納情報を外国人の在留資格審査に反映するためのシステム改修にも乗り出す。
同省が150市区町村を対象に実施した調査によると、2024年末時点で外国人の国保の納付率は63%にとどまっている。日本人を含めた全体の納付率(93%)より低かった。
国保は現在、加入した後に納付書が郵送されるなどして、保険料を払う仕組みだ。ただ、母国に同様の制度がなく、国保への加入の義務が理解できない外国人らが応じないといったケースがあるとみられる。与野党などからは「国保に加入していない外国人が医療費を踏み倒す事例が出ている」などと、前納の導入を求める声が出ていた。
同省は、海外からの転入者を対象とし、市区町村が住民登録する際、1年分といった形で保険料をまとめて前払いしてもらうことを想定している。今年度中にも自治体に通知を出す方針だ。
保険料が全国一律の国民年金では、前納できる仕組みはある。しかし、国保は自治体ごとに保険料が異なるため、前払い後に他の自治体へ転出すれば、前納額の一部を還付しなければならない。自治体にとっては新たな負担が生じるため、国保保険料で前納の仕組みを導入するかどうかはそれぞれの判断に委ねる。
また、外国人の国保の納付状況を把握するためのシステム改修も始める。
現状では、国籍や在留資格が確認できず、大半の自治体で外国人の納付状況を把握できていなかったためだ。26年度中に改修を行ったうえで、27年6月をめどに出入国在留管理庁が在留資格審査に活用できるような仕組みにする。
政府は今後、年金の保険料や医療費の納付情報も同様に共有できるようにして、未納があった外国人については在留資格の更新を認めないといった対策につなげていきたい考えだ。
◆国民健康保険(国保)=公的医療保険の一つで、都道府県・市区町村が運営し、自営業者や無職、非正規労働者らが加入する。外国人でも、在留期間が3か月を超え、勤務先の健康保険組合などに加入していない場合、国保への加入が義務づけられている。2023年度の国保の加入者のうち、外国人は4%(97万人)を占める。

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