生活保護費を引き下げた国の判断を全面的に容認した14日の大阪高裁判決。裁判所の前には「不当判決」「司法の職責放棄」と書かれた紙が掲げられ、受給者や弁護団らからは失望や怒りの声が相次いだ。
【「不当判決」と憤る原告側】 「ここまでひどい判決とは思わなかった。裁判長は私たちの苦しみを全く理解していない」。原告の一人として名を連ねた女性(63)は判決後、毎日新聞の取材にこう嘆いた。 女性は18年前、夫の暴力に耐えかね、中学生と高校生の子ども2人とともに家を飛び出した。スーパーで働いていたが家計は苦しく、生活保護を受けることに。心臓に重い疾患が見つかったのはそんな時だった。
治療入院を強いられ、退院後も体調不良で仕事を続けられなくなった。生活保護と児童手当が「命綱」で何とかやりくりしていたのに、当時暮らしていたアパートの大家から「楽をしている」と心ない言葉を掛けられたことは今も忘れられない。 居住自治体から支給されていた毎月10万円ほどの保護費の減額が始まったのは2013年8月。月額で千数百円が引き下げられた。下着や靴下が破れても繕って使い続け、食料は消費期限が近い「見切り品」を中心に買い求める生活。姉が亡くなった時、「香典を渡せない」と親族に打ち明けたこともある。 原材料価格の高騰で生活必需品や光熱費の値上がりが続く今、生活費を切り詰める生活は限界を迎えつつある。女性は「命を削って生きているが、これ以上何を節約すればいいのか」と訴えた。弁護団副団長の小久保哲郎弁護士は大阪市内で開かれた記者会見で、「国の主張をそのまま認める偏った判決で、司法への期待が踏みにじられた」と批判した。 九州大法学研究院の丸谷浩介教授(社会保障法)は「基準額は専門家の知見や統計などに基づいて改定されるべきだが、判決はリーマン・ショックの事情だけで原告の主張を一蹴している」と指摘。基準額を導く国独自の算出方法が専門家の部会に諮られなかった経緯を挙げ、「専門家よりも国の知見を重視する司法判断も、近年の行政訴訟の流れに反しており問題だ」と語った。【安元久美子、山本康介】
「ここまでひどい判決とは思わなかった。裁判長は私たちの苦しみを全く理解していない」。原告の一人として名を連ねた女性(63)は判決後、毎日新聞の取材にこう嘆いた。
女性は18年前、夫の暴力に耐えかね、中学生と高校生の子ども2人とともに家を飛び出した。スーパーで働いていたが家計は苦しく、生活保護を受けることに。心臓に重い疾患が見つかったのはそんな時だった。
治療入院を強いられ、退院後も体調不良で仕事を続けられなくなった。生活保護と児童手当が「命綱」で何とかやりくりしていたのに、当時暮らしていたアパートの大家から「楽をしている」と心ない言葉を掛けられたことは今も忘れられない。
居住自治体から支給されていた毎月10万円ほどの保護費の減額が始まったのは2013年8月。月額で千数百円が引き下げられた。下着や靴下が破れても繕って使い続け、食料は消費期限が近い「見切り品」を中心に買い求める生活。姉が亡くなった時、「香典を渡せない」と親族に打ち明けたこともある。
原材料価格の高騰で生活必需品や光熱費の値上がりが続く今、生活費を切り詰める生活は限界を迎えつつある。女性は「命を削って生きているが、これ以上何を節約すればいいのか」と訴えた。弁護団副団長の小久保哲郎弁護士は大阪市内で開かれた記者会見で、「国の主張をそのまま認める偏った判決で、司法への期待が踏みにじられた」と批判した。
九州大法学研究院の丸谷浩介教授(社会保障法)は「基準額は専門家の知見や統計などに基づいて改定されるべきだが、判決はリーマン・ショックの事情だけで原告の主張を一蹴している」と指摘。基準額を導く国独自の算出方法が専門家の部会に諮られなかった経緯を挙げ、「専門家よりも国の知見を重視する司法判断も、近年の行政訴訟の流れに反しており問題だ」と語った。【安元久美子、山本康介】