ヒグマによる人的被害が多発している。
【写真】野生のクマにエサをやらないで!啓発ポスター
クマによる人身事故を防ぐには、人とクマが遭遇しないことが最も重要だ。
だが先日、「公益財団法人 知床財団」が提供するヒグマ情報のX(旧Twitter)アカウント、Bear Safety Shiretoko(@bear_shiretoko)が、ヒグマによる人身事故を誘発する事案が発生したと投稿した。
「7月29日、知床国立公園内にてヒグマへの餌付けが疑われる事案が発生しました。目撃者からの通報によると、車内からヒグマにスナック菓子を与えていたようです。人から食べ物を与えられたヒグマは行動がエスカレートしていくと人に危害を加えるようになります」
<Bear Safety ShiretokoのXの投稿より>
「公益財団法人 知床財団」に取材を行ったところ、ヒグマにエサを与える行為は、クマによる人身事故を引き起こす大きな要因になるという。
「知床に限らず、野生動物が人間の食べ物を食べた場合、また、ポイ捨てされたゴミなどを食べてしまった場合、野生動物の命や健康に関わるだけでなく、食べ物を求めて再び同じ場所に現れてしまい、人的事故が発生してしまうなど、大きな問題が生じてしまいます。
そのため、人の食べ物やゴミを食べたクマが確認された場合は、その時点で基本的に駆除の対象となります。このような状況を生まないためにも、絶対にエサを与えないことはもちろんですが、ゴミの放置やポイ捨ても絶対にしないでください」(公益財団法人 知床財団)
なぜ人間の食べ物やゴミを食べたヒグマは、やがて人を襲うようになるのか?
「ヒグマは賢い動物です。一度でも人間の食べ物を口にしてしまうと、ヒグマはその味を覚え、観光客の車に近づくようになったり、人の生活圏に侵入してしまったりと、行動を急速に変えていきます。
また、ヒグマの行動を変えてしまう要因として、『人の存在に慣れてしまうこと』も挙げられます。知床では写真を撮りたいがために過度なまでにヒグマに接近するカメラマンや観光客が後を絶ちません」
「人身事故がひとたび発生すれば、また、経済(農業、漁業、観光)被害が大きくなれば、地域の“許容”はとたんに失われてしまいます。そうなった場合、ヒグマは積極的に駆除され、ヒグマが絶滅してしまう可能性も出てきます。ヒグマとの軋轢の大半は人間が気をつけることで回避可能です」
<「公益財団法人 知床財団」公式ホームページより抜粋>
一度人間の食べ物を口にしたヒグマが「危険な個体」となっていくプロセスについては、「公益財団法人 知床財団」公式ホームページに掲載されている、「ソーセージ」と名付けられたメスのヒグマの実話【「ソーセージの悲しい最期」のお話】に詳しく解説されている。
「公益財団法人 知床財団」では、ヒグマの保護と管理を行う「ヒグマ対策」という活動を行っている。
人身事故を起こしたヒグマの駆除については、「当然ですが、感情論や思いつきでは判断しておりません」と回答。
「北海道知床では、『知床半島ヒグマ管理計画』に基づき、ヒグマの保護や駆除を行なっています。やむを得ず駆除に至る場合、人間の食べ物やゴミなどを食べてしまった、人を襲ったなど、段階づけて判断しています。当然ですが、感情論や思いつきでは駆除しておりません。
『ヒグマ管理計画』とは、人とヒグマの共存関係の構築を目指し、ヒグマ本来の生態および個体群を将来にわたり持続的に維持することを掲げた計画指針です。ぜひ『ヒグマ管理計画』の仕組みと、このような計画があることを広く知っていただけたらと思います。北海道全域を対象とした『北海道ヒグマ管理計画』もありますので、ぜひご覧になってみてください」(公益財団法人 知床財団)
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)