11月6日、公明党の西田実仁幹事長は高市早苗首相が以前に「不記載議員を内閣に入れない」旨の発言をしていたことを明らかにした。ついこの間まで政権にいた側による「インサイダー情報」の暴露という趣である。
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この政権批判には「筋が悪い」との指摘もつきまとうものの、今後も同様の暴露がありそうだとの見立てもある。例えば靖国参拝もその一つなのだという。
西田氏はこの件を参院の代表質問で取り上げた。高市氏が10月に自民党総裁に就任直後、公明党の斉藤鉄夫代表と会談した際、「政治資金収支報告書への不記載議員を内閣には入れない」旨の発言があったのだという。西田氏はこの会談に同席していた。高市内閣で不記載議員の閣僚への起用はなかったが、副大臣と政務官に計7人、官房副長官に1人起用されている。
「そもそも連立離脱前の話ですし、指摘するにしても筋が悪い印象を受けました。野党に転じたばかりで振舞い方が板についていないと皮肉る声もあがっています」
と、政治部デスク。
「この流れで行くと、後出しじゃんけんという言い方が適切かわかりませんが、何かをきっかけに“あの時はこうだった”という暴露が続くのかもしれないですね」(同)
これも連立離脱前の話だが、公明の斉藤氏は高市氏に対し、連立を組むうえでの懸念点として、企業・団体献金の規制強化、靖国参拝をめぐる歴史認識、外国人との共生、野党との連立拡大を伝えた。これに対して高市氏は企業・団体献金について譲れないと回答したことが公明の連立離脱の理由とされている。
「高市氏はこの際、靖国参拝については“行かない”との意思を伝えています」(同)
例年、春秋の例大祭の期間中は靖国神社を参拝していたが、この秋の参拝は見送った。首相に選出された場合、その直後から各国首脳との会談が予定されており、特に反発が予想される中国・韓国への影響を重く見たとされる。
「去年、決選投票で敗れた総裁選で高市氏は首相就任時に靖国を参拝する意向を示していましたが、今年の総裁選ではそこまで踏み込むことはなく“適時適切に判断する”と述べるに留めていました。その言葉もありましたし、始動したばかりの政権で火種となりかねないリスクを負うことはないとの判断を下したのでしょう」(同)
報道各社による調査では高市内閣の支持率は軒並み高いレベルにある。今のところ靖国参拝を回避したことはマイナスには働いていないと言える。高市氏の靖国参拝を願っていた支持者たちも、その”現実的”な選択に理解を示しているようだ。もともと願っていない層や、して欲しくない人たちに対しては当然、プラスに働いている。
「ただ、高市氏としては“今後ずっと靖国を参拝しないとは言っていない”というスタンスです。“どこかのタイミングで”との思いを秘めているのは間違いありません」(同)
祖国のために心ならずも戦地に赴き亡くなった方々に心からの哀悼を捧げ、平和に感謝すること自体、何ら批判や非難、干渉を受けるいわれはない。そもそも内政の問題であり、また日本には信教の自由もある。が、一方で正論を通して突っ走った場合のマイナスを考えることも為政者として当然だろう。
「高市氏を総裁選で支持するなどした保守系の政治団体やそれに類する組織は依然、首相の靖国参拝を希望していますし、高市氏もそれを自覚しています」(同)
仮に参拝した場合、公明は……。
「連立離脱前のことを持ち出して“あの時はこうだった”という類の話を持ち出すくらいのことはあるかもしれませんね。もっとも、いつ靖国参拝するにせよ、参拝するのは高市政権の体力が十分あるタイミングですから、公明のそういった指摘も政権に打撃を与えるほどにはならないように思いますね」(同)
仮に公明との話し合いでの発言と現在の振る舞いとの矛盾を暴露、攻撃されたとしても高市氏側が「あの時は公明党に気を使って本意ではないことを言った。今の私の考えはこちらだ」といった説明をしてしまえば、大抵のことはカタがついてしまう。よほどの暴露がない限り、公明党が「闘う野党」として機能するのは難しいというのが現実である。
デイリー新潮編集部