〈絶海の孤島・青ヶ島在住の40歳女性が語る、「日本一人口の少ない村」の“独特すぎる働き方”「週5で働きながら、天気の良い日は朝から漁に…」〉から続く
日本一人口の少ない村、青ヶ島村在住のYouTuber・佐々木加絵さんが“島暮らし”を発信する連載企画。
【特別グラビア】美しすぎる…絶海の孤島・青ヶ島在住の40歳美女を写真で見る(全50枚超)
東京都心から約360km離れた人口159人(2024年12月1日時点)の小さな島・青ヶ島。交通手段が限られていて、簡単に上陸できないことから、別名「絶海の孤島」と呼ばれている。
そんな青ヶ島の日常をYouTubeで発信しているのが、佐々木加絵さん(40)。「私にとっては普通なのですが、島外の人からすれば、青ヶ島の日常は非日常なのかもしれない」と話す加絵さんは、いったいどんな“島暮らし”を送っているのだろうか。今回は「年末年始」をテーマに、青ヶ島の日常を解き明かす。

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寒い日が続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。クリスマスにお正月、帰省など、年末年始はイベントが多いですよね。それは青ヶ島でも同じです。
本土のクリスマスでは、イルミネーションを見に行ったり、カップルでホテルディナーを楽しんだりするのが定番ですよね。でも、青ヶ島にはイルミネーションもありませんし、ディナーを楽しむようなホテルもレストランもありません。
だから私は、友達の家に集まってお酒を飲みながらクリスマスを過ごすことが多いです。八丈島から取り寄せたケーキを囲んで、いつもよりちょっと豪華なおつまみを用意してクリスマス会をしています。
青ヶ島生まれ・青ヶ島育ちの佐々木加絵さん(本人提供)
クリスマスプレゼントは、私が子どもの頃はネット通販がなかったので、本土に住んでいる親戚に欲しいものを頼んで、送ってもらっていました。ただ、子どもから親、親から親戚、親戚からおもちゃ屋さんに……と伝言ゲームで欲しいものが伝わっていくから、希望と違うものが届くこともありましたね。
最近では、Amazonでプレゼントを注文することが多くなりました。Amazonなら島でも送料無料で届くので、とても助かっています。でも、冬場は島に荷物を届ける連絡船が欠航することが多いので、早めの注文は欠かせません。
クリスマスの時期には、島で唯一の小中学校でクリスマスライブも行われます。バンド部に所属している学生の演奏のほか、趣味でバンドをしている大人たち、社会人合唱サークル、青ヶ島の郷土芸能「還住太鼓」クラブのメンバーなど、老若男女問わずたくさんの島の人達が参加し、日頃の練習の成果を披露します。
コロナ禍になって以降、クリスマスライブは一時的に中止になっていたのですが、2023年から復活。毎年恒例の行事として定着していて、島の人たちの楽しみのひとつになっています。

クリスマスが終わったら、いよいよ年末。青ヶ島でも、もちろん忘年会は行います。私は友達同士でやったり、島の青年会が主宰しているバレーボールチームに所属しているので、そのメンバーと集まったりしています。島には小さな居酒屋が1軒しかないので、大人数での忘年会は民宿の食堂を借りて開催することも。
忘年会には、島寿司などの郷土料理が並びます。あとは、飼っている鶏を絞めて、年末年始に食べる習慣もあります。若鶏ではなく卵を産まなくなった親鶏を使うので肉は固いのですが、旨味があってとても美味しいんですよ。
ちなみに、鶏を絞めるのは誰でもOK。私は苦手なのでやったことはないのですが、移住者で挑戦した人が何人もいますよ。

そしていよいよ年末を迎えると、青ヶ島から人が少なくなります。12月28日頃から3が日頃までは、ほとんどの民宿がお休みに入るので、観光客がいなくなります。
また、村役場の職員や学校の先生は島外から赴任している人が多いので、この時期は本土へ帰省する人も多いんです。人口約160人の島から20~30人がいなくなるので、年末年始はいつもより静かな気がします。
年が明けたら、本土のように初日の出や初詣に行きます。
初日の出スポットは、「尾山展望公園」が定番。青ヶ島で一番高いところは、外輪山の大凸部(おおとんぶ)と呼ばれる標高423mの場所なのですが、尾山展望公園はそことほぼ同じ高さ。公園から見下ろす海から、少しずつ太陽が姿を現す光景は、まさに絶景です。
初詣の定番は、集落の近くにある「大里神社」か、二重カルデラの内側・丸山の山頂にある「御富士様」です。
青ヶ島には、神主さんやお坊さんはいません。だから、年末年始に神社とお寺で特別なイベントが開かれることもないんです。本土のように年明け前から家を出て、年明けと同時にお参りすることもなく、それぞれ好きなタイミングでお参りしています。

年末年始に、島のお酒「あおちゅう」作りをするのも青ヶ島ならでは。青ヶ島には現在、10人の杜氏がいるのですが、「あおちゅう」作りに欠かせない芋を掘ったり削ったりする作業は、杜氏だけではできません。
そのため、10月頃から年明けの蒸留にかけて、島の人たちでお手伝いをするんです。年が明けて無事完成したら、手伝ったお礼に、杜氏さんたちからできたての「あおちゅう」をプレゼントしてもらえるんですよ。
ちなみに私は普段、YouTuberとして活動したり、配達や実家の民宿の手伝い、観光ガイドをしているのですが、連絡船は12月28日でお休みに入ったので配達の仕事はなく、観光客も来ないから観光ガイドや民宿の手伝いもありません。

だから、年末年始は昼から家族や友達とお酒を飲んで、まったり過ごしていることが多いです。
あとは、餅つきをしている家庭にお邪魔することもあります。青ヶ島では、各家庭で餅つきをするのですが、餅つきも人手がないと難しい。なので、同居家族が少ない人や単身で青ヶ島にいる人たちは、同居人が多い家庭にお邪魔して一緒に行うことが多いんです。
船は年明けの1月4日から運航を再開しますが、冬の青ヶ島は風が強くて“しけ”も激しいので、予定通り運航するかはわかりません。
年末年始の休みと合わせて運休で長い間船が来ない可能性があるので、年末を迎える前に必要なものを買いだめする人は多いですね。ちなみに私は、年末年始を楽しく過ごすのに欠かせないお酒を買いだめしました。
2024年を振り返ってみると、青ヶ島最大のお祭り「牛祭り」が5年ぶりに開催されるなど、コロナ禍で中止になったイベントが次々に復活し、ようやく日常を取り戻した年になったように思います。
ただ、行事の復活で見えてきた課題もあります。青ヶ島の平均年齢は約40歳と全国的には若いものの、人口が少ないため常に人手が足りず、イベントの運営も少ない人数で行っています。毎回同じ人たちがイベント運営をしていることもあり、1人1人の負担が大きくなっているのが現状です。

この課題を解決するためには、やっぱり島の人口を増やさないといけません。少し話はそれるのですが、今私が運営するコワーキングスペース「NYAYA」に、一時的に住んでいる移住者の方がいるんです。
もともとは寮に住みながら製塩所で働いていたのですが、任期が切れて、仕事も住むところもなくなってしまって。そこで、次の仕事や家が決まるまでNYAYAに寝泊まりしながら、民宿の手伝いをしてくれています。
このような状況を改善するためにも、移住者の方にも仕事や住居の選択肢を少しずつ増やしていきたい。青ヶ島を好きになってくれて、この島に住み続けたいと思ってくれている人たちが、安心して暮らせる環境を整えたい。
すぐには難しいかもしれません。それでも、私にできることは今年もやっていこうと思います。
取材・文=仲奈々写真提供=佐々木加絵
(仲 奈々,佐々木 加絵)