東京都渋谷区は、’26年4月からコンビニやテイクアウト可能な飲食店、自動販売機の設置事業者に対して、ゴミ箱の設置を義務付ける。対象となるのは、区の調査で特にポイ捨てが多かった渋谷、原宿、恵比寿の3駅周辺だ。事業者へのゴミ箱設置の義務化は、都内初の試みとなっており、これらを怠った場合は5万円以下の過料を科す。また、ポイ捨てをした者へも新たに2000円の過料の罰則となった。
過料の徴収が始まるのは’26年6月以降を予定しているという。しかし、ポイ捨てゴミの対策として店に義務を負わせることは「民間に負担を押し付けている」との批判がある。ゴミ箱を設置すれば、そこに家庭内のゴミが持ち込まれることもあるだろう。渋谷区でゴミ問題について調査すると、実態が浮かび上がってきた。
区が管理するゴミ箱は増やさない一方で、ゴミ箱設置の義務化に踏み切った理由は、渋谷区には区外からの来訪者が多く、区民以外が残したゴミを、区の税金を利用して処理することは不適切だという考えからだ。渋谷区は都内屈指の繁華街であり、インバウンド客や通勤、通学のため区外から連日多くの人が訪れている。筆者が取材で訪れた日も多くの人で賑わっていた。
渋谷駅周辺のコンビニで、ゴミ箱設置の義務化について聞くと「仕事が増える」「ゴミ箱を設置するとゴミ捨てだけに来る客が増える」との声があった。
「コンビニの悩みとしては、ゴミの持ち込みがかなり多いことです。人が多く来る時間帯だと、1時間で店内に設置しているゴミ箱がいっぱいになることもあります。溢れたゴミを片付けるのは店員ですし、汚されたあとに掃除をするのも店員です。今回の義務化で他店からの持ち込みが減るといいのですが、ゴミを捨てるだけのために来る人もいます。とてもそうなるとは思えません」(コンビニ店員)
別のコンビニでも同じような意見があった。コンビニにゴミを持ち込む人は多いようだ。その理由は、街中にゴミ箱が少ないために、コンビニが利用されるのだという。
「渋谷区ではペットボトルですら捨てることが難しい」と言うのは、渋谷区周辺で働くサラリーマンだ。「とくに自販機横のゴミ箱は機能していません」と話す。
「ペットボトルのゴミを捨てる場所が全くありません。そもそも自販機の横にあるリサイクルボックスの数も少ないですし、あったとしてもプラスチックカップのゴミが挟まったりしていて捨てられない。ゴミを捨てる場所がなさ過ぎて、山のように溢れているゴミ箱がたくさんあります。結果、どこにでもあるコンビニに捨てに行くことになります。人の数に対してゴミ捨て場の数は圧倒的に足りてないと思っています」
さらに最近のコンビニでは別の問題も起きているようだ。
「外国人の路上飲酒です。コンビニで酒を買って歩きながら飲んでいます。酒がなくなると、またコンビニに入って酒を購入。コンビニがあればどこでも宴会状態です。
いちおうゴミはゴミ箱に捨てているので、ポイ捨てされるよりはマシですが、このような外国人が毎日訪れているため、彼らのゴミを片付けるだけでもかなりの苦労です。もちろんマナーのいい外国人だけではないので、外で飲食をしてそのままポイ捨てをする人もたくさんいます」(別のコンビニ店員)
渋谷には外国人が多く訪れる。コンビニ店員らの話によると、ただでさえ、コンビニに設置されているゴミ箱のキャパでは足りないのに、路上飲酒が加わることでさらにゴミの量が増えてしまうようだ。ゴミ箱を増やそうにも敷地面積が限られているため、多くのゴミ箱を設置することはできない。
今回のゴミ箱設置義務などについて渋谷区の環境整備課に話を聞くと次のような回答だった。
「渋谷区では、10年程前から『自分のゴミは自分で持ち帰る』といったことを啓発していました。去年あたりから来街者が増加。それに伴って渋谷区ではゴミも増加したため、それに伴った改正になります」
事業者への責任の押し付けとの意見があることについては、「問題ない」と考えているようだ。
「例えば飲料販売を行っている事業者であれば、店舗から発生するゴミを回収するためのゴミ箱を、利用者が容易にゴミを捨てることができる場所に設置し、それらを適正に管理しなければならないと条例で定めています。
つまり店外ではなく、店内でも問題ありません。店外への設置になると家庭ゴミを捨てられてしまうといった話もありますが、店内であれば、家庭ゴミを店の中に入ってまで捨てるといったことをする人はいないと思いますので、問題ないと考えています」(渋谷区環境整備課)
ポイ捨てが罰金から過料に変わったことについては、区の職員でも徴収できるようにするためだという。
「ポイ捨ての罰則は、罰金だったものを過料に変更しています。罰金になると、渋谷区以外の職員が関係してくるため、我々としても動きにくい。しかし、過料金であれば、渋谷区職員でも徴収が行えるため、より実効性が高いと考え条例を改正しました」(同前)
また、「ゴミ箱の設置義務については、持続可能な運用をするために、課題を洗い出して対応を検討したいと考えています」とのことだった。
空き缶やペットボトルといったかさばるゴミは既に許容量を超えて、コンビニなどのゴミ箱を設置している事業者の負担になっている。ゴミ箱設置の義務化で、現在負担を強いられている事業者のそれが軽くなればいいのだが、「民間に負担を押し付けているのでは」と思ってしまう。
そして、渋谷の街の声を聞く限りでは、ポイ捨てに対して根本的に効果があるのかも疑問が残ってしまうのだ。
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取材・文・写真:白紙緑