【貞方 大輔】6000万円を遺して死んだ妻…DV夫への恨みを晴らす「遺言を使った」壮絶すぎる復讐

神奈川県在住の久保優子さん(仮名、以下同)は、数年にわたる闘病の末、今年5月に78歳で亡くなりました。相続人は、同居していた夫の健二さん(79歳)と県外在住の長男・隆さん(50歳)と長女・宏美さん(48歳)の3名です。最愛の母親を亡くした悲しみの中、長女の宏美さんからご相談、ご依頼を受けました。〈亡くなった優子さんの遺産〉・預貯金 1500万円・有価証券(株・投資信託) 1000万円・自宅の土地(建物は夫名義) 2000万円・借地(戸建) 1500万円

以上、評価額6000万円の遺産〔PHOTO〕iStock“夫には一切財産を渡さない”思いを込めた遺言宏美さんが言います。「母と父は同居していたとはいうものの、仲は最悪で、特に昔から父の母に対するDVがひどく、母は何度も離婚を切り出しました。ですが、ことごとく父に拒否され、そのたびに母への仕打ちはひどくなる一方でした」優子さんは、5年ほど前に脳梗塞を患い、無事に退院できたものの、しばらくは自宅で寝たきりの生活を送っていました。しかし、夫は食事や身の回りの世話などは一切せず、毎晩、妻を放置して飲みに行く始末だったそうです。 そんな優子さんでしたが、幸いにも意思能力の低下はそれほど見られませんでした。認知症になりたくない一心で、毎日こまめに日記をつけていましたし、少し手が不自由になったため、リハビリも兼ねてお孫さんの名前を何度も何度もノートに書いていたことが幸いしたようです。何冊にも及ぶ日記やノートを拝見したときはただただ感服するばかりでした。「ここを見てください」と優子さんの日記を持った宏美さんが、付箋が貼られた箇所を指さしながら言います。“早く離婚して自由になりたい”そんな内容のことがたびたび記されていました。そして、3年前のある日のページには、“遺言 妹に託す”との記載がありました。 宏美さんは続けて言います。「母は脳梗塞になった後も比較的頭はしっかりしていましたし、このように字を書く練習も必死にやっていました。そして、3年前に遺言を作り、その遺言を妹、私から見れば叔母に預けたのです。そのことを知っているのは私と叔母だけ。父と兄は今も知りません」優子さんが亡くなり、遺言を預かっていた叔母が宏美さんに、遺言の存在をそっと打ち明けてくれたそうです。「まだ遺言の中身は見ていません。私と叔母の想像ですが、遺言は、父には一切財産を相続させない内容になっていると思っています。私は何としても母の遺言、思いを実現させたいんです。来週、全員で集まって家族会議をする予定なんです。そして、その場に叔母も呼んで、遺言のことを話してもらおうと思っています。父と兄は驚くでしょうが…」家族会議にあたり、念頭に置いておいたほうがいいことを教えてくださいという宏美さんのご要望があったため、知人の弁護士を紹介したところ、その弁護士からは、(1)遺言の「検認」と、(2)遺留分の2点について以下のようなアドバイスがありました。2つのアドバイス(1)遺言は勝手に開封してはいけない。家庭裁判所で検認の手続きを亡くなった方が自筆で書いた「自筆証書遺言」の場合、その遺言を発見した相続人や保管していた人は、開封することなく家庭裁判所に「検認」の申立てをしなければなりません。検認とは、法務局以外で保管していた自筆証書遺言の場合に、相続人に対して遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の内容を明確にして、偽造・変造等を防止するための手続きです(※)。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。(※)法務局による保管制度が2020年7月より始まりました。今回のケースでは、遺言を預かっていた叔母が、家庭裁判所に検認の申立てを行いました。遺言を見つけたらすぐに開封してしまいたくなる気持ちは分かりますが、開封してはいけません。知らなかったとはいえ、開封してしまうと過料が科せられることもありますし、他の相続人からあらぬ疑いをかけられることにもなりかねません。「勝手に開けて、自分に都合が良いように改ざんした!」などと言われかねないのです。法務局に預けた自筆証書遺言は、相続発生後、検認を受ける必要がありません。保管申請の際に、本人の遺言であることを法務局が担保しているからです。〔PHOTO〕iStock (2)特定の相続人が最低限取得することができる取り分“遺留分”「遺留分」は、配偶者、子、直系尊属(親、祖父母)に認められた、最低限取得することができる遺産の取り分です。兄弟姉妹に遺留分はありません。遺言でさえも、この遺留分という権利を奪うことはできません。遺留分を侵害されていることを主張、請求された場合、遺産を相続する相続人は原則、現金で精算(支払い)しなければなりません。今回のケースでいえば、夫・健二さんの遺留分は4分の1(=法定相続分〔法律で定められた基本的な相続額〕である2分の1のさらに2分の1)ですので、6000万円の4分の1である1500万円です。いくら遺言で、すべての財産を長男、長女に渡すとしていても、夫が遺留分を主張し、長男と長女に対して遺留分を請求(遺留分侵害額請求といいます)した場合、長男と長女は1500万円を父親に現金で支払わなくてはなりません。結果として、優子さんの望みは叶わないことになってしまいます。先述の夫婦関係を鑑みると、間違いなく夫は遺留分を請求してくるでしょうから、長男と長女は父親に対して遺留分たる1500万円を支払う必要があります。 案の定、優子さんの葬式が終わる否や、健二さんは優子さんの遺産を調べ始めました。隆さん曰く、優子さんの死後、健二さんは血眼になって、家中で何かを探し回っている様子だったとのことです。「“遺言があったらマズイ”と思って、遺言を探していたんだろうと思います」と宏美さん。遺言は叔母に渡していたので、家にはもちろんありませんでした。一通り探し回って遺言がなさそうだと安心した夫は、優子さんの財産を洗いざらい調べて、取りまとめました。そして、「遺産分割協議」(故人の財産を誰がどのように相続するかの協議)の準備を間髪入れずに始めました。そして、その後、家族は大きなトラブルに見舞われることになります。その経緯は【後編】「「6000万の遺産、9割オレがもらう」DV男のヤバい言い分に、40代女性が仕掛けた壮絶逆襲」でお伝えしましょう。
神奈川県在住の久保優子さん(仮名、以下同)は、数年にわたる闘病の末、今年5月に78歳で亡くなりました。
相続人は、同居していた夫の健二さん(79歳)と県外在住の長男・隆さん(50歳)と長女・宏美さん(48歳)の3名です。
最愛の母親を亡くした悲しみの中、長女の宏美さんからご相談、ご依頼を受けました。
〈亡くなった優子さんの遺産〉・預貯金 1500万円・有価証券(株・投資信託) 1000万円・自宅の土地(建物は夫名義) 2000万円・借地(戸建) 1500万円
〔PHOTO〕iStock
宏美さんが言います。
「母と父は同居していたとはいうものの、仲は最悪で、特に昔から父の母に対するDVがひどく、母は何度も離婚を切り出しました。ですが、ことごとく父に拒否され、そのたびに母への仕打ちはひどくなる一方でした」
優子さんは、5年ほど前に脳梗塞を患い、無事に退院できたものの、しばらくは自宅で寝たきりの生活を送っていました。しかし、夫は食事や身の回りの世話などは一切せず、毎晩、妻を放置して飲みに行く始末だったそうです。
そんな優子さんでしたが、幸いにも意思能力の低下はそれほど見られませんでした。認知症になりたくない一心で、毎日こまめに日記をつけていましたし、少し手が不自由になったため、リハビリも兼ねてお孫さんの名前を何度も何度もノートに書いていたことが幸いしたようです。何冊にも及ぶ日記やノートを拝見したときはただただ感服するばかりでした。「ここを見てください」と優子さんの日記を持った宏美さんが、付箋が貼られた箇所を指さしながら言います。“早く離婚して自由になりたい”そんな内容のことがたびたび記されていました。そして、3年前のある日のページには、“遺言 妹に託す”との記載がありました。 宏美さんは続けて言います。「母は脳梗塞になった後も比較的頭はしっかりしていましたし、このように字を書く練習も必死にやっていました。そして、3年前に遺言を作り、その遺言を妹、私から見れば叔母に預けたのです。そのことを知っているのは私と叔母だけ。父と兄は今も知りません」優子さんが亡くなり、遺言を預かっていた叔母が宏美さんに、遺言の存在をそっと打ち明けてくれたそうです。「まだ遺言の中身は見ていません。私と叔母の想像ですが、遺言は、父には一切財産を相続させない内容になっていると思っています。私は何としても母の遺言、思いを実現させたいんです。来週、全員で集まって家族会議をする予定なんです。そして、その場に叔母も呼んで、遺言のことを話してもらおうと思っています。父と兄は驚くでしょうが…」家族会議にあたり、念頭に置いておいたほうがいいことを教えてくださいという宏美さんのご要望があったため、知人の弁護士を紹介したところ、その弁護士からは、(1)遺言の「検認」と、(2)遺留分の2点について以下のようなアドバイスがありました。2つのアドバイス(1)遺言は勝手に開封してはいけない。家庭裁判所で検認の手続きを亡くなった方が自筆で書いた「自筆証書遺言」の場合、その遺言を発見した相続人や保管していた人は、開封することなく家庭裁判所に「検認」の申立てをしなければなりません。検認とは、法務局以外で保管していた自筆証書遺言の場合に、相続人に対して遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の内容を明確にして、偽造・変造等を防止するための手続きです(※)。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。(※)法務局による保管制度が2020年7月より始まりました。今回のケースでは、遺言を預かっていた叔母が、家庭裁判所に検認の申立てを行いました。遺言を見つけたらすぐに開封してしまいたくなる気持ちは分かりますが、開封してはいけません。知らなかったとはいえ、開封してしまうと過料が科せられることもありますし、他の相続人からあらぬ疑いをかけられることにもなりかねません。「勝手に開けて、自分に都合が良いように改ざんした!」などと言われかねないのです。法務局に預けた自筆証書遺言は、相続発生後、検認を受ける必要がありません。保管申請の際に、本人の遺言であることを法務局が担保しているからです。〔PHOTO〕iStock (2)特定の相続人が最低限取得することができる取り分“遺留分”「遺留分」は、配偶者、子、直系尊属(親、祖父母)に認められた、最低限取得することができる遺産の取り分です。兄弟姉妹に遺留分はありません。遺言でさえも、この遺留分という権利を奪うことはできません。遺留分を侵害されていることを主張、請求された場合、遺産を相続する相続人は原則、現金で精算(支払い)しなければなりません。今回のケースでいえば、夫・健二さんの遺留分は4分の1(=法定相続分〔法律で定められた基本的な相続額〕である2分の1のさらに2分の1)ですので、6000万円の4分の1である1500万円です。いくら遺言で、すべての財産を長男、長女に渡すとしていても、夫が遺留分を主張し、長男と長女に対して遺留分を請求(遺留分侵害額請求といいます)した場合、長男と長女は1500万円を父親に現金で支払わなくてはなりません。結果として、優子さんの望みは叶わないことになってしまいます。先述の夫婦関係を鑑みると、間違いなく夫は遺留分を請求してくるでしょうから、長男と長女は父親に対して遺留分たる1500万円を支払う必要があります。 案の定、優子さんの葬式が終わる否や、健二さんは優子さんの遺産を調べ始めました。隆さん曰く、優子さんの死後、健二さんは血眼になって、家中で何かを探し回っている様子だったとのことです。「“遺言があったらマズイ”と思って、遺言を探していたんだろうと思います」と宏美さん。遺言は叔母に渡していたので、家にはもちろんありませんでした。一通り探し回って遺言がなさそうだと安心した夫は、優子さんの財産を洗いざらい調べて、取りまとめました。そして、「遺産分割協議」(故人の財産を誰がどのように相続するかの協議)の準備を間髪入れずに始めました。そして、その後、家族は大きなトラブルに見舞われることになります。その経緯は【後編】「「6000万の遺産、9割オレがもらう」DV男のヤバい言い分に、40代女性が仕掛けた壮絶逆襲」でお伝えしましょう。
そんな優子さんでしたが、幸いにも意思能力の低下はそれほど見られませんでした。認知症になりたくない一心で、毎日こまめに日記をつけていましたし、少し手が不自由になったため、リハビリも兼ねてお孫さんの名前を何度も何度もノートに書いていたことが幸いしたようです。何冊にも及ぶ日記やノートを拝見したときはただただ感服するばかりでした。
「ここを見てください」と優子さんの日記を持った宏美さんが、付箋が貼られた箇所を指さしながら言います。
“早く離婚して自由になりたい”
そんな内容のことがたびたび記されていました。
そして、3年前のある日のページには、“遺言 妹に託す”との記載がありました。
宏美さんは続けて言います。「母は脳梗塞になった後も比較的頭はしっかりしていましたし、このように字を書く練習も必死にやっていました。そして、3年前に遺言を作り、その遺言を妹、私から見れば叔母に預けたのです。そのことを知っているのは私と叔母だけ。父と兄は今も知りません」優子さんが亡くなり、遺言を預かっていた叔母が宏美さんに、遺言の存在をそっと打ち明けてくれたそうです。「まだ遺言の中身は見ていません。私と叔母の想像ですが、遺言は、父には一切財産を相続させない内容になっていると思っています。私は何としても母の遺言、思いを実現させたいんです。来週、全員で集まって家族会議をする予定なんです。そして、その場に叔母も呼んで、遺言のことを話してもらおうと思っています。父と兄は驚くでしょうが…」家族会議にあたり、念頭に置いておいたほうがいいことを教えてくださいという宏美さんのご要望があったため、知人の弁護士を紹介したところ、その弁護士からは、(1)遺言の「検認」と、(2)遺留分の2点について以下のようなアドバイスがありました。2つのアドバイス(1)遺言は勝手に開封してはいけない。家庭裁判所で検認の手続きを亡くなった方が自筆で書いた「自筆証書遺言」の場合、その遺言を発見した相続人や保管していた人は、開封することなく家庭裁判所に「検認」の申立てをしなければなりません。検認とは、法務局以外で保管していた自筆証書遺言の場合に、相続人に対して遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の内容を明確にして、偽造・変造等を防止するための手続きです(※)。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。(※)法務局による保管制度が2020年7月より始まりました。今回のケースでは、遺言を預かっていた叔母が、家庭裁判所に検認の申立てを行いました。遺言を見つけたらすぐに開封してしまいたくなる気持ちは分かりますが、開封してはいけません。知らなかったとはいえ、開封してしまうと過料が科せられることもありますし、他の相続人からあらぬ疑いをかけられることにもなりかねません。「勝手に開けて、自分に都合が良いように改ざんした!」などと言われかねないのです。法務局に預けた自筆証書遺言は、相続発生後、検認を受ける必要がありません。保管申請の際に、本人の遺言であることを法務局が担保しているからです。〔PHOTO〕iStock (2)特定の相続人が最低限取得することができる取り分“遺留分”「遺留分」は、配偶者、子、直系尊属(親、祖父母)に認められた、最低限取得することができる遺産の取り分です。兄弟姉妹に遺留分はありません。遺言でさえも、この遺留分という権利を奪うことはできません。遺留分を侵害されていることを主張、請求された場合、遺産を相続する相続人は原則、現金で精算(支払い)しなければなりません。今回のケースでいえば、夫・健二さんの遺留分は4分の1(=法定相続分〔法律で定められた基本的な相続額〕である2分の1のさらに2分の1)ですので、6000万円の4分の1である1500万円です。いくら遺言で、すべての財産を長男、長女に渡すとしていても、夫が遺留分を主張し、長男と長女に対して遺留分を請求(遺留分侵害額請求といいます)した場合、長男と長女は1500万円を父親に現金で支払わなくてはなりません。結果として、優子さんの望みは叶わないことになってしまいます。先述の夫婦関係を鑑みると、間違いなく夫は遺留分を請求してくるでしょうから、長男と長女は父親に対して遺留分たる1500万円を支払う必要があります。 案の定、優子さんの葬式が終わる否や、健二さんは優子さんの遺産を調べ始めました。隆さん曰く、優子さんの死後、健二さんは血眼になって、家中で何かを探し回っている様子だったとのことです。「“遺言があったらマズイ”と思って、遺言を探していたんだろうと思います」と宏美さん。遺言は叔母に渡していたので、家にはもちろんありませんでした。一通り探し回って遺言がなさそうだと安心した夫は、優子さんの財産を洗いざらい調べて、取りまとめました。そして、「遺産分割協議」(故人の財産を誰がどのように相続するかの協議)の準備を間髪入れずに始めました。そして、その後、家族は大きなトラブルに見舞われることになります。その経緯は【後編】「「6000万の遺産、9割オレがもらう」DV男のヤバい言い分に、40代女性が仕掛けた壮絶逆襲」でお伝えしましょう。
宏美さんは続けて言います。
「母は脳梗塞になった後も比較的頭はしっかりしていましたし、このように字を書く練習も必死にやっていました。そして、3年前に遺言を作り、その遺言を妹、私から見れば叔母に預けたのです。そのことを知っているのは私と叔母だけ。父と兄は今も知りません」
優子さんが亡くなり、遺言を預かっていた叔母が宏美さんに、遺言の存在をそっと打ち明けてくれたそうです。
「まだ遺言の中身は見ていません。私と叔母の想像ですが、遺言は、父には一切財産を相続させない内容になっていると思っています。私は何としても母の遺言、思いを実現させたいんです。来週、全員で集まって家族会議をする予定なんです。そして、その場に叔母も呼んで、遺言のことを話してもらおうと思っています。父と兄は驚くでしょうが…」
家族会議にあたり、念頭に置いておいたほうがいいことを教えてくださいという宏美さんのご要望があったため、知人の弁護士を紹介したところ、その弁護士からは、(1)遺言の「検認」と、(2)遺留分の2点について以下のようなアドバイスがありました。
(1)遺言は勝手に開封してはいけない。家庭裁判所で検認の手続きを
亡くなった方が自筆で書いた「自筆証書遺言」の場合、その遺言を発見した相続人や保管していた人は、開封することなく家庭裁判所に「検認」の申立てをしなければなりません。
検認とは、法務局以外で保管していた自筆証書遺言の場合に、相続人に対して遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の内容を明確にして、偽造・変造等を防止するための手続きです(※)。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
(※)法務局による保管制度が2020年7月より始まりました。
今回のケースでは、遺言を預かっていた叔母が、家庭裁判所に検認の申立てを行いました。遺言を見つけたらすぐに開封してしまいたくなる気持ちは分かりますが、開封してはいけません。知らなかったとはいえ、開封してしまうと過料が科せられることもありますし、他の相続人からあらぬ疑いをかけられることにもなりかねません。「勝手に開けて、自分に都合が良いように改ざんした!」などと言われかねないのです。
法務局に預けた自筆証書遺言は、相続発生後、検認を受ける必要がありません。保管申請の際に、本人の遺言であることを法務局が担保しているからです。
〔PHOTO〕iStock
(2)特定の相続人が最低限取得することができる取り分“遺留分”「遺留分」は、配偶者、子、直系尊属(親、祖父母)に認められた、最低限取得することができる遺産の取り分です。兄弟姉妹に遺留分はありません。遺言でさえも、この遺留分という権利を奪うことはできません。遺留分を侵害されていることを主張、請求された場合、遺産を相続する相続人は原則、現金で精算(支払い)しなければなりません。今回のケースでいえば、夫・健二さんの遺留分は4分の1(=法定相続分〔法律で定められた基本的な相続額〕である2分の1のさらに2分の1)ですので、6000万円の4分の1である1500万円です。いくら遺言で、すべての財産を長男、長女に渡すとしていても、夫が遺留分を主張し、長男と長女に対して遺留分を請求(遺留分侵害額請求といいます)した場合、長男と長女は1500万円を父親に現金で支払わなくてはなりません。結果として、優子さんの望みは叶わないことになってしまいます。先述の夫婦関係を鑑みると、間違いなく夫は遺留分を請求してくるでしょうから、長男と長女は父親に対して遺留分たる1500万円を支払う必要があります。 案の定、優子さんの葬式が終わる否や、健二さんは優子さんの遺産を調べ始めました。隆さん曰く、優子さんの死後、健二さんは血眼になって、家中で何かを探し回っている様子だったとのことです。「“遺言があったらマズイ”と思って、遺言を探していたんだろうと思います」と宏美さん。遺言は叔母に渡していたので、家にはもちろんありませんでした。一通り探し回って遺言がなさそうだと安心した夫は、優子さんの財産を洗いざらい調べて、取りまとめました。そして、「遺産分割協議」(故人の財産を誰がどのように相続するかの協議)の準備を間髪入れずに始めました。そして、その後、家族は大きなトラブルに見舞われることになります。その経緯は【後編】「「6000万の遺産、9割オレがもらう」DV男のヤバい言い分に、40代女性が仕掛けた壮絶逆襲」でお伝えしましょう。
(2)特定の相続人が最低限取得することができる取り分“遺留分”
「遺留分」は、配偶者、子、直系尊属(親、祖父母)に認められた、最低限取得することができる遺産の取り分です。兄弟姉妹に遺留分はありません。
遺言でさえも、この遺留分という権利を奪うことはできません。遺留分を侵害されていることを主張、請求された場合、遺産を相続する相続人は原則、現金で精算(支払い)しなければなりません。
今回のケースでいえば、夫・健二さんの遺留分は4分の1(=法定相続分〔法律で定められた基本的な相続額〕である2分の1のさらに2分の1)ですので、6000万円の4分の1である1500万円です。いくら遺言で、すべての財産を長男、長女に渡すとしていても、夫が遺留分を主張し、長男と長女に対して遺留分を請求(遺留分侵害額請求といいます)した場合、長男と長女は1500万円を父親に現金で支払わなくてはなりません。
結果として、優子さんの望みは叶わないことになってしまいます。
先述の夫婦関係を鑑みると、間違いなく夫は遺留分を請求してくるでしょうから、長男と長女は父親に対して遺留分たる1500万円を支払う必要があります。
案の定、優子さんの葬式が終わる否や、健二さんは優子さんの遺産を調べ始めました。隆さん曰く、優子さんの死後、健二さんは血眼になって、家中で何かを探し回っている様子だったとのことです。「“遺言があったらマズイ”と思って、遺言を探していたんだろうと思います」と宏美さん。遺言は叔母に渡していたので、家にはもちろんありませんでした。一通り探し回って遺言がなさそうだと安心した夫は、優子さんの財産を洗いざらい調べて、取りまとめました。そして、「遺産分割協議」(故人の財産を誰がどのように相続するかの協議)の準備を間髪入れずに始めました。そして、その後、家族は大きなトラブルに見舞われることになります。その経緯は【後編】「「6000万の遺産、9割オレがもらう」DV男のヤバい言い分に、40代女性が仕掛けた壮絶逆襲」でお伝えしましょう。
案の定、優子さんの葬式が終わる否や、健二さんは優子さんの遺産を調べ始めました。隆さん曰く、優子さんの死後、健二さんは血眼になって、家中で何かを探し回っている様子だったとのことです。「“遺言があったらマズイ”と思って、遺言を探していたんだろうと思います」と宏美さん。
遺言は叔母に渡していたので、家にはもちろんありませんでした。一通り探し回って遺言がなさそうだと安心した夫は、優子さんの財産を洗いざらい調べて、取りまとめました。そして、「遺産分割協議」(故人の財産を誰がどのように相続するかの協議)の準備を間髪入れずに始めました。
そして、その後、家族は大きなトラブルに見舞われることになります。その経緯は【後編】「「6000万の遺産、9割オレがもらう」DV男のヤバい言い分に、40代女性が仕掛けた壮絶逆襲」でお伝えしましょう。