働き方が多様化するなどして副業への関心が高まる中、会社員らがインターネット取引で得た所得の申告漏れが相次いでいる。
昨年6月までの1年間では、全国で前年比約22億円増の約116億円に上る。このうち、福岡県の男性は副業のネット販売で得た1億円超が無申告だった。16日には確定申告が始まる。国税当局は適正な申告を呼びかけている。(牛島康太)
■1億円無申告
福岡県の40歳代の会社員男性は、副業とするネット販売で2020年までの7年間で得た約1億400万円について申告せず、一部で所得の隠蔽(いんぺい)を図っていたとして、福岡国税局から昨年、重加算税を含め約2100万円を追徴課税された。
男性は米国など海外から掃除機やドローン、アウトドア商品などをネットで仕入れていた。大半は新品で、ショッピングサイトやオークションサイト、フリマサイトで売却した。年間約500万~約1000万円の利益を得たが、申告していなかったという。
サイトの出店者情報には、架空の法人名を使って法人経営を装うとともに、この法人の代表者名を親族名義で登録するなどしていた。調査に対し、「反省している」などと話したという。
■「ばれるとは…」
「税務署にばれるとは思っていなかった」。福岡県の30歳代の会社員男性は福岡国税局の税務調査を受け、驚いた様子だったという。
男性は小遣い稼ぎで、質屋などで購入した中古のブランド品を複数のフリマサイトで転売するなどしていた。年間100万~500万円の利益を得たが申告せず、21年までの5年間の申告漏れは計約1800万円に上った。昨年、無申告加算税を含め約140万円を追徴課税された。
■情報収集強化
国税庁によると、ネット通販やネット広告、民泊などのネット取引(暗号資産等取引除く)を行う個人を対象にした調査で、昨年6月までの1年間で全国で申告漏れを指摘されたのは756人で前年比1・3倍。うち、福岡国税局管内は福岡、佐賀、長崎各県に住む同3倍の45人で、申告漏れは、同2・5倍の約8億2600万円に上った。
会社員やパートをしている主婦などの給与所得者は、副業での年間所得が20万円を超えれば、確定申告する必要がある。だが、「これくらいの金額なら大丈夫」という安易な認識で申告しない人もいるとみられる。
一方、国税当局は、サイトを運営する業者に対し、申告漏れの疑いがある人の氏名や住所を照会できる手続きを活用するなどして、問題があるとみられる納税者の把握に力を入れている。福岡国税局は「副収入に関する所得の計算や申告義務を確認し、適正な申告をお願いしたい」としている。
■シェアエコでも指摘例
インターネットを通じて、個人間などでモノやスキルを売買・貸借するシェアリングエコノミー(シェアエコ)に取り組む人らが申告漏れを指摘されるケースが出ている。
シェアエコは、衣服などのモノや、記事執筆や家事のスキル、駐車場や空き部屋のスペースなどをネットで貸し借りしたり、売買したりする経済活動で、在宅勤務の普及などを背景に最近は副業としても広がっている。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会(東京)によると、市場規模は拡大しており、2022年度は約2兆6000億円で、18年度に比べて約7000億円増加。同協会は、申告に慣れていない人を対象に確定申告のやり方などを学ぶセミナーを開催し、適正申告の啓発に力を入れている。
同協会の税制委員で、公認会計士・税理士の矢冨健太朗氏は「まずは自分で確定申告が必要かを確認することが大切。申告が必要な人は売り上げや経費などの記録を基に適切に納税してほしい」と話している。