SNSに投稿され拡散が相次ぐ“迷惑動画”。東京のイトーヨーカドー東久留米店では、少年らがアルコール消毒液にライターを近づけ火を付ける動画が拡散された。ひとつ間違えば、火災につながる危険な行為に課せられる“刑事罰”と“民事賠償”について、アトム法律事務所の狩野祐二弁護士に聞いた。威力業務妨害や建造物侵入罪ーー消毒液に火を付ける行為はどのような罪に問われる?まず、刑事上の責任から言うと「威力業務妨害罪」。威力を用いて人の業務を妨害したものとして、3年以下の懲役、又は、50万円以下の罰金となります。
また、「建造物侵入罪」も同時に成立しえます。違法行為をするために建造物に侵入したということで、3年以下の懲役、又は、10万円以下の罰金が定められています。少年がライターを持っているので、アルコールスプレーに火を付けることを予め目的として建物に侵入したとしたら、成立します。もう1つ考えられるのは、「現住建造物放火罪」です。人がいる建物に対して放火行為をすることで、これは法定刑が大変重く、死刑、又は無期、もしくは5年以上の懲役となります。今回の火の量を考えれば微妙なところですが、建物に燃え移る危険性があると判断されれば、「現住建造物放火罪の未遂行為」となります。実際、火が弱いので捜査機関が現住建造物放火罪で立件する可能性は低いとみていますが、威力業務妨害罪は明らかに成立します。そして店側の対応にもよりますが、建物に入ったこと自体を許可しないと考えているのであれば、建造物侵入罪も成立する余地があります。ーー少年の場合はどういった処分になる?刑事責任の観点では、少年と成人は区別されています。成人の場合は、警察や検察の捜査機関で捜査を受けて、罰金いくら、懲役何年という刑事処分が下るのですが、少年の場合は、警察、検察による捜査を終えた後に、家庭裁判所に送致されます。少年が家庭裁判所に送致された場合の処分は、「保護処分」というもので、保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致の3種類があります。そのため、刑事責任は負わないということになります。保護観察の場合は、保護観察官及び保護司によって、社会内での処遇のための指導と支援が行われます。その主な活動としては、保護司による定期的な面談が行われるものであり、あくまで日常生活は家庭で送ることになります。億単位の損害賠償請求も少年の場合は、原則として刑事責任は問われず、あくまで保護処分となるため、懲役刑や罰金刑にはならない。一方で民事責任については、成人同様に賠償義務が生じるという。ーー民事責任についてはどうなる?民事の責任は成人と同様に負うことになります。不祥事が起きて客足が遠のいて売り上げが下がった場合、イトーヨーカドーほどの大きな組織になると、損害の金額も大きくなっていきます。何千万円、場合によっては億単位の損害が生じます。実際に生じた損害は、未成年であっても、責任能力さえあれば、成人同様に賠償義務を負うものです。今回の場合だと、事件を起こした共犯者の数名が連帯して全額を賠償する責任が生じます。ーー少年による迷惑動画が拡散していることについてどう考えていますか?大手の回転寿司チェーン店だったり、カラオケ店でもありましたが、本人は面白い動画のつもりかもしれませんが、大人からしたら全く面白くない。客商売をやっている以上は、悪い評判が広がってしまうのは死活問題になるので、子どもの悪ふざけでは済まないとてもシビアな問題だと考えています。やったことも物凄く悪いですが、動画として残してしまうところにも問題があると考えています。いわゆるデジタルタトゥーとして一生残ってしまうものなので、ネットリテラシーの問題に関しては学校ではなく、家庭でしっかり教育指導をした方がいいと思います。過度な詮索、誹謗中傷は控えるべき一方で狩野弁護士は、迷惑動画の投稿者には責任の重さを自覚するよう促しつつも、世間による過度な誹謗中傷は控えるべきだと話す。ーー今後の展開で心配されることはありますか?実際の動画だと、少年は顔を出しています。犯人が特定されたり、今後誹謗中傷が行われる危険があります。例えば、高校生だとしたら、学校を退学処分になることもあります。本人らにはしっかり反省してもらいたいですが、我々世間の方も過度に詮索して、誹謗中傷をすることは控えてほしいと思います。
SNSに投稿され拡散が相次ぐ“迷惑動画”。
東京のイトーヨーカドー東久留米店では、少年らがアルコール消毒液にライターを近づけ火を付ける動画が拡散された。
ひとつ間違えば、火災につながる危険な行為に課せられる“刑事罰”と“民事賠償”について、アトム法律事務所の狩野祐二弁護士に聞いた。
ーー消毒液に火を付ける行為はどのような罪に問われる?まず、刑事上の責任から言うと「威力業務妨害罪」。威力を用いて人の業務を妨害したものとして、3年以下の懲役、又は、50万円以下の罰金となります。
また、「建造物侵入罪」も同時に成立しえます。違法行為をするために建造物に侵入したということで、3年以下の懲役、又は、10万円以下の罰金が定められています。少年がライターを持っているので、アルコールスプレーに火を付けることを予め目的として建物に侵入したとしたら、成立します。
もう1つ考えられるのは、「現住建造物放火罪」です。人がいる建物に対して放火行為をすることで、これは法定刑が大変重く、死刑、又は無期、もしくは5年以上の懲役となります。
今回の火の量を考えれば微妙なところですが、建物に燃え移る危険性があると判断されれば、「現住建造物放火罪の未遂行為」となります。
実際、火が弱いので捜査機関が現住建造物放火罪で立件する可能性は低いとみていますが、威力業務妨害罪は明らかに成立します。
そして店側の対応にもよりますが、建物に入ったこと自体を許可しないと考えているのであれば、建造物侵入罪も成立する余地があります。
ーー少年の場合はどういった処分になる?刑事責任の観点では、少年と成人は区別されています。
成人の場合は、警察や検察の捜査機関で捜査を受けて、罰金いくら、懲役何年という刑事処分が下るのですが、少年の場合は、警察、検察による捜査を終えた後に、家庭裁判所に送致されます。
少年が家庭裁判所に送致された場合の処分は、「保護処分」というもので、保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致の3種類があります。そのため、刑事責任は負わないということになります。
保護観察の場合は、保護観察官及び保護司によって、社会内での処遇のための指導と支援が行われます。その主な活動としては、保護司による定期的な面談が行われるものであり、あくまで日常生活は家庭で送ることになります。
少年の場合は、原則として刑事責任は問われず、あくまで保護処分となるため、懲役刑や罰金刑にはならない。一方で民事責任については、成人同様に賠償義務が生じるという。
ーー民事責任についてはどうなる?民事の責任は成人と同様に負うことになります。
不祥事が起きて客足が遠のいて売り上げが下がった場合、イトーヨーカドーほどの大きな組織になると、損害の金額も大きくなっていきます。何千万円、場合によっては億単位の損害が生じます。
実際に生じた損害は、未成年であっても、責任能力さえあれば、成人同様に賠償義務を負うものです。
今回の場合だと、事件を起こした共犯者の数名が連帯して全額を賠償する責任が生じます。
ーー少年による迷惑動画が拡散していることについてどう考えていますか?大手の回転寿司チェーン店だったり、カラオケ店でもありましたが、本人は面白い動画のつもりかもしれませんが、大人からしたら全く面白くない。
客商売をやっている以上は、悪い評判が広がってしまうのは死活問題になるので、子どもの悪ふざけでは済まないとてもシビアな問題だと考えています。
やったことも物凄く悪いですが、動画として残してしまうところにも問題があると考えています。
いわゆるデジタルタトゥーとして一生残ってしまうものなので、ネットリテラシーの問題に関しては学校ではなく、家庭でしっかり教育指導をした方がいいと思います。
一方で狩野弁護士は、迷惑動画の投稿者には責任の重さを自覚するよう促しつつも、世間による過度な誹謗中傷は控えるべきだと話す。
ーー今後の展開で心配されることはありますか?実際の動画だと、少年は顔を出しています。犯人が特定されたり、今後誹謗中傷が行われる危険があります。