「とある日の羅臼岳・羅臼平のフードロッカーにて。フードロッカーは指定のテント場でテント泊する方のために設置されており、就寝の際にヒグマを誘因する食糧と距離を置くことができる優れものです。就寝中でも重く頑丈な金属製のロッカーが大切な食べ物と命をヒグマから守ってくれるのです」と、あまり存在を知られていないフードロッカーにまつわる注意文に注目が集まりました。投稿した「知床羅臼ビジターセンター」にお話を聞きました。
【写真】実際に投稿された、ヒグマ対策のためのツイート写真には、銀色に輝く頑丈そうな箱が中央に映っています。上部には取っ手のようなものも見えます。こちらがフードロッカーでしょう。その脇には真っ赤で大きなナップザックが、もたれかけるように置かれています。明らかにフードロッカーに入れることができず放置されているような状況です。この状況を知り、「何でもないごくありふれた風景を切り取った登山写真かとおもいきや、スレッドを読み進めて行くととても恐ろしい写真だった((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」「ほぇーパッと見ゴミ箱やもんなぁ…フードロッカーの存在すら知らんかったわ」「ヨセミテにもあって、かなり厳しく言われるし、注意書きもある。こんなん、ホントに危険だわ」と、いう声があがっています。フードロッカーとは、ヒグマが開けられないような仕組みで、壊されないように頑丈な作りになっているステンレス製の食料保管庫。キャンプでの就寝時に、ヒグマを誘引してしまう食料や食料の匂いのついたものをテントに持ち込まずに、安全な就寝を叶えるアイテムです。海外ではクマが出る地域のキャンプ場には設置されていることもあるそうですが、現在日本には、全山がヒグマの高密度な生息地になっている知床連山に4つしか設置されていません。今回の場合はどうやら日中に日帰りの登山者が羅臼岳山頂に向かうにあたって身軽になるため、荷物を置いていってしまったようです。もしもヒグマが、この荷物のなかの食料に気づいてしまったら、フードロッカー周辺に執着し、今後はテント泊の人々はもちろん、日帰り登山者にまで危険が及んでしまう可能性があるそうです。さらに担当者は、「ザックに興味を示すのはヒグマだけではありません。キツネはザックをズタズタに切り裂いた上、中身を持ち去ることがあります。野外活動において自分の身は自分で守るもの。持ち物や食べ物を無くすことはその後の行動にも響きかねません。山をより安全に気持ちよく利用するために荷物の管理はしっかりと」と、注意を促しています。8月18日には知床峠~羅臼湖入口間の国道334号で、ヒグマが通りかかって停車した車を揺らす事例が起き、その動画が拡散されたばかり。本当にヒグマが身近な存在であることが分かります。知床連山や羅臼岳のフィールド情報や自然情報を発信している知床羅臼ビジターセンターの江口さんに詳しい話をうかがいました。「決して非難が目的ではありません」――こちらの画像はどのあたりで撮影されたのでしょうか「羅臼平の山頂まであと40~50分のところにある羅臼平というところです。羅臼平はキャンプ指定地になっていて、フードロッカーが設置されています。キャンプ指定地といっても、水場などは特にありませんので、必要なものはすべて持参していただくことになります」――このようにナップザックを置いていく人は多いのでしょうか。「そうですね、残念ながら少なくありません。フードロッカーの内部はネットなどが張られていて、大きなものを入れることができないよう工夫されています。山頂までもう少しということで、できるだけ身軽になりたいという方が多いようです」――このナップザックを見た時どう思われましたか?「ヒグマやキツネなど野生動物の危険性やフードロッカーの存在意義を、もっと登山者の方に周知しなければいけないなと感じました。また、野生動物へのリスク喚起はもちろんですが、山頂までの40~50分、予想外の事態が起こりうる可能性が十分あります。熱中症や低体温症に加え、突風によるケガや予想外の寒さなど…その際に水分や食料、衣服などの用意がないと最悪の事態にもなりかねません。この投稿は決して非難が目的ではありません。山頂まで気を抜かず、ナップザックは常に携帯してもらえたらと思います」――羅臼岳登山での注意点を教えてください。「羅臼岳は標高こそ1660mですが、オホーツク海に突出する知床半島にそびえる自然厳しい山です。なめてかかると痛い目に遭います。本州の3000m級の山に登るくらいの覚悟で臨んでください。またヒグマと遭遇しないよう、鈴を鳴らしたり頻繁に大声を出すなどのクマ対策も重要です。もしヒグマと出合ってしまった場合、背中を見せて走って逃げることは決してしないでください。念のためクマ撃退スプレーを携行することをおすすめします」◇ ◇元々は本州出身の江口さん。「北海道に移り住むまで北海道の山の気象条件の厳しさや、野生動物への最低限のルールなどを全く知りませんでした」と言います。「このツイートは、知らずに利用する方を非難する目的では決してありません。この内容が少しでも多くの方の目に留まり、知床国立公園の安全な利用につながるといいなと思います」と語ってくれました。昨今のコロナ禍で人気が高まっているキャンプや登山。知らずに行ってしまった行為や軽い気持ちでのマナーやルール違反が、大きな事態を招いてしまう可能性は十分にあります。素晴らしい自然が色濃く残る知床にはその地区ごとにルールがあります。訪れる際は事前に確認し、知床の自然を快適かつ安全に楽しみましょう。(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・福尾こずえ)
写真には、銀色に輝く頑丈そうな箱が中央に映っています。上部には取っ手のようなものも見えます。こちらがフードロッカーでしょう。その脇には真っ赤で大きなナップザックが、もたれかけるように置かれています。明らかにフードロッカーに入れることができず放置されているような状況です。
この状況を知り、「何でもないごくありふれた風景を切り取った登山写真かとおもいきや、スレッドを読み進めて行くととても恐ろしい写真だった((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」「ほぇーパッと見ゴミ箱やもんなぁ…フードロッカーの存在すら知らんかったわ」「ヨセミテにもあって、かなり厳しく言われるし、注意書きもある。こんなん、ホントに危険だわ」と、いう声があがっています。
フードロッカーとは、ヒグマが開けられないような仕組みで、壊されないように頑丈な作りになっているステンレス製の食料保管庫。キャンプでの就寝時に、ヒグマを誘引してしまう食料や食料の匂いのついたものをテントに持ち込まずに、安全な就寝を叶えるアイテムです。海外ではクマが出る地域のキャンプ場には設置されていることもあるそうですが、現在日本には、全山がヒグマの高密度な生息地になっている知床連山に4つしか設置されていません。
今回の場合はどうやら日中に日帰りの登山者が羅臼岳山頂に向かうにあたって身軽になるため、荷物を置いていってしまったようです。もしもヒグマが、この荷物のなかの食料に気づいてしまったら、フードロッカー周辺に執着し、今後はテント泊の人々はもちろん、日帰り登山者にまで危険が及んでしまう可能性があるそうです。
さらに担当者は、「ザックに興味を示すのはヒグマだけではありません。キツネはザックをズタズタに切り裂いた上、中身を持ち去ることがあります。野外活動において自分の身は自分で守るもの。持ち物や食べ物を無くすことはその後の行動にも響きかねません。山をより安全に気持ちよく利用するために荷物の管理はしっかりと」と、注意を促しています。
8月18日には知床峠~羅臼湖入口間の国道334号で、ヒグマが通りかかって停車した車を揺らす事例が起き、その動画が拡散されたばかり。本当にヒグマが身近な存在であることが分かります。知床連山や羅臼岳のフィールド情報や自然情報を発信している知床羅臼ビジターセンターの江口さんに詳しい話をうかがいました。
――こちらの画像はどのあたりで撮影されたのでしょうか
「羅臼平の山頂まであと40~50分のところにある羅臼平というところです。羅臼平はキャンプ指定地になっていて、フードロッカーが設置されています。キャンプ指定地といっても、水場などは特にありませんので、必要なものはすべて持参していただくことになります」
――このようにナップザックを置いていく人は多いのでしょうか。
「そうですね、残念ながら少なくありません。フードロッカーの内部はネットなどが張られていて、大きなものを入れることができないよう工夫されています。山頂までもう少しということで、できるだけ身軽になりたいという方が多いようです」
――このナップザックを見た時どう思われましたか?
「ヒグマやキツネなど野生動物の危険性やフードロッカーの存在意義を、もっと登山者の方に周知しなければいけないなと感じました。また、野生動物へのリスク喚起はもちろんですが、山頂までの40~50分、予想外の事態が起こりうる可能性が十分あります。
熱中症や低体温症に加え、突風によるケガや予想外の寒さなど…その際に水分や食料、衣服などの用意がないと最悪の事態にもなりかねません。この投稿は決して非難が目的ではありません。山頂まで気を抜かず、ナップザックは常に携帯してもらえたらと思います」
――羅臼岳登山での注意点を教えてください。
「羅臼岳は標高こそ1660mですが、オホーツク海に突出する知床半島にそびえる自然厳しい山です。なめてかかると痛い目に遭います。本州の3000m級の山に登るくらいの覚悟で臨んでください。またヒグマと遭遇しないよう、鈴を鳴らしたり頻繁に大声を出すなどのクマ対策も重要です。もしヒグマと出合ってしまった場合、背中を見せて走って逃げることは決してしないでください。念のためクマ撃退スプレーを携行することをおすすめします」
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元々は本州出身の江口さん。「北海道に移り住むまで北海道の山の気象条件の厳しさや、野生動物への最低限のルールなどを全く知りませんでした」と言います。「このツイートは、知らずに利用する方を非難する目的では決してありません。この内容が少しでも多くの方の目に留まり、知床国立公園の安全な利用につながるといいなと思います」と語ってくれました。
昨今のコロナ禍で人気が高まっているキャンプや登山。知らずに行ってしまった行為や軽い気持ちでのマナーやルール違反が、大きな事態を招いてしまう可能性は十分にあります。素晴らしい自然が色濃く残る知床にはその地区ごとにルールがあります。訪れる際は事前に確認し、知床の自然を快適かつ安全に楽しみましょう。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・福尾こずえ)