2月に死んだダービー馬「ウイニングチケット」が9月1日、牧草生産会社「中央牧草センター」(千葉県四街道市)が提供するサービス「生牧草バンク」の登録を抹消された。
「最後の支援」をしようと、直前の3日ほどの間にはファンから牧草500キロ以上の注文があった。ウイニングチケットを世話した担当者は「長い間支えてくれたファンの皆さんに、感謝したい」と話している。(萩原凱)
「生牧草バンク」はファンがインターネット上で購入した新鮮な牧草を、登録された引退馬に届ける仕組みだ。草食動物にとって「ごちそう」の牧草は、青草が育ちにくい冬の時期に重宝される。現在の会員は4000人を超え、登録馬は約380頭を数える。
1993年の日本ダービーを制し、「チケゾー」の愛称で親しまれたウイニングチケットは、昨年10月のサービス開始当初から登録。往年の競走馬を擬人化した育成ゲーム「ウマ娘」に登場したことで、最近は若いファンも増え、幅広い世代から牧草が届けられていた。
約10年にわたり、ウイニングチケットを世話した北海道浦河町の乗馬観光施設「うらかわ優駿ビレッジAERU」の太田篤志さん(37)は、「チケットは生牧草が大好き。運んでくるトラックに気づくと喜んでいた」と回想する。
AERUのSNSには昨年以降、雪の上で青々とした生牧草を頬張るウイニングチケットの動画や写真が、連日投稿されていた。太田さんによると、「チケットをきっかけに生牧草バンクを知り、支援を始めた」と話す人もいたという。
ウイニングチケットは今年2月18日、33歳で死んだ。人間なら100歳に近いという。AERUは厩舎(きゅうしゃ)などに祭壇と献花台を設置。全国から訪れたファンが別れを惜しんだ。
半年が過ぎた8月26日、AERUはウイニングチケットの登録を月末で抹消すると発表した。その直後、生牧草バンクにファンからの問い合わせが殺到。29日から9月1日午前9時までの3日間余りで、注文は約535キロ分に上った。これまでに受けた支援の倍以上にあたり、ファンからは「最後の贈り物をさせて」などの言葉が寄せられた。
生牧草は冬に入る11月以降に順次送られ、AERUで過ごす引退馬たちに与えられる。「ウイニングチケットは引退馬支援の道筋を作った馬の一頭」と語る太田さんは、「2005年にAERUに来て以降はもちろん、死んでからも貢献してくれる。彼に恩返しをするためにも、支援の輪を広げていけたら」と話している。