【ジャカルタ=水野祥】インドネシア訪問中の天皇、皇后両陛下が19日に臨まれたボゴール宮殿での国賓行事では、ジョコ大統領による「サプライズ」があった。
行事の合間に、急きょ宮殿近くの植物園を訪問することになり、両陛下は大統領が運転するカートに乗り込んで移動された。両国の親密さを浮かび上がらせる演出となった。
「あのようなカートに初めて乗って大変面白かったです」。宮内庁によると、陛下はジョコ氏の温かいもてなしをこう喜ばれた。ジョコ氏は「これまで何人かの賓客をカートに乗せましたが、今までで一番緊張しました」と応じたという。
カートでの移動と植物園の散策は当初の予定にはなく、「サプライズ好き」(宮内庁幹部)というジョコ氏の提案で実現した。
散策後、2人は報道陣の前であいさつ。陛下は「若い人々の交流により、両国間の友好親善が一層発展することを心から願っております」と述べられた。最後は、インドネシア語で「テレマカシ(ありがとう)」と言って締められた。
その後、陛下は宮殿でジョコ氏と会見。ジョコ氏が5月の広島サミットに出席し、平和記念資料館を訪問したことに謝意を伝えられた。ジョコ氏は「広島、長崎は平和の象徴で、核のない世界が実現することを願っている」と応じた。
さらにジョコ氏はインドネシアがウクライナの平和実現のため様々な努力をしていると説明。陛下はその努力に敬意を表された。
皇后さまもイリアナ夫人と懇談された。夫人の部屋の前では、現地の伝統弦楽器サペの演奏を鑑賞。部屋では、伝統の染め物「バティック」作りを体験し、実際にバティックの布地を肩に羽織って笑顔を見せられた。
一方、宮内庁によると、大統領夫妻主催の昼食会では、陛下とジョコ氏のスピーチ交換が直前に取りやめになった。ジョコ氏側から「より和やかで打ち解けた雰囲気で話をしたい」との意向が伝えられた。スピーチでは陛下が先の大戦を含めて両国の歴史にどう言及されるか注目されていた。