世帯年収1,020万円のN夫婦は、30代で決断したあることが原因で世帯年収が700万円にまで減少してしまいました。世帯年収が700万円であれば予算2,000万円の住宅購入自体は無理のないことのはずですが、FPからの意見では、むしろこのままでは家計破綻の未来まで待ち受けていることが告げられます。一体なにがあったのでしょうか? 本記事では、N夫婦の事例とともに年収に基づいた適切なライフプランニングについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
(※画像はイメージです/PIXTA)
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』における都道府県別の平均賃金から、平均年収を推測することができます。
1位 東京都 598万9,500円45位 宮崎県 383万1,300円46位 青森県 380万1,600円47位 沖縄県 375万4,200円1位の東京都と47位の沖縄県との差は約223万円。当然ながら10年間で2,000万円以上、20年間で4,000万円以上の年収差が存在するということになります。一方で、ブランド総合研究所「都道府県魅力度ランキング2022」によると、平均年収が下位だった3県の魅力度は上位にランクインしています。宮崎県 21位青森県 19位沖縄県 3位これらの3県には自然が豊かで住みやすいという、都会にはない魅力をイメージしやすいと思います。Uターン移住を希望している人も増えていて、自治体も移住受け入れに力を入れています。満員電車に揺られて出勤し競争社会のなかで生き残る生活に閉塞感を覚えたという人達が、「自然に囲まれた豊かな暮らし」「安い物価」「年収が下がったとしても人間的な暮らしができる」などという理想を描いて移住を考えているようです。しかし、その理想は現実的なものでしょうか。急激な物価高が進む現在、地方都市へのUターン移住は家計にどのような影響をおよぼすのか、事例を交えて解説していきます。世帯年収1,050万円・青森県出身の30代夫婦…Uターン移住を決断(※画像はイメージです/PIXTA)Nさんは33歳の会社員です。青森県の出身で東京都内の大学に進学、卒業後そのまま都内の企業に就職しました。同じ年のKさんと知り合ったのは28歳のとき。看護師をしているKさんもまた青森県の出身でした。29歳で結婚した当初は、夫の年収は520万円、妻の年収は500万円でした。世帯年収で1,020万円と決して多くはないものの不自由を感じない生活ができていました。しかし夫のNさんは仕事のストレスから、軽度のメンタル不調に陥ってしまいます。一方で妻のKさんも日々の深夜勤務に疲れていました。2人で故郷に戻り転職してやり直したいという思いが強くなり、31歳のときにUターン移住・転職を実行しました。Uターン移住先で転職、住宅購入を計画するも…青森県で夫のNさんが就職したのが地元の中小企業。年収は360万円です。妻のKさんは夜勤のないクリニックに就職。年収は340万円となりました。世帯年収は700万円。以前の7割ほどに減少しましたが、Nさんのメンタル不調は劇的に改善しました。故郷で暮らせる安心感ゆえでしょうか。Nさん夫婦は次第にマイホーム購入を考え始めます。「田舎だし土地は安い。郊外の安い土地に大きな家を建てて暮らしたい……」夫婦でそう願うようになったのです。住宅メーカーの展示場を訪れると、対応した営業マンが2人の年収を聞いて機嫌よく答えました。「この年収であれば、まったく問題がなく住宅ローンを借りられるでしょう」それを聞いてNさん夫婦は大喜びしました。資金計画は4,500万円。土地の広さは90坪、建物は延床面積40坪という立派な注文住宅です。「毎月の返済額は119,200円(35年返済、金利0.65%)、年収に対する返済負担率は20.4%なので問題はないですよ」と住宅営業マンはいいます。少し高いかなと不安に思ったNさん夫婦に、営業マンがFPを紹介してくれました。保険会社の営業マンでしたが親切に相談に乗ってくれて、こういいました。「この地方で世帯年収700万円は多いほうですよ。安心して買っていいと思います」ほっと胸を撫でおろしたNさん夫婦は、契約することを前提で住宅メーカーと打ち合わせを始めました。ところが、FPにお墨付きをもらった気分の夫のNさんは、次第に建物に対する希望が膨らんでいきます。趣味のための書斎が欲しい、敷地にガレージを作りたい、平屋にしたほうがかっこいいのではないか、建物を50坪くらいに大きくしたらどうだろうか……。当然ながら予算は急上昇していき、5,000万円を超えてしまいました。気持ちが高揚している夫のNさんをよそに、妻のKさんは強い不安に駆られ、以前紹介されたFPとは違うFP事務所に相談し直そうと思ったのです。「持ち家を買うのは不可能です。諦めてください」(※画像はイメージです/PIXTA)FP事務所のFPがNさんの家計について、詳細に分析していきました。その結果、FPが冷静にこういいました。「Nさん、家を買うのは不可能です。家は諦めてください」「え、なぜ?」と驚くNさん夫婦。「5,000万円はやはり高いですかね……?」FPはこう告げます。「いえ、値段が2,000万円だとしても家を買ってしまうと、将来は破綻するようです……」驚く夫婦に、FPが丁寧に説明してくれました。夫Nさん:33歳 会社員 年収360万円 昇給なし、退職金500万円妻Kさん:33歳 看護師 年収340万円 昇給なし、退職金なし子供:4歳と2歳貯蓄:300万円現在の家賃:7万円Nさん夫婦の希望は次のようなものでした。・子供は東京都内の私立大学への進学が希望・奨学金は借りさせたくない・自動車は10年ごとに400万円の普通車と、200万円の軽自動車への乗り換え・毎年2回は旅行に行きたい・趣味のバンド活動のために月に1度は東京都内で仲間と集まりたい・なるべく大きな建物が望みなので、土地は郊外の安い立地でいいこの前提で将来の収支を計算すると、10年後には貯蓄が尽き借金状態となっていきます。実質的に家計破綻です。住宅ローンを2,000万円にし、子供の大学進学はなしということにしても、65歳で破綻します。老後に路頭に迷うことになってしまいます。どんなに安い家を買ったとしても、メンテナンス費用や税金、保険が必要である以上、Nさんの家計では購入は不可能のようでした。「なぜなのでしょうか。特に贅沢をしているわけではないし、物価が安い田舎に住んでいるはずです。確かに年収は低くなりましたが、地方としてはそれほど貧しくないはずです」夫のNさんは不満げです。FPからはこう説明がありました。「物価が安いというのはおそらく思い込みだと思います。家賃や土地が安いというだけで、建物価格は安くはありません。昨今の物価高で光熱費はこれからも上昇することが考えられ、食料品や日用品も高騰していくかもしれません。物価上昇率を約0.5%で計算していて、急激な物価上昇はこれでも考慮していないのです。それと……失礼ながら、収入に対して毎月の生活費が大きすぎます」確かに東京に住んでいたころと比べて生活レベルを下げることができないままでした。贅沢しているつもりがなくても、年収に対して生活費がかかりすぎています。 黙ってしまうNさんの隣で、妻のKさんがいいます。「住宅ローンの金利が上昇するように計算しているようですが、以前相談したFPさんは、変動金利は当面上がらないと力説していました」FPが答えます。「FPはそれぞれ持論があるかもしれませんが、シンクタンクの研究員ではないので今後の金利を予測し断言する立場にはありません。あらゆる可能性をシミュレーションする立場です。金利が上がっても、上がらなくても、家計は行き詰まるという結果です……」「ではどうしたらいいのでしょうか」Nさん夫婦が将来破綻する原因は明確です。優先順位が決められていなく、すべてを叶えようとしているからです。それが叶えられるほどの十分な収入がない、という現実を理解していないともいえます。子供の教育、住宅、趣味、自動車、生活のサイズ、などの理想についてどれを優先し、どれを切り捨てるかという取捨選択を行う必要があります。Nさんは移住を決めた最初の「年収が下がったとしても豊かな生活ができる」という理想と、年収という現実にギャップがあることに気づいていません。地方都市だとしても物価が特段安いわけではなく、むしろ自動車の維持費や燃料費などはそれまでよりも高くなってしまいます。大学進学も多くは親元を離れて引っ越しする必要があり費用が大きくかかります。移住してから年収が夫婦で3割下がっているという現実をNさん夫婦は軽く見過ぎでした。突きつけられた移住の現実…家計破綻の未来が待つ夫婦への「解決策」(※画像はイメージです/PIXTA)Nさんが破綻することなく一生安全に暮らすためには、次のような行動が必要です。・住まいは賃貸のまま・子供2人の大学進学時はそれぞれ400万円程度の奨学金を借りてもらう・自動車の買い替えはご夫婦ともに200万円以下・旅行と冠婚葬祭などの家族のイベントは年10万円以下・頻繁に東京都内には行けない(バンドは諦める)・毎月使っているそれぞれの小遣いを2.5万円ずつ削減する(月5万円削減)・食費、外食費は現状のまま・生命保険の掛け金を削減する最優先するのは子供2人の私立大学への進学ということになりました。「これではただ生きているだけの人生では……? そんなに我が家は貧困なの?」とNさんはがっかりした様子です。しかし貧困だというのは少々投げやりかもしれません。誰でも年収のサイズに合わせた生活をしなければならないというだけの話です。移住したというだけで夢のような生活ができるわけではないのです。「持ち家を諦めたうえに生活費も節約しなければならないとは……」夫のNさんは相当な落胆ぶりでしたが、次第に理解できたようです。「まずは教育費を貯めます。それから生活費も節約して定年後にでも持ち家を買えるようにしていきたいです」といいます。さらなる転職も考え始め、年収を少しでも上げる努力を始めようとしています。Uターン転職は金銭的デメリットも大きいUターン転職の多くは年収を大きく下げてしまいます。地方だから年収を下げても暮らしていけると考えるのは間違いです。生活レベルを下げ、叶わない理想もあるという現実を受け入れる必要があります。大げさに聞こえるかもしれませんが年収が下がるというのはそういうことなのです。生涯賃金を大きく下げるというデメリットを超えるメリットがあるかどうか、Uターン転職の前にご家族で話し合って冷静に判断する必要があります。長岡 理知長岡FP事務所代表
45位 宮崎県 383万1,300円
46位 青森県 380万1,600円
47位 沖縄県 375万4,200円
1位の東京都と47位の沖縄県との差は約223万円。当然ながら10年間で2,000万円以上、20年間で4,000万円以上の年収差が存在するということになります。一方で、ブランド総合研究所「都道府県魅力度ランキング2022」によると、平均年収が下位だった3県の魅力度は上位にランクインしています。
宮崎県 21位青森県 19位沖縄県 3位これらの3県には自然が豊かで住みやすいという、都会にはない魅力をイメージしやすいと思います。Uターン移住を希望している人も増えていて、自治体も移住受け入れに力を入れています。満員電車に揺られて出勤し競争社会のなかで生き残る生活に閉塞感を覚えたという人達が、「自然に囲まれた豊かな暮らし」「安い物価」「年収が下がったとしても人間的な暮らしができる」などという理想を描いて移住を考えているようです。しかし、その理想は現実的なものでしょうか。急激な物価高が進む現在、地方都市へのUターン移住は家計にどのような影響をおよぼすのか、事例を交えて解説していきます。世帯年収1,050万円・青森県出身の30代夫婦…Uターン移住を決断(※画像はイメージです/PIXTA)Nさんは33歳の会社員です。青森県の出身で東京都内の大学に進学、卒業後そのまま都内の企業に就職しました。同じ年のKさんと知り合ったのは28歳のとき。看護師をしているKさんもまた青森県の出身でした。29歳で結婚した当初は、夫の年収は520万円、妻の年収は500万円でした。世帯年収で1,020万円と決して多くはないものの不自由を感じない生活ができていました。しかし夫のNさんは仕事のストレスから、軽度のメンタル不調に陥ってしまいます。一方で妻のKさんも日々の深夜勤務に疲れていました。2人で故郷に戻り転職してやり直したいという思いが強くなり、31歳のときにUターン移住・転職を実行しました。Uターン移住先で転職、住宅購入を計画するも…青森県で夫のNさんが就職したのが地元の中小企業。年収は360万円です。妻のKさんは夜勤のないクリニックに就職。年収は340万円となりました。世帯年収は700万円。以前の7割ほどに減少しましたが、Nさんのメンタル不調は劇的に改善しました。故郷で暮らせる安心感ゆえでしょうか。Nさん夫婦は次第にマイホーム購入を考え始めます。「田舎だし土地は安い。郊外の安い土地に大きな家を建てて暮らしたい……」夫婦でそう願うようになったのです。住宅メーカーの展示場を訪れると、対応した営業マンが2人の年収を聞いて機嫌よく答えました。「この年収であれば、まったく問題がなく住宅ローンを借りられるでしょう」それを聞いてNさん夫婦は大喜びしました。資金計画は4,500万円。土地の広さは90坪、建物は延床面積40坪という立派な注文住宅です。「毎月の返済額は119,200円(35年返済、金利0.65%)、年収に対する返済負担率は20.4%なので問題はないですよ」と住宅営業マンはいいます。少し高いかなと不安に思ったNさん夫婦に、営業マンがFPを紹介してくれました。保険会社の営業マンでしたが親切に相談に乗ってくれて、こういいました。「この地方で世帯年収700万円は多いほうですよ。安心して買っていいと思います」ほっと胸を撫でおろしたNさん夫婦は、契約することを前提で住宅メーカーと打ち合わせを始めました。ところが、FPにお墨付きをもらった気分の夫のNさんは、次第に建物に対する希望が膨らんでいきます。趣味のための書斎が欲しい、敷地にガレージを作りたい、平屋にしたほうがかっこいいのではないか、建物を50坪くらいに大きくしたらどうだろうか……。当然ながら予算は急上昇していき、5,000万円を超えてしまいました。気持ちが高揚している夫のNさんをよそに、妻のKさんは強い不安に駆られ、以前紹介されたFPとは違うFP事務所に相談し直そうと思ったのです。「持ち家を買うのは不可能です。諦めてください」(※画像はイメージです/PIXTA)FP事務所のFPがNさんの家計について、詳細に分析していきました。その結果、FPが冷静にこういいました。「Nさん、家を買うのは不可能です。家は諦めてください」「え、なぜ?」と驚くNさん夫婦。「5,000万円はやはり高いですかね……?」FPはこう告げます。「いえ、値段が2,000万円だとしても家を買ってしまうと、将来は破綻するようです……」驚く夫婦に、FPが丁寧に説明してくれました。夫Nさん:33歳 会社員 年収360万円 昇給なし、退職金500万円妻Kさん:33歳 看護師 年収340万円 昇給なし、退職金なし子供:4歳と2歳貯蓄:300万円現在の家賃:7万円Nさん夫婦の希望は次のようなものでした。・子供は東京都内の私立大学への進学が希望・奨学金は借りさせたくない・自動車は10年ごとに400万円の普通車と、200万円の軽自動車への乗り換え・毎年2回は旅行に行きたい・趣味のバンド活動のために月に1度は東京都内で仲間と集まりたい・なるべく大きな建物が望みなので、土地は郊外の安い立地でいいこの前提で将来の収支を計算すると、10年後には貯蓄が尽き借金状態となっていきます。実質的に家計破綻です。住宅ローンを2,000万円にし、子供の大学進学はなしということにしても、65歳で破綻します。老後に路頭に迷うことになってしまいます。どんなに安い家を買ったとしても、メンテナンス費用や税金、保険が必要である以上、Nさんの家計では購入は不可能のようでした。「なぜなのでしょうか。特に贅沢をしているわけではないし、物価が安い田舎に住んでいるはずです。確かに年収は低くなりましたが、地方としてはそれほど貧しくないはずです」夫のNさんは不満げです。FPからはこう説明がありました。「物価が安いというのはおそらく思い込みだと思います。家賃や土地が安いというだけで、建物価格は安くはありません。昨今の物価高で光熱費はこれからも上昇することが考えられ、食料品や日用品も高騰していくかもしれません。物価上昇率を約0.5%で計算していて、急激な物価上昇はこれでも考慮していないのです。それと……失礼ながら、収入に対して毎月の生活費が大きすぎます」確かに東京に住んでいたころと比べて生活レベルを下げることができないままでした。贅沢しているつもりがなくても、年収に対して生活費がかかりすぎています。 黙ってしまうNさんの隣で、妻のKさんがいいます。「住宅ローンの金利が上昇するように計算しているようですが、以前相談したFPさんは、変動金利は当面上がらないと力説していました」FPが答えます。「FPはそれぞれ持論があるかもしれませんが、シンクタンクの研究員ではないので今後の金利を予測し断言する立場にはありません。あらゆる可能性をシミュレーションする立場です。金利が上がっても、上がらなくても、家計は行き詰まるという結果です……」「ではどうしたらいいのでしょうか」Nさん夫婦が将来破綻する原因は明確です。優先順位が決められていなく、すべてを叶えようとしているからです。それが叶えられるほどの十分な収入がない、という現実を理解していないともいえます。子供の教育、住宅、趣味、自動車、生活のサイズ、などの理想についてどれを優先し、どれを切り捨てるかという取捨選択を行う必要があります。Nさんは移住を決めた最初の「年収が下がったとしても豊かな生活ができる」という理想と、年収という現実にギャップがあることに気づいていません。地方都市だとしても物価が特段安いわけではなく、むしろ自動車の維持費や燃料費などはそれまでよりも高くなってしまいます。大学進学も多くは親元を離れて引っ越しする必要があり費用が大きくかかります。移住してから年収が夫婦で3割下がっているという現実をNさん夫婦は軽く見過ぎでした。突きつけられた移住の現実…家計破綻の未来が待つ夫婦への「解決策」(※画像はイメージです/PIXTA)Nさんが破綻することなく一生安全に暮らすためには、次のような行動が必要です。・住まいは賃貸のまま・子供2人の大学進学時はそれぞれ400万円程度の奨学金を借りてもらう・自動車の買い替えはご夫婦ともに200万円以下・旅行と冠婚葬祭などの家族のイベントは年10万円以下・頻繁に東京都内には行けない(バンドは諦める)・毎月使っているそれぞれの小遣いを2.5万円ずつ削減する(月5万円削減)・食費、外食費は現状のまま・生命保険の掛け金を削減する最優先するのは子供2人の私立大学への進学ということになりました。「これではただ生きているだけの人生では……? そんなに我が家は貧困なの?」とNさんはがっかりした様子です。しかし貧困だというのは少々投げやりかもしれません。誰でも年収のサイズに合わせた生活をしなければならないというだけの話です。移住したというだけで夢のような生活ができるわけではないのです。「持ち家を諦めたうえに生活費も節約しなければならないとは……」夫のNさんは相当な落胆ぶりでしたが、次第に理解できたようです。「まずは教育費を貯めます。それから生活費も節約して定年後にでも持ち家を買えるようにしていきたいです」といいます。さらなる転職も考え始め、年収を少しでも上げる努力を始めようとしています。Uターン転職は金銭的デメリットも大きいUターン転職の多くは年収を大きく下げてしまいます。地方だから年収を下げても暮らしていけると考えるのは間違いです。生活レベルを下げ、叶わない理想もあるという現実を受け入れる必要があります。大げさに聞こえるかもしれませんが年収が下がるというのはそういうことなのです。生涯賃金を大きく下げるというデメリットを超えるメリットがあるかどうか、Uターン転職の前にご家族で話し合って冷静に判断する必要があります。長岡 理知長岡FP事務所代表
青森県 19位
沖縄県 3位
これらの3県には自然が豊かで住みやすいという、都会にはない魅力をイメージしやすいと思います。Uターン移住を希望している人も増えていて、自治体も移住受け入れに力を入れています。満員電車に揺られて出勤し競争社会のなかで生き残る生活に閉塞感を覚えたという人達が、「自然に囲まれた豊かな暮らし」「安い物価」「年収が下がったとしても人間的な暮らしができる」などという理想を描いて移住を考えているようです。
しかし、その理想は現実的なものでしょうか。急激な物価高が進む現在、地方都市へのUターン移住は家計にどのような影響をおよぼすのか、事例を交えて解説していきます。
(※画像はイメージです/PIXTA)
Nさんは33歳の会社員です。青森県の出身で東京都内の大学に進学、卒業後そのまま都内の企業に就職しました。同じ年のKさんと知り合ったのは28歳のとき。看護師をしているKさんもまた青森県の出身でした。29歳で結婚した当初は、夫の年収は520万円、妻の年収は500万円でした。世帯年収で1,020万円と決して多くはないものの不自由を感じない生活ができていました。
しかし夫のNさんは仕事のストレスから、軽度のメンタル不調に陥ってしまいます。一方で妻のKさんも日々の深夜勤務に疲れていました。2人で故郷に戻り転職してやり直したいという思いが強くなり、31歳のときにUターン移住・転職を実行しました。
青森県で夫のNさんが就職したのが地元の中小企業。年収は360万円です。妻のKさんは夜勤のないクリニックに就職。年収は340万円となりました。世帯年収は700万円。以前の7割ほどに減少しましたが、Nさんのメンタル不調は劇的に改善しました。故郷で暮らせる安心感ゆえでしょうか。Nさん夫婦は次第にマイホーム購入を考え始めます。
「田舎だし土地は安い。郊外の安い土地に大きな家を建てて暮らしたい……」
夫婦でそう願うようになったのです。住宅メーカーの展示場を訪れると、対応した営業マンが2人の年収を聞いて機嫌よく答えました。
「この年収であれば、まったく問題がなく住宅ローンを借りられるでしょう」
それを聞いてNさん夫婦は大喜びしました。資金計画は4,500万円。土地の広さは90坪、建物は延床面積40坪という立派な注文住宅です。
「毎月の返済額は119,200円(35年返済、金利0.65%)、年収に対する返済負担率は20.4%なので問題はないですよ」と住宅営業マンはいいます。
少し高いかなと不安に思ったNさん夫婦に、営業マンがFPを紹介してくれました。保険会社の営業マンでしたが親切に相談に乗ってくれて、こういいました。
「この地方で世帯年収700万円は多いほうですよ。安心して買っていいと思います」
ほっと胸を撫でおろしたNさん夫婦は、契約することを前提で住宅メーカーと打ち合わせを始めました。ところが、FPにお墨付きをもらった気分の夫のNさんは、次第に建物に対する希望が膨らんでいきます。趣味のための書斎が欲しい、敷地にガレージを作りたい、平屋にしたほうがかっこいいのではないか、建物を50坪くらいに大きくしたらどうだろうか……。
当然ながら予算は急上昇していき、5,000万円を超えてしまいました。気持ちが高揚している夫のNさんをよそに、妻のKさんは強い不安に駆られ、以前紹介されたFPとは違うFP事務所に相談し直そうと思ったのです。
(※画像はイメージです/PIXTA)
FP事務所のFPがNさんの家計について、詳細に分析していきました。その結果、FPが冷静にこういいました。
「Nさん、家を買うのは不可能です。家は諦めてください」
「え、なぜ?」と驚くNさん夫婦。「5,000万円はやはり高いですかね……?」
FPはこう告げます。
「いえ、値段が2,000万円だとしても家を買ってしまうと、将来は破綻するようです……」
驚く夫婦に、FPが丁寧に説明してくれました。
夫Nさん:33歳 会社員 年収360万円 昇給なし、退職金500万円妻Kさん:33歳 看護師 年収340万円 昇給なし、退職金なし子供:4歳と2歳貯蓄:300万円現在の家賃:7万円Nさん夫婦の希望は次のようなものでした。・子供は東京都内の私立大学への進学が希望・奨学金は借りさせたくない・自動車は10年ごとに400万円の普通車と、200万円の軽自動車への乗り換え・毎年2回は旅行に行きたい・趣味のバンド活動のために月に1度は東京都内で仲間と集まりたい・なるべく大きな建物が望みなので、土地は郊外の安い立地でいいこの前提で将来の収支を計算すると、10年後には貯蓄が尽き借金状態となっていきます。実質的に家計破綻です。住宅ローンを2,000万円にし、子供の大学進学はなしということにしても、65歳で破綻します。老後に路頭に迷うことになってしまいます。どんなに安い家を買ったとしても、メンテナンス費用や税金、保険が必要である以上、Nさんの家計では購入は不可能のようでした。「なぜなのでしょうか。特に贅沢をしているわけではないし、物価が安い田舎に住んでいるはずです。確かに年収は低くなりましたが、地方としてはそれほど貧しくないはずです」夫のNさんは不満げです。FPからはこう説明がありました。「物価が安いというのはおそらく思い込みだと思います。家賃や土地が安いというだけで、建物価格は安くはありません。昨今の物価高で光熱費はこれからも上昇することが考えられ、食料品や日用品も高騰していくかもしれません。物価上昇率を約0.5%で計算していて、急激な物価上昇はこれでも考慮していないのです。それと……失礼ながら、収入に対して毎月の生活費が大きすぎます」確かに東京に住んでいたころと比べて生活レベルを下げることができないままでした。贅沢しているつもりがなくても、年収に対して生活費がかかりすぎています。 黙ってしまうNさんの隣で、妻のKさんがいいます。「住宅ローンの金利が上昇するように計算しているようですが、以前相談したFPさんは、変動金利は当面上がらないと力説していました」FPが答えます。「FPはそれぞれ持論があるかもしれませんが、シンクタンクの研究員ではないので今後の金利を予測し断言する立場にはありません。あらゆる可能性をシミュレーションする立場です。金利が上がっても、上がらなくても、家計は行き詰まるという結果です……」「ではどうしたらいいのでしょうか」Nさん夫婦が将来破綻する原因は明確です。優先順位が決められていなく、すべてを叶えようとしているからです。それが叶えられるほどの十分な収入がない、という現実を理解していないともいえます。子供の教育、住宅、趣味、自動車、生活のサイズ、などの理想についてどれを優先し、どれを切り捨てるかという取捨選択を行う必要があります。Nさんは移住を決めた最初の「年収が下がったとしても豊かな生活ができる」という理想と、年収という現実にギャップがあることに気づいていません。地方都市だとしても物価が特段安いわけではなく、むしろ自動車の維持費や燃料費などはそれまでよりも高くなってしまいます。大学進学も多くは親元を離れて引っ越しする必要があり費用が大きくかかります。移住してから年収が夫婦で3割下がっているという現実をNさん夫婦は軽く見過ぎでした。突きつけられた移住の現実…家計破綻の未来が待つ夫婦への「解決策」(※画像はイメージです/PIXTA)Nさんが破綻することなく一生安全に暮らすためには、次のような行動が必要です。・住まいは賃貸のまま・子供2人の大学進学時はそれぞれ400万円程度の奨学金を借りてもらう・自動車の買い替えはご夫婦ともに200万円以下・旅行と冠婚葬祭などの家族のイベントは年10万円以下・頻繁に東京都内には行けない(バンドは諦める)・毎月使っているそれぞれの小遣いを2.5万円ずつ削減する(月5万円削減)・食費、外食費は現状のまま・生命保険の掛け金を削減する最優先するのは子供2人の私立大学への進学ということになりました。「これではただ生きているだけの人生では……? そんなに我が家は貧困なの?」とNさんはがっかりした様子です。しかし貧困だというのは少々投げやりかもしれません。誰でも年収のサイズに合わせた生活をしなければならないというだけの話です。移住したというだけで夢のような生活ができるわけではないのです。「持ち家を諦めたうえに生活費も節約しなければならないとは……」夫のNさんは相当な落胆ぶりでしたが、次第に理解できたようです。「まずは教育費を貯めます。それから生活費も節約して定年後にでも持ち家を買えるようにしていきたいです」といいます。さらなる転職も考え始め、年収を少しでも上げる努力を始めようとしています。Uターン転職は金銭的デメリットも大きいUターン転職の多くは年収を大きく下げてしまいます。地方だから年収を下げても暮らしていけると考えるのは間違いです。生活レベルを下げ、叶わない理想もあるという現実を受け入れる必要があります。大げさに聞こえるかもしれませんが年収が下がるというのはそういうことなのです。生涯賃金を大きく下げるというデメリットを超えるメリットがあるかどうか、Uターン転職の前にご家族で話し合って冷静に判断する必要があります。長岡 理知長岡FP事務所代表
妻Kさん:33歳 看護師 年収340万円 昇給なし、退職金なし
子供:4歳と2歳
貯蓄:300万円
現在の家賃:7万円
Nさん夫婦の希望は次のようなものでした。
・子供は東京都内の私立大学への進学が希望・奨学金は借りさせたくない・自動車は10年ごとに400万円の普通車と、200万円の軽自動車への乗り換え・毎年2回は旅行に行きたい・趣味のバンド活動のために月に1度は東京都内で仲間と集まりたい・なるべく大きな建物が望みなので、土地は郊外の安い立地でいいこの前提で将来の収支を計算すると、10年後には貯蓄が尽き借金状態となっていきます。実質的に家計破綻です。住宅ローンを2,000万円にし、子供の大学進学はなしということにしても、65歳で破綻します。老後に路頭に迷うことになってしまいます。どんなに安い家を買ったとしても、メンテナンス費用や税金、保険が必要である以上、Nさんの家計では購入は不可能のようでした。「なぜなのでしょうか。特に贅沢をしているわけではないし、物価が安い田舎に住んでいるはずです。確かに年収は低くなりましたが、地方としてはそれほど貧しくないはずです」夫のNさんは不満げです。FPからはこう説明がありました。「物価が安いというのはおそらく思い込みだと思います。家賃や土地が安いというだけで、建物価格は安くはありません。昨今の物価高で光熱費はこれからも上昇することが考えられ、食料品や日用品も高騰していくかもしれません。物価上昇率を約0.5%で計算していて、急激な物価上昇はこれでも考慮していないのです。それと……失礼ながら、収入に対して毎月の生活費が大きすぎます」確かに東京に住んでいたころと比べて生活レベルを下げることができないままでした。贅沢しているつもりがなくても、年収に対して生活費がかかりすぎています。 黙ってしまうNさんの隣で、妻のKさんがいいます。「住宅ローンの金利が上昇するように計算しているようですが、以前相談したFPさんは、変動金利は当面上がらないと力説していました」FPが答えます。「FPはそれぞれ持論があるかもしれませんが、シンクタンクの研究員ではないので今後の金利を予測し断言する立場にはありません。あらゆる可能性をシミュレーションする立場です。金利が上がっても、上がらなくても、家計は行き詰まるという結果です……」「ではどうしたらいいのでしょうか」Nさん夫婦が将来破綻する原因は明確です。優先順位が決められていなく、すべてを叶えようとしているからです。それが叶えられるほどの十分な収入がない、という現実を理解していないともいえます。子供の教育、住宅、趣味、自動車、生活のサイズ、などの理想についてどれを優先し、どれを切り捨てるかという取捨選択を行う必要があります。Nさんは移住を決めた最初の「年収が下がったとしても豊かな生活ができる」という理想と、年収という現実にギャップがあることに気づいていません。地方都市だとしても物価が特段安いわけではなく、むしろ自動車の維持費や燃料費などはそれまでよりも高くなってしまいます。大学進学も多くは親元を離れて引っ越しする必要があり費用が大きくかかります。移住してから年収が夫婦で3割下がっているという現実をNさん夫婦は軽く見過ぎでした。突きつけられた移住の現実…家計破綻の未来が待つ夫婦への「解決策」(※画像はイメージです/PIXTA)Nさんが破綻することなく一生安全に暮らすためには、次のような行動が必要です。・住まいは賃貸のまま・子供2人の大学進学時はそれぞれ400万円程度の奨学金を借りてもらう・自動車の買い替えはご夫婦ともに200万円以下・旅行と冠婚葬祭などの家族のイベントは年10万円以下・頻繁に東京都内には行けない(バンドは諦める)・毎月使っているそれぞれの小遣いを2.5万円ずつ削減する(月5万円削減)・食費、外食費は現状のまま・生命保険の掛け金を削減する最優先するのは子供2人の私立大学への進学ということになりました。「これではただ生きているだけの人生では……? そんなに我が家は貧困なの?」とNさんはがっかりした様子です。しかし貧困だというのは少々投げやりかもしれません。誰でも年収のサイズに合わせた生活をしなければならないというだけの話です。移住したというだけで夢のような生活ができるわけではないのです。「持ち家を諦めたうえに生活費も節約しなければならないとは……」夫のNさんは相当な落胆ぶりでしたが、次第に理解できたようです。「まずは教育費を貯めます。それから生活費も節約して定年後にでも持ち家を買えるようにしていきたいです」といいます。さらなる転職も考え始め、年収を少しでも上げる努力を始めようとしています。Uターン転職は金銭的デメリットも大きいUターン転職の多くは年収を大きく下げてしまいます。地方だから年収を下げても暮らしていけると考えるのは間違いです。生活レベルを下げ、叶わない理想もあるという現実を受け入れる必要があります。大げさに聞こえるかもしれませんが年収が下がるというのはそういうことなのです。生涯賃金を大きく下げるというデメリットを超えるメリットがあるかどうか、Uターン転職の前にご家族で話し合って冷静に判断する必要があります。長岡 理知長岡FP事務所代表
・奨学金は借りさせたくない
・自動車は10年ごとに400万円の普通車と、200万円の軽自動車への乗り換え
・毎年2回は旅行に行きたい
・趣味のバンド活動のために月に1度は東京都内で仲間と集まりたい
・なるべく大きな建物が望みなので、土地は郊外の安い立地でいい
この前提で将来の収支を計算すると、10年後には貯蓄が尽き借金状態となっていきます。実質的に家計破綻です。住宅ローンを2,000万円にし、子供の大学進学はなしということにしても、65歳で破綻します。老後に路頭に迷うことになってしまいます。どんなに安い家を買ったとしても、メンテナンス費用や税金、保険が必要である以上、Nさんの家計では購入は不可能のようでした。
「なぜなのでしょうか。特に贅沢をしているわけではないし、物価が安い田舎に住んでいるはずです。確かに年収は低くなりましたが、地方としてはそれほど貧しくないはずです」
夫のNさんは不満げです。FPからはこう説明がありました。
「物価が安いというのはおそらく思い込みだと思います。家賃や土地が安いというだけで、建物価格は安くはありません。昨今の物価高で光熱費はこれからも上昇することが考えられ、食料品や日用品も高騰していくかもしれません。物価上昇率を約0.5%で計算していて、急激な物価上昇はこれでも考慮していないのです。それと……失礼ながら、収入に対して毎月の生活費が大きすぎます」
確かに東京に住んでいたころと比べて生活レベルを下げることができないままでした。贅沢しているつもりがなくても、年収に対して生活費がかかりすぎています。 黙ってしまうNさんの隣で、妻のKさんがいいます。
「住宅ローンの金利が上昇するように計算しているようですが、以前相談したFPさんは、変動金利は当面上がらないと力説していました」
FPが答えます。
「FPはそれぞれ持論があるかもしれませんが、シンクタンクの研究員ではないので今後の金利を予測し断言する立場にはありません。あらゆる可能性をシミュレーションする立場です。金利が上がっても、上がらなくても、家計は行き詰まるという結果です……」
「ではどうしたらいいのでしょうか」
Nさん夫婦が将来破綻する原因は明確です。優先順位が決められていなく、すべてを叶えようとしているからです。それが叶えられるほどの十分な収入がない、という現実を理解していないともいえます。子供の教育、住宅、趣味、自動車、生活のサイズ、などの理想についてどれを優先し、どれを切り捨てるかという取捨選択を行う必要があります。
Nさんは移住を決めた最初の「年収が下がったとしても豊かな生活ができる」という理想と、年収という現実にギャップがあることに気づいていません。
地方都市だとしても物価が特段安いわけではなく、むしろ自動車の維持費や燃料費などはそれまでよりも高くなってしまいます。大学進学も多くは親元を離れて引っ越しする必要があり費用が大きくかかります。移住してから年収が夫婦で3割下がっているという現実をNさん夫婦は軽く見過ぎでした。
(※画像はイメージです/PIXTA)
Nさんが破綻することなく一生安全に暮らすためには、次のような行動が必要です。
・住まいは賃貸のまま・子供2人の大学進学時はそれぞれ400万円程度の奨学金を借りてもらう・自動車の買い替えはご夫婦ともに200万円以下・旅行と冠婚葬祭などの家族のイベントは年10万円以下・頻繁に東京都内には行けない(バンドは諦める)・毎月使っているそれぞれの小遣いを2.5万円ずつ削減する(月5万円削減)・食費、外食費は現状のまま・生命保険の掛け金を削減する最優先するのは子供2人の私立大学への進学ということになりました。「これではただ生きているだけの人生では……? そんなに我が家は貧困なの?」とNさんはがっかりした様子です。しかし貧困だというのは少々投げやりかもしれません。誰でも年収のサイズに合わせた生活をしなければならないというだけの話です。移住したというだけで夢のような生活ができるわけではないのです。「持ち家を諦めたうえに生活費も節約しなければならないとは……」夫のNさんは相当な落胆ぶりでしたが、次第に理解できたようです。「まずは教育費を貯めます。それから生活費も節約して定年後にでも持ち家を買えるようにしていきたいです」といいます。さらなる転職も考え始め、年収を少しでも上げる努力を始めようとしています。Uターン転職は金銭的デメリットも大きいUターン転職の多くは年収を大きく下げてしまいます。地方だから年収を下げても暮らしていけると考えるのは間違いです。生活レベルを下げ、叶わない理想もあるという現実を受け入れる必要があります。大げさに聞こえるかもしれませんが年収が下がるというのはそういうことなのです。生涯賃金を大きく下げるというデメリットを超えるメリットがあるかどうか、Uターン転職の前にご家族で話し合って冷静に判断する必要があります。長岡 理知長岡FP事務所代表
・子供2人の大学進学時はそれぞれ400万円程度の奨学金を借りてもらう
・自動車の買い替えはご夫婦ともに200万円以下
・旅行と冠婚葬祭などの家族のイベントは年10万円以下
・頻繁に東京都内には行けない(バンドは諦める)
・毎月使っているそれぞれの小遣いを2.5万円ずつ削減する(月5万円削減)
・食費、外食費は現状のまま
・生命保険の掛け金を削減する
最優先するのは子供2人の私立大学への進学ということになりました。
「これではただ生きているだけの人生では……? そんなに我が家は貧困なの?」とNさんはがっかりした様子です。
しかし貧困だというのは少々投げやりかもしれません。誰でも年収のサイズに合わせた生活をしなければならないというだけの話です。移住したというだけで夢のような生活ができるわけではないのです。
「持ち家を諦めたうえに生活費も節約しなければならないとは……」
夫のNさんは相当な落胆ぶりでしたが、次第に理解できたようです。
「まずは教育費を貯めます。それから生活費も節約して定年後にでも持ち家を買えるようにしていきたいです」といいます。さらなる転職も考え始め、年収を少しでも上げる努力を始めようとしています。
Uターン転職の多くは年収を大きく下げてしまいます。地方だから年収を下げても暮らしていけると考えるのは間違いです。生活レベルを下げ、叶わない理想もあるという現実を受け入れる必要があります。
大げさに聞こえるかもしれませんが年収が下がるというのはそういうことなのです。生涯賃金を大きく下げるというデメリットを超えるメリットがあるかどうか、Uターン転職の前にご家族で話し合って冷静に判断する必要があります。
長岡 理知
長岡FP事務所
代表