テレビに映るのが好きという岸田首相。現地時間22日、米・ニューヨーク証券取引所で講演し、クロージングベルを鳴らした(写真・AP/アフロ)
「現在、国連総会に出席するため訪米中の岸田首相ですが、週明けに国葬を控え、出発前はかなりピリピリしていました」
そう語るのは、岸田文雄首相に近いある関係者だ。帰国してすぐ、安倍晋三元首相の国葬に臨むことになる岸田首相。もともと9月19日に米国へ出発する予定だったが、台風14号に対応するため、翌20日午前に延期となった。
「延期を決めたときこそ、首相はいらだった様子でしたが、結果的に、19日におこなわれたエリザベス女王の国葬のテレビ中継を、じっくり観ることができました。
中継を食い入るように観ていた首相は、その荘厳さに感動したようで『この流れに乗ろう。ピンチをチャンスに変えるんだ』と言っていたそうです。最後は女王の国葬について『よかったなぁ』と、何度もひとりで呟いていたといいます。
翌日午前、出発前の打ち合せが終わったあと、国葬を担当している森昌文補佐官を呼びつけて、安倍元首相の国葬をエリザベス女王のそれに倣って『見栄えを重視するように』と指示を出したようです」(同前)
突然の指示に森補佐官は困惑し、すぐに木原誠二官房副長官と相談したという。もちろんこの“見栄え重視”発言のきっかけになったひとつは、エリザベス女王の国葬を見たことだろう。だがじつは、もうひとつ“きっかけ”があったという。
「じつは20日に、テレビ各局がどれくらい国葬を報道するかの報告がありました。NHKや民放各局が特番を組むことがわかったのです。
岸田首相はテレビに映ることが好きで、国葬の閉会中審査のときも、自らテレビカメラを入れることを表明しています。ただ、おそらく各社の報道でクローズアップされるのは、友人代表で追悼の辞を述べる菅義偉前首相です。
このことを、岸田首相がおもしろく思っていないことを周囲は理解しており、森補佐官や木原副長官は、岸田首相がより目立つような形で、ことを収めることにしたようです」(同前)
開催に反対する意見が過半数を占めるなか、国葬をなんとか支持率アップのきっかけにしたい――。そんな思いを込めてこの「ピンチをチャンスに」の発想が生まれたようだ。この関係者が、岸田首相の“本音”を解説する。
「岸田首相は、国葬は安倍元首相のためのものではなく、本人の晴れ舞台だと思っているようです。
国葬の開催は、岸田首相が麻生太郎副総理から背中を押されたためですが、世間的には首相が決断を下したことになっています。それゆえ、反対の声ばかりが高まるいまの状況が、我慢ならないのです」
エリザベス女王の国葬に学ぶことは、もっとほかにありそうだが――。