厚生労働省が「マスク着用は個人の判断」と“解禁”してはや1か月、日本でもようやくアフターコロナが本格化してきた。それでも街ゆく人にはマスク姿が多く、花見客にもマスク姿が目立ち、まだまだ様子見の日が続きそうだ。
【写真】自衛隊東京の接種会場の今 新型コロナウイルスのワクチン接種も依然として続く中、WHO(世界保健機関)が3月28日に新たな指針を発表した。 60才未満の健康な成人や基礎疾患のある子供については、1回までのブースター接種(追加接種)は推奨するが、2回目以降は《公衆衛生上の効果は比較的低い》として推奨しない。さらに、健康な子供や若者は感染時に重症化しにくいため《接種による公衆衛生上の効果は、はしかなどの従来の子供向けワクチンと比べ、はるかに低い》としたのだ。
日本では、大型連休明けの5月8日から基礎疾患のある人や65才以上の高齢者などを対象に今年度の定期接種がスタート。9月からは一般向けの定期接種が行われ、多い人は6回目の接種となる。「WHOは、高齢者などリスクが高い層には引き続き接種を推奨しています。健康な人に追加接種をするなと言っているわけではないが、定期的な接種はハイリスクな層に重点的に行う方がいいということでしょう。健康に不安がない人や子供にも積極的な接種を推進する日本政府は、ハシゴを外された格好です」(医療ジャーナリスト)国民全員が7回接種できる量を2兆円超で契約 日本ほどコロナワクチンを接種している国は世界にない。国民1人あたりの接種回数の国際比較を見ると、日本は平均3.09回で断トツに多い。コロナで多くの死者を出したアメリカが2.02回、欧州で最も接種回数が多いイタリアでも2.43回だ。 世界がアフターコロナに向かってワクチンと距離を取り始めているのに、日本政府が国民へのワクチン接種に熱心なのはある事情があるという。大手紙の社会部記者が言う。「政府は2.4兆円をかけて8.8億回分のワクチンを購入。国民全員に7回接種できる量です。しかし、現在までの総接種回数は約3.8億回にとどまり、ワクチンには有効期限があるので、すでに8000万回分近くが廃棄された。一部契約解除した分もあるが、年内を目処に接種しないと残りの大半を廃棄しなければならなくなる計算です。そういう状況なので、“過剰契約の在庫処分のために接種が推奨されているのではないか”といううがった見方まで出る始末です」 この「ワクチン買いすぎ問題」は会計検査院が詳細に調査し、3月29日に発表した報告書でこう問題視している。《今後、数量に不確定要素のある物質を確保する場合であっても、算定根拠資料を作成して保存し、数量の妥当性を客観的に検証できるようにすること》 8.8億回という契約回数分には納得できるような根拠はなく、なぜこのような数字に至ったのかちゃんと説明せよ、という指摘だ。要は、税金でテキトーに買ったのではないかという話なのだ。 これを受け、加藤勝信厚労相は「希望するすべての国民にワクチンをお届けできるよう、さまざまな可能性を視野に入れて確保を行った。そうした状況を考えれば(確保した量は)必要だった」との見解を示したが、実情はそうではない。 契約した8.8億回分のワクチンのうち、すでにアストラゼネカ製6225万回分をキャンセル、ノババックス製も1億4176億本分をキャンセルしており、そもそも過剰だったことが疑われ、到底「妥当」とはいえない。 さらに、キャンセルによる返金額も「契約上の守秘義務」を理由に明らかにしていない。会計検査院はそのことも、「同省に返金することになっている金額の妥当性を確認するよう努めること」と注文をつけたが、明らかにされるかどうか保証はない。ガラガラの会場に大量のスタッフで総額4兆円 いずれにせよ、国はまだ3億回分ほどのワクチンの在庫を抱えている計算で、このままでは国民の税金で購入したワクチンが大量に廃棄されることになりかねない。なぜ、政府は“無駄”なワクチンをこれほど買い込んだのか。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広医学博士がこう指摘する。「厚労省の判断ミスに尽きます。コロナの感染が広がった当初、製薬メーカーのファイザーが世界各地でワクチンの治験をする際に日本も候補地にあがっていたのに、厚労省が外国企業だからと安全面での条件などを設定したため治験地から外れました。治験を進めていた他国はワクチンをどんどん先に購入していったが、日本はいざファイザーから購入する際に改めて治験することになって契約が遅れた。 メーカーは供給契約が早い方から供給するため、契約が遅れた日本ができるだけ早くワクチンを調達するには、大量に購入して高い金額で買う必要があったのでしょう」 必要量を先に確保するワクチンは、状況が変われば当然不要になる可能性もある。上さんは「足りないとまずいと考えるか、余らせるのが悪いと考えるかの違い」としながらも、こう続ける。「会計検査院は『それ以上の説明がなかった』と厚労省の対応も問題視しています。同省にすれば、“出足が遅れたから契約量も増やして確保した”と言えば自分たちのミスを認めることになるため、黙っているのでしょう」(上さん・以下同) ワクチン接種をめぐる“無駄遣い”はそれだけではない。 国のワクチン購入費は1回分約2700円だが、それとは別に、医療機関に支払う接種費用が1回平均3700円かかっている。自衛隊や自治体、企業が設置した接種会場の人件費や設営も当然税金だ。接種会場には多くのスタッフを配置し、接種を受けるまでに何度も書類の確認を要した。「いったい何人のチェックが必要なのか」とため息をついた人も多いことだろう。 それらを含めてワクチン接種には昨年度までの2年間で総額4.2兆円の税金が使われた。「これも厚労省の完全な怠慢です。ワクチン接種が開始されたとき、国立病院などの医師たちに真っ先に接種させた一方で、一般人のために病院を接種会場にするような段取りはとらなかった。厚労省が全国の国立病院で大々的に接種に従事するよう通達を出せばよかったのに、それをしなかったわけです。 それで自治体などが大規模接種会場を設置して民間委託することになった。結果的に余分な費用がかかったのは、厚労省が動かなかったことが大きいと考えます」 廃棄や、不良在庫となった大量のワクチンと、過剰人員で人件費などがかさんだ大規模接種会場など、これまでに「ワクチンだけで少なくとも数千億規模、会場費など含めれば1兆円近くの税金が無駄になる可能性がある」(前出・社会部記者)との見方もある。 政府の尻拭いのために、後先考えず国民への同意もなく使用されたカネは、いずれ増税となって国民に請求書が回ってくるのは確実だ。※女性セブン2023年4月27日号
新型コロナウイルスのワクチン接種も依然として続く中、WHO(世界保健機関)が3月28日に新たな指針を発表した。
60才未満の健康な成人や基礎疾患のある子供については、1回までのブースター接種(追加接種)は推奨するが、2回目以降は《公衆衛生上の効果は比較的低い》として推奨しない。さらに、健康な子供や若者は感染時に重症化しにくいため《接種による公衆衛生上の効果は、はしかなどの従来の子供向けワクチンと比べ、はるかに低い》としたのだ。
日本では、大型連休明けの5月8日から基礎疾患のある人や65才以上の高齢者などを対象に今年度の定期接種がスタート。9月からは一般向けの定期接種が行われ、多い人は6回目の接種となる。
「WHOは、高齢者などリスクが高い層には引き続き接種を推奨しています。健康な人に追加接種をするなと言っているわけではないが、定期的な接種はハイリスクな層に重点的に行う方がいいということでしょう。健康に不安がない人や子供にも積極的な接種を推進する日本政府は、ハシゴを外された格好です」(医療ジャーナリスト)
日本ほどコロナワクチンを接種している国は世界にない。国民1人あたりの接種回数の国際比較を見ると、日本は平均3.09回で断トツに多い。コロナで多くの死者を出したアメリカが2.02回、欧州で最も接種回数が多いイタリアでも2.43回だ。
世界がアフターコロナに向かってワクチンと距離を取り始めているのに、日本政府が国民へのワクチン接種に熱心なのはある事情があるという。大手紙の社会部記者が言う。
「政府は2.4兆円をかけて8.8億回分のワクチンを購入。国民全員に7回接種できる量です。しかし、現在までの総接種回数は約3.8億回にとどまり、ワクチンには有効期限があるので、すでに8000万回分近くが廃棄された。一部契約解除した分もあるが、年内を目処に接種しないと残りの大半を廃棄しなければならなくなる計算です。そういう状況なので、“過剰契約の在庫処分のために接種が推奨されているのではないか”といううがった見方まで出る始末です」
この「ワクチン買いすぎ問題」は会計検査院が詳細に調査し、3月29日に発表した報告書でこう問題視している。
《今後、数量に不確定要素のある物質を確保する場合であっても、算定根拠資料を作成して保存し、数量の妥当性を客観的に検証できるようにすること》
8.8億回という契約回数分には納得できるような根拠はなく、なぜこのような数字に至ったのかちゃんと説明せよ、という指摘だ。要は、税金でテキトーに買ったのではないかという話なのだ。
これを受け、加藤勝信厚労相は「希望するすべての国民にワクチンをお届けできるよう、さまざまな可能性を視野に入れて確保を行った。そうした状況を考えれば(確保した量は)必要だった」との見解を示したが、実情はそうではない。
契約した8.8億回分のワクチンのうち、すでにアストラゼネカ製6225万回分をキャンセル、ノババックス製も1億4176億本分をキャンセルしており、そもそも過剰だったことが疑われ、到底「妥当」とはいえない。
さらに、キャンセルによる返金額も「契約上の守秘義務」を理由に明らかにしていない。会計検査院はそのことも、「同省に返金することになっている金額の妥当性を確認するよう努めること」と注文をつけたが、明らかにされるかどうか保証はない。
いずれにせよ、国はまだ3億回分ほどのワクチンの在庫を抱えている計算で、このままでは国民の税金で購入したワクチンが大量に廃棄されることになりかねない。なぜ、政府は“無駄”なワクチンをこれほど買い込んだのか。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広医学博士がこう指摘する。
「厚労省の判断ミスに尽きます。コロナの感染が広がった当初、製薬メーカーのファイザーが世界各地でワクチンの治験をする際に日本も候補地にあがっていたのに、厚労省が外国企業だからと安全面での条件などを設定したため治験地から外れました。治験を進めていた他国はワクチンをどんどん先に購入していったが、日本はいざファイザーから購入する際に改めて治験することになって契約が遅れた。
メーカーは供給契約が早い方から供給するため、契約が遅れた日本ができるだけ早くワクチンを調達するには、大量に購入して高い金額で買う必要があったのでしょう」
必要量を先に確保するワクチンは、状況が変われば当然不要になる可能性もある。上さんは「足りないとまずいと考えるか、余らせるのが悪いと考えるかの違い」としながらも、こう続ける。
「会計検査院は『それ以上の説明がなかった』と厚労省の対応も問題視しています。同省にすれば、“出足が遅れたから契約量も増やして確保した”と言えば自分たちのミスを認めることになるため、黙っているのでしょう」(上さん・以下同)
ワクチン接種をめぐる“無駄遣い”はそれだけではない。
国のワクチン購入費は1回分約2700円だが、それとは別に、医療機関に支払う接種費用が1回平均3700円かかっている。自衛隊や自治体、企業が設置した接種会場の人件費や設営も当然税金だ。接種会場には多くのスタッフを配置し、接種を受けるまでに何度も書類の確認を要した。「いったい何人のチェックが必要なのか」とため息をついた人も多いことだろう。
それらを含めてワクチン接種には昨年度までの2年間で総額4.2兆円の税金が使われた。
「これも厚労省の完全な怠慢です。ワクチン接種が開始されたとき、国立病院などの医師たちに真っ先に接種させた一方で、一般人のために病院を接種会場にするような段取りはとらなかった。厚労省が全国の国立病院で大々的に接種に従事するよう通達を出せばよかったのに、それをしなかったわけです。
それで自治体などが大規模接種会場を設置して民間委託することになった。結果的に余分な費用がかかったのは、厚労省が動かなかったことが大きいと考えます」
廃棄や、不良在庫となった大量のワクチンと、過剰人員で人件費などがかさんだ大規模接種会場など、これまでに「ワクチンだけで少なくとも数千億規模、会場費など含めれば1兆円近くの税金が無駄になる可能性がある」(前出・社会部記者)との見方もある。
政府の尻拭いのために、後先考えず国民への同意もなく使用されたカネは、いずれ増税となって国民に請求書が回ってくるのは確実だ。
※女性セブン2023年4月27日号