ニックネームは親しみを込めて… 名古屋でウーバーイーツの配達員をしている松怜音(あべまつ・れおん)さん28歳。 【写真を見る】15秒に1回声が出てしまう難病の男性 夢の店「あいよ!」に込めた思い “トゥレット症”のリアル 自分の意思に反して声や身体の動きが出てしまう“チック”という症状が極めて重い“トゥレット症”という難病と小学生の頃から闘っています。 突然、大声が出てしまう症状が現れるのはおよそ15秒に1回。
(怜音さん)「あいよ!」「あいよ!」という威勢のいい掛け声が出る事も多く、配達の仲間からは親しみを込めて、「魚屋さん」というニックネームももらっていますが…、街では周りの目が気になります。 居心地が良いのはにぎやかで騒がしい場所。反対に映画館やレストランなどの静かな場所や人ごみは苦手です。口癖は「ごめんなさい」。 (怜音さん)「『なんだお前!』と言ってくる人もいるので、その時はイヤホンで蓋して聴かないようにする」「目は伏し目がちで歩くように自分の中でしている」耳にイヤホンをして周囲の陰口を遮断していますが、それでも「陰口」が気になった時には、直接注意することもあります。 (怜音さん)「何?何? さっきから(症状の)真似をしているけど?」(若者)「俺らじゃないっす」(怜音さん)「俺らじゃないという人が真似している」「俺は声が出ちゃう病気」 (怜音さん)「わかるんですよ。チックのまねをしてくる人は。遠くから声を出してもわかるから」「説明したら理解者が一人でも増えるかなと思って、毎回言いに行くこともあるんですけど、正直しんどい時もある」 「映画館は行かないです」 映画を楽しむ時も自宅でタブレットの小さな画面を見ています。 (怜音さん)「映画館は行かないです」「(以前)映画を見終わった後に男性のお客さんに『誰かさんのせいで全然楽しめんかったわ』と言われて、うわ~めっちゃ悔しいって思いました。俺もわざとしているわけじゃないから」「その時にチックという病気が認知されていたらちょっと見る目が変わったんかなと」病気に対する差別意識は今も感じています。 今は、配達の仕事をしながらある“夢”の実現に向けて準備を進めています。 (怜音さん)「僕と同じチックの病気を持つ人は普通の店に行くのがつらい人も多いので、そういう人も足を運べるような“敷居の低い飲食店”が作れたら良いなと考えています」 “敷居の低い飲食店”とは… この日は店のオープンに向けた打ち合わせ。 (怜音さん)「すみません、あの僕チックという病気で声が出ちゃうんですけど、入ってもいいですか?」(バーのマスター)「いいですよ」初めて訪れる店や初対面の人には、事前に病気のことを伝えることもあります。(怜音さん)「お疲れ様!座ってよ」 店づくりを手伝ってくれるのは、配達員仲間の男性(29)です。「自由で壁のない店を作りたい」という怜音さんの想いに共感しています。 店のコンセプトと店名について、話し合います。(怜音さん)「オシャレな雰囲気にするとチックの人は来づらいのよね」「それよりは、わいわいしていて沖縄民謡が流れているとか。人の距離が近い店の方が絶対に楽しいと思うから」 (怜音さん)「店の名前、インパクトがあるのが良いよね。元気とか優しさを前面に押し出せる名前とか」 (怜音さん)「例えば、“あいよ”という名前を使うとかさ。“絶叫居酒屋”でもよいし」(配達員仲間の男性)「あいよは良いの?使っていいの?」(怜音さん)「全然いいよ」 店名は「絶叫居酒屋 あいよ!」に決定 思わず出てしまう声を、逆に売りにして店の名前を決めました。店内は沖縄民謡でにぎやかにして、トゥレット症の当事者が気兼ねなく楽しめる空間にする予定です。 (配達員仲間の男性)「彼の良さを前面に押し出して、みんなを助けたいとか、同じ病気を持つ人を手助けしたいみたいな、そういう希望を叶えて行けたら良いなと」 そして、配達の仕事を通じて知り合った名古屋市内の海鮮居酒屋へ。 この日は、エプロンを着てスタッフの見習いに。店で必要な「接客」と「調理」のノウハウを教えてもらうためです。 (大将)「(魚は)持ち上げた方がやりやすい」(怜音さん)「やっぱり(大将は)すごいな きれい。骨を比べたらわかる」 午後7時注文が入りました。怜音さんの出番です。(怜音さん)「お待たせしました。ぶりしゃぶになります。つみれをお作りしますが良いですか?」(若い男性客)「ありがとうございます。やっちゃってください」(怜音さん)「あいよ!」 (怜音さん)「病気で声が出ちゃうんですよ。これは、うつる病気じゃないんで」 オーダーや皿洗いも手際良くこなします。 店内が騒がしければ“目立たない” 怜音さんの接客についてお客さんは…(男性会社員)「気にしないで気にしないで」(怜音さん)「自分がこれ(病気)で不快な思いをさせていないかなって」(男性会社員)「何の問題もなし!」 にぎやかな店であれば、お客さんも症状が気になっていない様子。店づくりへの自信を深めたようです。(怜音さん)「店内が騒がしければチックのお客さんが来てもあまり目立たない」「テーブルの材質もチックの症状でバンバンとたたく子もいるから。普通よりもちょっと造りがしっかりしていた方が安心かもしれない」 (配達員仲間の男性)「その発想、自分にはないな!自分の思うことを形にすることで同じような病気の子も同じように感じているから。改善されて店の良い形にできるかな」資金調達や店の場所など、オープンに向けた課題はまだまだ山積みですが、前を向いて進むしかない…そんな思いが。(怜音さん)「居酒屋に入って、『静かにしてもらえますか?』と言われて。遊んでる時もくつろげないのって嫌だなって」 (怜音さん)「自由にここでは壁がありませんよって。そんな店がこの世に一つぐらいあっても、誰にも迷惑はかけないよねって。僕はそう思っています。あいよ!」 取材:CBCテレビ報道部 瀬 晴貴(26)2019年入社。大学時代は劇団の立ち上げやマリンスポーツなど様々なことにチャレンジ。週2回はウーバーイーツを注文。CBCテレビ公式YouTubeチャンネル『CBCドキュメンタリー』で「トゥレット症のリアル」を不定期配信中。
名古屋でウーバーイーツの配達員をしている松怜音(あべまつ・れおん)さん28歳。
【写真を見る】15秒に1回声が出てしまう難病の男性 夢の店「あいよ!」に込めた思い “トゥレット症”のリアル 自分の意思に反して声や身体の動きが出てしまう“チック”という症状が極めて重い“トゥレット症”という難病と小学生の頃から闘っています。 突然、大声が出てしまう症状が現れるのはおよそ15秒に1回。
(怜音さん)「あいよ!」「あいよ!」という威勢のいい掛け声が出る事も多く、配達の仲間からは親しみを込めて、「魚屋さん」というニックネームももらっていますが…、街では周りの目が気になります。 居心地が良いのはにぎやかで騒がしい場所。反対に映画館やレストランなどの静かな場所や人ごみは苦手です。口癖は「ごめんなさい」。 (怜音さん)「『なんだお前!』と言ってくる人もいるので、その時はイヤホンで蓋して聴かないようにする」「目は伏し目がちで歩くように自分の中でしている」耳にイヤホンをして周囲の陰口を遮断していますが、それでも「陰口」が気になった時には、直接注意することもあります。 (怜音さん)「何?何? さっきから(症状の)真似をしているけど?」(若者)「俺らじゃないっす」(怜音さん)「俺らじゃないという人が真似している」「俺は声が出ちゃう病気」 (怜音さん)「わかるんですよ。チックのまねをしてくる人は。遠くから声を出してもわかるから」「説明したら理解者が一人でも増えるかなと思って、毎回言いに行くこともあるんですけど、正直しんどい時もある」 「映画館は行かないです」 映画を楽しむ時も自宅でタブレットの小さな画面を見ています。 (怜音さん)「映画館は行かないです」「(以前)映画を見終わった後に男性のお客さんに『誰かさんのせいで全然楽しめんかったわ』と言われて、うわ~めっちゃ悔しいって思いました。俺もわざとしているわけじゃないから」「その時にチックという病気が認知されていたらちょっと見る目が変わったんかなと」病気に対する差別意識は今も感じています。 今は、配達の仕事をしながらある“夢”の実現に向けて準備を進めています。 (怜音さん)「僕と同じチックの病気を持つ人は普通の店に行くのがつらい人も多いので、そういう人も足を運べるような“敷居の低い飲食店”が作れたら良いなと考えています」 “敷居の低い飲食店”とは… この日は店のオープンに向けた打ち合わせ。 (怜音さん)「すみません、あの僕チックという病気で声が出ちゃうんですけど、入ってもいいですか?」(バーのマスター)「いいですよ」初めて訪れる店や初対面の人には、事前に病気のことを伝えることもあります。(怜音さん)「お疲れ様!座ってよ」 店づくりを手伝ってくれるのは、配達員仲間の男性(29)です。「自由で壁のない店を作りたい」という怜音さんの想いに共感しています。 店のコンセプトと店名について、話し合います。(怜音さん)「オシャレな雰囲気にするとチックの人は来づらいのよね」「それよりは、わいわいしていて沖縄民謡が流れているとか。人の距離が近い店の方が絶対に楽しいと思うから」 (怜音さん)「店の名前、インパクトがあるのが良いよね。元気とか優しさを前面に押し出せる名前とか」 (怜音さん)「例えば、“あいよ”という名前を使うとかさ。“絶叫居酒屋”でもよいし」(配達員仲間の男性)「あいよは良いの?使っていいの?」(怜音さん)「全然いいよ」 店名は「絶叫居酒屋 あいよ!」に決定 思わず出てしまう声を、逆に売りにして店の名前を決めました。店内は沖縄民謡でにぎやかにして、トゥレット症の当事者が気兼ねなく楽しめる空間にする予定です。 (配達員仲間の男性)「彼の良さを前面に押し出して、みんなを助けたいとか、同じ病気を持つ人を手助けしたいみたいな、そういう希望を叶えて行けたら良いなと」 そして、配達の仕事を通じて知り合った名古屋市内の海鮮居酒屋へ。 この日は、エプロンを着てスタッフの見習いに。店で必要な「接客」と「調理」のノウハウを教えてもらうためです。 (大将)「(魚は)持ち上げた方がやりやすい」(怜音さん)「やっぱり(大将は)すごいな きれい。骨を比べたらわかる」 午後7時注文が入りました。怜音さんの出番です。(怜音さん)「お待たせしました。ぶりしゃぶになります。つみれをお作りしますが良いですか?」(若い男性客)「ありがとうございます。やっちゃってください」(怜音さん)「あいよ!」 (怜音さん)「病気で声が出ちゃうんですよ。これは、うつる病気じゃないんで」 オーダーや皿洗いも手際良くこなします。 店内が騒がしければ“目立たない” 怜音さんの接客についてお客さんは…(男性会社員)「気にしないで気にしないで」(怜音さん)「自分がこれ(病気)で不快な思いをさせていないかなって」(男性会社員)「何の問題もなし!」 にぎやかな店であれば、お客さんも症状が気になっていない様子。店づくりへの自信を深めたようです。(怜音さん)「店内が騒がしければチックのお客さんが来てもあまり目立たない」「テーブルの材質もチックの症状でバンバンとたたく子もいるから。普通よりもちょっと造りがしっかりしていた方が安心かもしれない」 (配達員仲間の男性)「その発想、自分にはないな!自分の思うことを形にすることで同じような病気の子も同じように感じているから。改善されて店の良い形にできるかな」資金調達や店の場所など、オープンに向けた課題はまだまだ山積みですが、前を向いて進むしかない…そんな思いが。(怜音さん)「居酒屋に入って、『静かにしてもらえますか?』と言われて。遊んでる時もくつろげないのって嫌だなって」 (怜音さん)「自由にここでは壁がありませんよって。そんな店がこの世に一つぐらいあっても、誰にも迷惑はかけないよねって。僕はそう思っています。あいよ!」 取材:CBCテレビ報道部 瀬 晴貴(26)2019年入社。大学時代は劇団の立ち上げやマリンスポーツなど様々なことにチャレンジ。週2回はウーバーイーツを注文。CBCテレビ公式YouTubeチャンネル『CBCドキュメンタリー』で「トゥレット症のリアル」を不定期配信中。
自分の意思に反して声や身体の動きが出てしまう“チック”という症状が極めて重い“トゥレット症”という難病と小学生の頃から闘っています。
突然、大声が出てしまう症状が現れるのはおよそ15秒に1回。
(怜音さん)「あいよ!」
「あいよ!」という威勢のいい掛け声が出る事も多く、配達の仲間からは親しみを込めて、「魚屋さん」というニックネームももらっていますが…、街では周りの目が気になります。
居心地が良いのはにぎやかで騒がしい場所。
反対に映画館やレストランなどの静かな場所や人ごみは苦手です。
口癖は「ごめんなさい」。
(怜音さん)「『なんだお前!』と言ってくる人もいるので、その時はイヤホンで蓋して聴かないようにする」
「目は伏し目がちで歩くように自分の中でしている」
耳にイヤホンをして周囲の陰口を遮断していますが、それでも「陰口」が気になった時には、直接注意することもあります。
(怜音さん)「何?何? さっきから(症状の)真似をしているけど?」
(若者)「俺らじゃないっす」
(怜音さん)「俺らじゃないという人が真似している」「俺は声が出ちゃう病気」
(怜音さん)「わかるんですよ。チックのまねをしてくる人は。遠くから声を出してもわかるから」
「説明したら理解者が一人でも増えるかなと思って、毎回言いに行くこともあるんですけど、正直しんどい時もある」
映画を楽しむ時も自宅でタブレットの小さな画面を見ています。
(怜音さん)「映画館は行かないです」
「(以前)映画を見終わった後に男性のお客さんに『誰かさんのせいで全然楽しめんかったわ』と言われて、うわ~めっちゃ悔しいって思いました。俺もわざとしているわけじゃないから」
「その時にチックという病気が認知されていたらちょっと見る目が変わったんかなと」
病気に対する差別意識は今も感じています。
今は、配達の仕事をしながらある“夢”の実現に向けて準備を進めています。
(怜音さん)「僕と同じチックの病気を持つ人は普通の店に行くのがつらい人も多いので、そういう人も足を運べるような“敷居の低い飲食店”が作れたら良いなと考えています」
この日は店のオープンに向けた打ち合わせ。
(怜音さん)「すみません、あの僕チックという病気で声が出ちゃうんですけど、入ってもいいですか?」
(バーのマスター)「いいですよ」
初めて訪れる店や初対面の人には、事前に病気のことを伝えることもあります。
(怜音さん)「お疲れ様!座ってよ」
店づくりを手伝ってくれるのは、配達員仲間の男性(29)です。
「自由で壁のない店を作りたい」という怜音さんの想いに共感しています。
店のコンセプトと店名について、話し合います。
(怜音さん)「オシャレな雰囲気にするとチックの人は来づらいのよね」
「それよりは、わいわいしていて沖縄民謡が流れているとか。人の距離が近い店の方が絶対に楽しいと思うから」
(怜音さん)「店の名前、インパクトがあるのが良いよね。元気とか優しさを前面に押し出せる名前とか」
(怜音さん)「例えば、“あいよ”という名前を使うとかさ。“絶叫居酒屋”でもよいし」
(配達員仲間の男性)「あいよは良いの?使っていいの?」
(怜音さん)「全然いいよ」
思わず出てしまう声を、逆に売りにして店の名前を決めました。
店内は沖縄民謡でにぎやかにして、トゥレット症の当事者が気兼ねなく楽しめる空間にする予定です。
(配達員仲間の男性)「彼の良さを前面に押し出して、みんなを助けたいとか、同じ病気を持つ人を手助けしたいみたいな、そういう希望を叶えて行けたら良いなと」
そして、配達の仕事を通じて知り合った名古屋市内の海鮮居酒屋へ。
この日は、エプロンを着てスタッフの見習いに。
店で必要な「接客」と「調理」のノウハウを教えてもらうためです。
(大将)「(魚は)持ち上げた方がやりやすい」
(怜音さん)「やっぱり(大将は)すごいな きれい。骨を比べたらわかる」
午後7時注文が入りました。怜音さんの出番です。
(怜音さん)「お待たせしました。ぶりしゃぶになります。つみれをお作りしますが良いですか?」
(若い男性客)「ありがとうございます。やっちゃってください」
(怜音さん)「あいよ!」
(怜音さん)「病気で声が出ちゃうんですよ。これは、うつる病気じゃないんで」
オーダーや皿洗いも手際良くこなします。
怜音さんの接客についてお客さんは…
(男性会社員)「気にしないで気にしないで」
(怜音さん)「自分がこれ(病気)で不快な思いをさせていないかなって」
(男性会社員)「何の問題もなし!」
にぎやかな店であれば、お客さんも症状が気になっていない様子。店づくりへの自信を深めたようです。
(怜音さん)「店内が騒がしければチックのお客さんが来てもあまり目立たない」
「テーブルの材質もチックの症状でバンバンとたたく子もいるから。普通よりもちょっと造りがしっかりしていた方が安心かもしれない」
(配達員仲間の男性)「その発想、自分にはないな!自分の思うことを形にすることで同じような病気の子も同じように感じているから。改善されて店の良い形にできるかな」
資金調達や店の場所など、オープンに向けた課題はまだまだ山積みですが、前を向いて進むしかない…そんな思いが。
(怜音さん)「自由にここでは壁がありませんよって。そんな店がこの世に一つぐらいあっても、誰にも迷惑はかけないよねって。僕はそう思っています。あいよ!」
取材:CBCテレビ報道部 瀬 晴貴(26)2019年入社。大学時代は劇団の立ち上げやマリンスポーツなど様々なことにチャレンジ。週2回はウーバーイーツを注文。CBCテレビ公式YouTubeチャンネル『CBCドキュメンタリー』で「トゥレット症のリアル」を不定期配信中。