著名人への暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などの疑いで警視庁から逮捕状が出ていた元参院議員のガーシー(東谷義和)容疑者(51)が4日、UAE(アラブ首長国連邦)から帰国し、逮捕された。逮捕を逃れるために議員バッジも捨て、ドバイ永住プランを決断していたにもかかわらず、なぜ帰国に至ったのか。今後の捜査の行方とともにその背景事情を追った。
「日本に一生帰国しない覚悟ができた」。3月に参院議員を除名された翌日に警視庁から逮捕状が出たガーシー容疑者は、ゴールデンビザを取得しているドバイで骨をうずめると宣言していたハズだが一転、この日、帰国の途に就き、成田空港で逮捕となった。
実は先週末に政治家女子48党の立花孝志氏は、取材にガーシーが窮地に陥っていることを明かしていた。
「オンラインサロンで配信していないのも、ガーシーはUAEの警察当局に捕まることを恐れている(から)。言葉は通じない、食事の慣習も違うところで、日本の警察と違って何をされるか分からない怖さがあるみたい」
ガーシー容疑者は3月末に自身のオンラインサロン「ガシル」で暴露を一切やめ、ポジティブ系発信に切り替えると宣言。その後、警視庁からの要請に応える形で、TikTokやツイキャス、インスタグラムのアカウントが凍結され、ガシルもメンテナンスを理由に4月から更新が途絶えていた。
先月24日には、同容疑者とともにUAEに滞在する2人の日本人のユーチューブチャンネル「バツ2」に登場した際には、「僕が集団に配信するということはやっぱりできない」と現状を報告。その後、ガシル運営からも1対1の配信方法への切り替え方針が発表されていた。
立花氏は、あるルートから某国経由でUAE側にガーシーの身柄拘束を含めた政治的な外交圧力がかかっていたと主張する。
警視庁は帰国の経緯について「UAE当局が措置を講じた結果で、自主的な帰国ではない」と説明したが、詳細は「相手国との関係がある」として明らかにしていない。
糖尿病を患っている同容疑者は逮捕、勾留された際には「何をされるか分からない」と不安を吐露し、帰国をかたくなに拒否してきた経緯がある。警視庁を刺激しないようにSNS発信を控えていた中、UAE当局が手のひら返しする事態は想定していなかったとみられ、新たな恐怖に震えていたとみられる。
今後、焦点になるのはどれくらいの刑罰を科せられるかだ。ジュエリーデザイナーや俳優の綾野剛、ドワンゴ創業者の川上量生氏らへの暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)、名誉毀損、威力業務妨害、強要の疑いで逮捕状が出ており、最も重い罪は常習的脅迫(人を傷害していない場合)で3か月以上5年以下の懲役となる。
3月の時点でガーシー側は最悪の場合、懲役5年を見越していたが、同じタイミングで名誉毀損などで逮捕状が出て、4月に帰国・逮捕された側近の池田俊輔氏は処分保留で釈放され、既にドバイに戻っている。事実上、無罪放免になった点は好材料とみているはずだ。
実業家の堀江貴文氏はこの日、立花氏とのユーチューブ配信で「大した罪じゃない。認め方次第ですけど、認めりゃ保釈ですよ。普通に執行猶予付き事件」と実刑は免れると予想すれば、ガーシー容疑者と交流がある福永活也弁護士はユーチューブ配信で「勾留されたまま公判が維持されるんじゃないか。法定刑がそこまで重くないが、実刑の可能性がある」と、数か月に及ぶ勾留と執行猶予が付かずに、1年前後の実刑になる可能性を指摘した。
ただ、警視庁は別件での逮捕をうかがっているフシがあるとの見方もある。「捜査2課が動いて、ガーシーの実家へのガサ入れや動画の編集スタッフを逮捕したのも不正なカネの流れを追っていたからで、脱税などになってくると次元が違ってくる」(永田町関係者)
立花氏もガーシー容疑者のユーチューブなどの広告収入が日本の法人会社になっていた点から「名誉毀損は大したことはないけど、億単位の納税をしないといけないからどうするのか」と話し、コロナ禍で納付期限が延長されていることから昨年度分を至急、手続きする必要があると心配している。