こども家庭庁によりますと、2023年度、全国で心中以外の虐待によって死亡した0歳児は33人と2005年に調査を開始して以来3番目の多さでした。そのうち約半数は0歳0日での死亡。9割は病院にも行政にもつながっていない状況でした。“0歳0日死亡”を防ぐための課題と現状を取材しました。■2週間に1人の赤ちゃんが虐待死…0歳死亡は33人で過去3番目に多くこども家庭庁によりますと、2023年度、全国で心中以外の児童虐待で死亡した18歳未満のこどもは48人。そのうち約7割を占めるのが0歳児死亡で、その約半数は生まれてすぐの“0歳0日死亡”です。
また0歳0日死亡事例の母子の9割以上は、病院や行政などの関係機関とつながっていない状況で、一度も病院に行かずに出産をしたいわゆる“未受診妊婦”だったことが分かっています。■どうして未受診妊婦に…?ある病院の調査によりますと未受診妊婦だった理由として多かったのは「経済的理由」や「どうしたらよいのか分からなかった」というものでした。実際には、思いがけない妊娠などに悩む人の相談を受け、支援する民間団体などが複数あります。各地には「にんしんSOS」というLINEや電話などによる相談支援窓口があるほか、産前から産後までサポートを無料でうけることができる「認定NPO法人ピッコラーレ」や「公益社団法人小さないのちのドア」、無料で出産できる「無料産院」の取り組みを行う「認定NPO法人フローレンス」などです。フローレンスは、「(支援団体に)つながってくれさえすれば、必ずご自身も赤ちゃんもなんとかすることができる」と呼びかけていますが、支援につながれない人がいる現状があるといいます。■「お腹が痛い」切迫した相談も支援につながることと赤ちゃんの遺棄は紙一重…実際にフローレンスとともに「無料産院」の取り組みを行い、様々な悩みを抱えた妊婦を受け入れてきた第二足立病院(京都府)の永井利枝看護師長は、赤ちゃんの遺棄など0日での虐待死と、相談や関係機関につながることは紙一重だといいます。「お腹が痛い」と切迫した状況のメールが女性から届いたときには。「(相談のやりとりを重ねている間にも)だんだんお腹が痛くなっていっていることが本人のメールからも伝わってきて、電話で救急車を呼びなさいと言ったら、実は携帯料金を滞納していてWi-Fiがあるところでメールぐらいしかできないんだと。電話の手段まで途切れていて、じゃあこっちから救急車呼ぶよって」しかし、救急車が到着したときその場所に女性はいなかったといいます。「(救急隊から)その部屋にいない」と。本人はもうその時非常に動揺していたと思うんですけど、ちょっと出た道のところで倒れている妊婦さんがいるという通報の情報が入ってきた。結局その人がメールをしてきてくれた女性で、そこから救急搬送されて、その日のうちに(こどもが)生まれたということがあった」「そのままどこかで産んじゃったらそれは本当に遺棄につながったかもしれない。救急車を呼んでくれる人がいたり、この子は何とか病院で産みましたけど、本当にもう紙一重だと思う」ほかにも。「お腹が大きい人が受付にきてるというから行ったら、本当にお腹が大きくてお腹も痛いと。お腹が痛いって陣痛じゃないかってすぐ診察してもらったら赤ちゃんがもうだいぶ降りてきていると分かった」「話を聞いたら、自分の借金があって働いていたけれども転居してきたばかり。だから住んでいるところに知り合いもいないし、一人ぼっちだと。じゃあ親はって言うと、親とはもう長いこと縁をたっているから相談できないと」「本当によく(病院に)来てくれたと思うんです。病院などに繋がって救われたけど、遺棄の可能性があったケースはいっぱいあるんじゃないかなって思ってしまいます」NPO法人フローレンスの石原綾乃さんも。「本当に紙一重。相談してくれたから翌日病院で産めたけど、普通に産み落としているなと思う人がたくさんいる。それを考えると、赤ちゃんを遺棄しようって、はじめからそう思って自宅で出産する人は多分いない。産んだ瞬間にパニックになってどうしていいか分からない、その結果として赤ちゃんが亡くなってしまってという、それが多分ほとんど事実だろうなと思う」■「こんな相談は迷惑なんじゃないか…」相談へのハードル相談につながれない理由を永井師長は、こう分析します。「自分がよくないことをしている、こんな妊娠もして受診もしないで、ちゃんとできていないみたいなこととか。相手の男性もどこかに去ってしまったりとか、結局自分1人になってしまっている方もいるので、やっぱり自己肯定感が低くて自分ってやっぱりダメだなとか、人に迷惑かけているなという思いがある方が比較的多い。だから、私のことなんて、とかこんな相談は迷惑じゃないのかとか言うような言葉が出てくる方がいると思う」その背景にはSNSなどの影響も。「SNSとか見ても、そんな女どうしようもない女だなとか、そういう言葉をSNSで見てしまう。(その結果)なかなかその前に進めなかったというようなことを、産んだ後に教えてくれた方もいる」「いろんなことで言えない状態っていうのがあって、言えないまま苦しんでだんだん週数が進むほどもっともっと言いづらくなってくる、たくさんそういう人がいるのではないかなと」またフローレンスの石原さんは以下のようなことも課題になっているといいます。「妊娠に悩んでいる時にどこに相談に行っていいかわからない、妊娠に関して育てられないとかお金がないとか、いくつかその主訴があると思うんですけれども、それをはじめから自分で理解して、それだったらこの窓口に行ったらいいというふうに思える人はほとんどいないと思っています」■相談にしっかりとつながれる仕組みをこども家庭庁は、「相談窓口が検索されている可能性があるものの、相談サイトにたどり着くことができずに相談を諦めてしまった人がいる可能性がある」と分析し、予期しない妊娠をした人が確実に相談窓口につながるために各地の相談窓口を一元的に整理した情報サイトを今年度中に立ち上げるなどの取り組みを行うとしています。第二足立病院 永井看護師長「いろんな相談窓口などもあるからそういうところでもいいし、まず受診をしてほしい。けっしてその場所はあなたを否定したりしないし、ちゃんと受け入れてくれる場所があるので怖がらないでほしい」女性の人生もお腹にいる赤ちゃんの人生も守るために、妊娠に悩む女性が安心して相談できる体制整備とその情報を女性たちに届けることがのぞまれます。
こども家庭庁によりますと、2023年度、全国で心中以外の虐待によって死亡した0歳児は33人と2005年に調査を開始して以来3番目の多さでした。そのうち約半数は0歳0日での死亡。9割は病院にも行政にもつながっていない状況でした。“0歳0日死亡”を防ぐための課題と現状を取材しました。
こども家庭庁によりますと、2023年度、全国で心中以外の児童虐待で死亡した18歳未満のこどもは48人。そのうち約7割を占めるのが0歳児死亡で、その約半数は生まれてすぐの“0歳0日死亡”です。
また0歳0日死亡事例の母子の9割以上は、病院や行政などの関係機関とつながっていない状況で、一度も病院に行かずに出産をしたいわゆる“未受診妊婦”だったことが分かっています。
ある病院の調査によりますと未受診妊婦だった理由として多かったのは「経済的理由」や「どうしたらよいのか分からなかった」というものでした。
実際には、思いがけない妊娠などに悩む人の相談を受け、支援する民間団体などが複数あります。各地には「にんしんSOS」というLINEや電話などによる相談支援窓口があるほか、産前から産後までサポートを無料でうけることができる「認定NPO法人ピッコラーレ」や「公益社団法人小さないのちのドア」、無料で出産できる「無料産院」の取り組みを行う「認定NPO法人フローレンス」などです。フローレンスは、「(支援団体に)つながってくれさえすれば、必ずご自身も赤ちゃんもなんとかすることができる」と呼びかけていますが、支援につながれない人がいる現状があるといいます。
実際にフローレンスとともに「無料産院」の取り組みを行い、様々な悩みを抱えた妊婦を受け入れてきた第二足立病院(京都府)の永井利枝看護師長は、赤ちゃんの遺棄など0日での虐待死と、相談や関係機関につながることは紙一重だといいます。
「お腹が痛い」と切迫した状況のメールが女性から届いたときには。
「(相談のやりとりを重ねている間にも)だんだんお腹が痛くなっていっていることが本人のメールからも伝わってきて、電話で救急車を呼びなさいと言ったら、実は携帯料金を滞納していてWi-Fiがあるところでメールぐらいしかできないんだと。電話の手段まで途切れていて、じゃあこっちから救急車呼ぶよって」
しかし、救急車が到着したときその場所に女性はいなかったといいます。
「(救急隊から)その部屋にいない」と。本人はもうその時非常に動揺していたと思うんですけど、ちょっと出た道のところで倒れている妊婦さんがいるという通報の情報が入ってきた。結局その人がメールをしてきてくれた女性で、そこから救急搬送されて、その日のうちに(こどもが)生まれたということがあった」
「そのままどこかで産んじゃったらそれは本当に遺棄につながったかもしれない。救急車を呼んでくれる人がいたり、この子は何とか病院で産みましたけど、本当にもう紙一重だと思う」
ほかにも。
「お腹が大きい人が受付にきてるというから行ったら、本当にお腹が大きくてお腹も痛いと。お腹が痛いって陣痛じゃないかってすぐ診察してもらったら赤ちゃんがもうだいぶ降りてきていると分かった」「話を聞いたら、自分の借金があって働いていたけれども転居してきたばかり。だから住んでいるところに知り合いもいないし、一人ぼっちだと。じゃあ親はって言うと、親とはもう長いこと縁をたっているから相談できないと」「本当によく(病院に)来てくれたと思うんです。病院などに繋がって救われたけど、遺棄の可能性があったケースはいっぱいあるんじゃないかなって思ってしまいます」
NPO法人フローレンスの石原綾乃さんも。
「本当に紙一重。相談してくれたから翌日病院で産めたけど、普通に産み落としているなと思う人がたくさんいる。それを考えると、赤ちゃんを遺棄しようって、はじめからそう思って自宅で出産する人は多分いない。産んだ瞬間にパニックになってどうしていいか分からない、その結果として赤ちゃんが亡くなってしまってという、それが多分ほとんど事実だろうなと思う」
相談につながれない理由を永井師長は、こう分析します。
「自分がよくないことをしている、こんな妊娠もして受診もしないで、ちゃんとできていないみたいなこととか。相手の男性もどこかに去ってしまったりとか、結局自分1人になってしまっている方もいるので、やっぱり自己肯定感が低くて自分ってやっぱりダメだなとか、人に迷惑かけているなという思いがある方が比較的多い。だから、私のことなんて、とかこんな相談は迷惑じゃないのかとか言うような言葉が出てくる方がいると思う」
その背景にはSNSなどの影響も。「SNSとか見ても、そんな女どうしようもない女だなとか、そういう言葉をSNSで見てしまう。(その結果)なかなかその前に進めなかったというようなことを、産んだ後に教えてくれた方もいる」「いろんなことで言えない状態っていうのがあって、言えないまま苦しんでだんだん週数が進むほどもっともっと言いづらくなってくる、たくさんそういう人がいるのではないかなと」
またフローレンスの石原さんは以下のようなことも課題になっているといいます。
「妊娠に悩んでいる時にどこに相談に行っていいかわからない、妊娠に関して育てられないとかお金がないとか、いくつかその主訴があると思うんですけれども、それをはじめから自分で理解して、それだったらこの窓口に行ったらいいというふうに思える人はほとんどいないと思っています」
こども家庭庁は、「相談窓口が検索されている可能性があるものの、相談サイトにたどり着くことができずに相談を諦めてしまった人がいる可能性がある」と分析し、予期しない妊娠をした人が確実に相談窓口につながるために各地の相談窓口を一元的に整理した情報サイトを今年度中に立ち上げるなどの取り組みを行うとしています。
第二足立病院 永井看護師長「いろんな相談窓口などもあるからそういうところでもいいし、まず受診をしてほしい。けっしてその場所はあなたを否定したりしないし、ちゃんと受け入れてくれる場所があるので怖がらないでほしい」