1月10日(金)午後3時40分ごろ、法政大学多摩キャンパスに通う学生Aさんは、講義中にふと、後方から「ゴンッ」という鈍い音を耳にする。

思わず振り返ると、そこには丸メガネをかけた無表情の女性が立っている。Aさんは思わず声が出そうになった。その女性がトンカチを持っていて、彼女の近くに座る学生の後頭部からは数滴の血が滴っていたからだ。

それから、女性は表情一つ変えずに周囲の学生を次々と襲っていく。華奢な体型だが、トンカチを大きく振り下ろして、男女関係なく腹や後頭部などを立て続けに殴っていった。

教室内は騒然となり、生徒たちは悲鳴をあげる。身の危険を感じたAさんは、ただ教室から逃げるしかなかったーー。
1月10日、傷害容疑で現行犯逮捕されたのは、自称・法政大学社会学部2年のユ・ジュヒョン容疑者(22歳)。被害にあったのは19~22歳の社会学部の学生8人で、頭や腕に怪我をして構内の診療所で処置を受けた。同日夜までに全員が退院したという。
「ユ容疑者は、同大学の教室内で突然ハンマーを振り回して8人を負傷させた疑いをもたれている。事件発生直後には20台以上の警察や救急車両が駆け付けて、一時キャンパス内は騒然とした。警察の取り調べに対して『仲間グループに無視されて鬱憤がたまっていた。大学にあったハンマーで殴った』などと供述しており、詳しいいきさつを調べている」(全国紙社会部記者)
現場となった法政大学多摩キャンパスは、経済学部や社会学部のほか、スポーツ系の学部もあり学生およそ9000人が通う。
事件が起きたのは主に社会学部が授業に使う5号館の教室内で、100人ほどが授業を受けていたという。現場に居合わせた法政大生のBさんは、当時の状況を振り返りこう声を震わせた。
「『日本経済論』の講義が始まって、10分くらい経ったころの出来事でした。いきなり『ゴンッ』という鈍い音が、教室の後方から聞こえたんです。それで『なんだろう?』と思って振り返ると、そこにはトンカチを持った華奢な女性が無表情で立っていたんです。
その近くに座っていた学生は後頭部を抑えていて、机には2、3滴の血が落ちていたのですが、瞬時に状況が理解できませんでした。トンカチで殴られた学生も『え?』みたいな感じで痛がりながらも驚いている様子でしたし……」
その後も、ユ容疑者の凶行は止まらなかった。手に持ったトンカチを勢いよく振り下ろしていき、男女関係なく学生たちを立て続けに殴打。後頭部を殴られた人のなかには、前出の学生のように頭から血を流している者もおり、教室内は騒然としたという。
「女性はトンカチを持ったまま教室の前方に向かって歩いていきましたが、途中でトンカチがすっぽ抜けてしまい、無表情のまま『アアッ!』とうなり声を上げていました。さらに、置いてあった誰かのスマートフォンを床に叩きつけたりもする始末。女性が落ち着いてきたところで教授が近づいてきて、なにか話しかけたのち、2人は並んで教室を出ていきました」(Bさん)
一連の行動について、Bさんは「報道では『仲間グループに無視されて鬱憤がたまっていた』とか話しているそうですが、僕が見る限りでは、ただ彼女は目に入った人を襲うという感じで無差別的な犯行にしか見えませんでした」と語る。
また、冒頭で証言してくれた法政大生のAさんも、彼女の行動については「狂気じみていた」と振り返る。
「自分は身の危険を感じて一足早く教室の外に避難していたのですが、しばらく経つと、先ほどまでトンカチを振り回していた女性が、落ち着いた様子で教授と2人で出てきたんです。
ちょうどそのころ、大学の職員や警備員が『大丈夫ですか!?』と慌てた様子で駆けつけたんですけど、それに対して彼女は『こんにちはー!大丈夫!』と笑顔で手を振ってたんですよ。
その後すぐに警備員に連れていかれましたが、あれだけ色んな人を傷つけておいて、まるで開き直った態度を取る女性に対して不気味さを感じたというか、恐ろしい人間だとは思いましたね」
法政大学は同日、公式サイトを通じてコメントを発表。「本学といたしましては、被害に遭われた方々や、今回のことで不安を感じておられる学生や教職員のケアに取り組むとともに、警察の捜査に協力し、事態の把握に努め、キャンパスの安全を図ってまいります」とつづった。
いったいなぜ、ユ容疑者はこのような凶行に及んだのか。捜査の進展が待たれる。
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