【全2回(前編/後編)の前編】
フジテレビ問題の悪しき体質は、系列局にも伝播していた――。“名古屋の日枝久(ひえだひさし)”と呼ばれる東海テレビ会長が、女子アナをスポンサーとの会食に接待要員として駆り出し、ある飲み会の席では女性従業員に自ら「キスしてよ」と迫っていたというのだ。
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【写真を見る】「20代の既婚女性に無理やりキスさせ…」 小島会長の「セクハラ飲み会」の証拠写真 妊娠中の女性のおなかに頬を寄せ、“俺の子か?”と聞いたシーンも
「フジテレビを巡る問題は終息したと思われているかもしれませんが、いまも火種は残ったままです。すでにフジと系列の在阪準キー局・関西テレビのトップは辞任しましたが、もう一人、“あの人は無傷で済むのか?”と名指しされている人物がいるのです」(フジテレビ局員)
元タレントの中居正広氏(53)による性加害騒動を受け、今年1月にフジテレビの嘉納修治会長(75)と港浩一社長(73)が、4月には元フジ専務で関西テレビの大多亮(とおる)社長(67)が相次いで辞任した。
「被害女性を退職に追いやったフジのコンプライアンスや人権意識の低さが問題視されました。そんなフジ的体質をいまも受け継ぐ系列トップとして、グループ社員の間では“小島さん”の名前がこれまで幾度となく挙がっていました」(同)
フジ系列の準キー局「東海テレビ放送」(本社・愛知県名古屋市)会長の小島浩資(ひろし)氏(66)のことだという。
その小島会長について、東海テレビ関係者がこう語る。
「1981年に入社以降、記者や番組制作を経験することなく、主に営業畑を歩んでトップに上り詰めた異色のキャリアの持ち主です。2019年に社長に就くと、民放連の副会長や、契約局が加盟する放送協議会会長などに就任し、業界内での地位を確立。今年6月に会長へ退いた後も、林泰敬現社長(62)の頭越しに、人事権の一部を掌握しているといわれます。そのワンマンぶりから、社内では“名古屋の日枝久”や“ミニ日枝”と呼ばれています」
約40年にわたってフジテレビに君臨した“ドン”日枝久元取締役相談役(87)は93年から32年間、東海テレビの社外取締役を務めたが、
「小島さんも22年から今年6月まで、フジテレビの取締役に就いていました。東海テレビ株の3%超をフジ・メディア・ホールディングスが持つなど、もともと両社の関係は深い。日枝さんが名古屋に来た際には、小島さんが接待役を買って出ることも珍しくなく、県内の財界人御用達のクラブなどで歓待していました。また日頃から“日枝さんはすごい人だ”と公言してはばからなかった」(前出の東海テレビ関係者)
フジテレビの歪(いびつ)な企業風土を醸成したものとして「日枝氏の長期支配」が指摘される中、小島会長はドンへの尊敬の念を隠そうとしなかったという。
フジ問題では、女性アナウンサーを接待に動員していた実態も明らかになり、系列局へと飛び火。今年1月、東海テレビは自局アナウンサーを対象にハラスメント調査を実施した。
その結果、「上司の指示でアナウンサーが会合に出席する」といった事案はなかったと公表したが、同社OBによれば、
「得意先の要望には何でも応えることから、小島さんは“営業マンの鑑(かがみ)”とも評されていました。そんな彼だから、社長就任以降も自ら音頭を取って、取引先などとの会食を年に数回、開いていた。ただし、中には“不適切だ”と指摘されたものもありました」
その一つが22年春に開かれた会食だという。
「東海テレビのスポンサーの一つに、自動車関連企業のA社があります。同社は毎年、名古屋で行われるスポーツ大会のスポンサーも務め、大会は東海テレビで放送される人気コンテンツの一つとなっている。そのA社トップが女子アナBのファンだと、小島さんの耳に入ったことがすべての始まりでした」(前出の東海テレビOB)
Bアナは年配者を中心に根強い人気を誇り、同局の看板アナの一人に数えられる。
後日、小島会長の号令下、「女性社員の交流」を名目とする東海テレビとA社の飲み会がセッティングされた。
「両社から複数の女性社員が参加しましたが、本来なら局側からは広告やスポーツ事業を担当する女性社員が顔を出せば済む話。しかし小島さんが声をかけ、Bも参加することになった。この会を機にA社トップと彼女は連絡先を交換することになり、以降、“いまから飲みに行こう”などと誘いの連絡が来るようになったといいます。しばらくしてから、“最近、よく誘われるんだよね”と困った様子でこぼす彼女の姿が目にされました」(同)
Bアナの携帯に電話し、詳細を尋ねようとしたが、「お答えしかねます。会社に連絡された方がいいと思います」
そう言って電話は切られた。
当時、終業後に社内の女性を連れて飲みに出かける小島会長の姿が頻繁に目撃されてもいた。
「22年前後のことです。平日の18時過ぎから、小島氏は派遣社員の女性2名らを連れて、名古屋市内の飲食店で私的な懇親会を開きました」
こう話すのは、その会に出席した関係者である。派遣社員の女性二人はどちらも既婚者で、年齢はそれぞれ20代と30代。
「1次会の後、近くのカラオケボックスに移って2次会が始まりました。酔いも手伝ってか、小島氏は終始、上機嫌だった。ところが会が中盤に差しかかった頃、彼が突然、20代の女性に“キスしてよ”と迫り、自らの頬にチューさせたのです。さらに妊娠中だった30代女性のおなかに頬を寄せ、“俺の子か?”と喜々とした表情で軽口までたたきました」(同)
小島会長はその後も、彼女たちに抱きつくなど大ハッスル。すっかりご満悦の様子で帰路に就いたという。
「女性たちもその場では小島氏のノリに合わせ、嫌がる素振りは見せていませんでした。けれど、たとえ不愉快に感じていたとしても、派遣先の社長(当時)から強いられれば、立場上“やめてください”なんて言えるはずがない。東海テレビは公共の電波を扱う報道機関でもあるはず。そのトップが見せた恥知らずな振る舞いにはあぜんとさせられました」(同)
ちなみに同社は昨年、全社員および協力会社スタッフを対象にアンケート調査を実施し、フジテレビ事案に相当するようなハラスメント行為はなかったと結論付けていた。
さらに、小島会長の資質を疑う行状は他にもあるという。
後編【「奥さんとは別の元フジ社員と同居」 “セクハラ飲み会”の東海テレビ会長にさらなるスキャンダルが発覚 直撃に本人は「答えな~い」】では、小島会長が妻ではない女性と同居している問題について報じる。
「週刊新潮」2025年11月20日号 掲載