IT大手「MIXI(ミクシィ)」(東証プライム上場、東京)の完全子会社の元社長ら2人が在任中、複数の取引先から総額10億円超を受け取っていた問題があり、このうち約8億円について、同社が東京国税局から所得隠しを指摘されていたことが関係者の話でわかった。
同国税局は重加算税を含む法人税約2億円を追徴課税し、同社は修正申告と納付を済ませたという。(加藤哲大、貞広慎太朗)
元社長らへの資金は会社の収入として計上すべきだったにもかかわらず、法人所得から除外したと判断された。ミクシィは「会社や株主の利益を図る立場にありながら元社長らは個人に利益を帰属させており、重大な問題だ」との見解を示し、取材に「修正申告について深くおわびする。今後は再発防止策を実行する」としている。企業トップらによる不適切な資金受領で、法人の所得隠しが認定されるのは異例だ。
所得隠しを指摘されたのは「チャリ・ロト」(東京)で、競輪を主催する自治体から委託を受けて車券をインターネットで販売するほか、競輪場の運営や施設管理なども行っている。2006年12月に前身の会社が設立され、19年2月にミクシィの完全子会社となった。
関係者の話などによると、チャリ・ロトは競輪場運営や映像配信に関する業務などを複数の事業者に発注し、報酬を支払っていたが、10社以上の取引先から18年2月~24年10月、代表取締役社長(解任)だった上田博雄氏(55)側に計約3億5000万円、元営業本部長(懲戒解雇)側に計約6億6000万円が渡っていた。上田氏のほか、上田氏の妻が実質経営する法人や、元営業本部長が代表を務める法人などに分散して送金されていたという。
同国税局が税務調査したところ、上田氏らに支払われた資金には商品やサービスの提供に対する代金といった対価性がなかったことが判明。取引先からチャリ・ロト側への事実上の「リベート」だったとみられ、同国税局は、個人の所得ではなく、チャリ・ロトの事業によって得られた営業外の収益として同社の「雑収入」に計上すべきだと判断した。
その上で、上田氏らが手元で管理することで、結果として同社の収入を隠していたとして、重加算税の対象となる悪質な仮装・隠蔽(いんぺい)があったと認定し、調査対象期間(24年3月期までの約6年間)にやり取りされた計約8億円について所得隠しを指摘したとみられる。
民間の信用調査会社によると、チャリ・ロトの24年3月期の売上高は約174億円。ミクシィは24年10月30日、不適切な資金のやり取りがあったと公表し、上田氏は同日付で社長を解任された。同年12月26日には同社が内部調査報告書を公開するとともに、元営業本部長を懲戒解雇した。
ミクシィによると、上田氏と元営業本部長は調査に資金の受領は認めたという。ただ、使途について同社は取材に「不明」とし、「弁護士に相談して法的な対応は進めている」と回答した。
上田氏は商社での勤務をへて07年2月、チャリ・ロトの前身の会社に入社し、同年12月に社長に就任した。今年4月の取材に「対応できない」と話した。読売新聞は9月、資金受領の経緯や使途などについて書面で改めて質問したが返答はなかった。