世を翻弄してきた“トリックスター”が、ついにお縄となった。政治団体「NHKから国民を守る党」の党首、立花孝志容疑者(58)である。逮捕容疑は、今年1月に50歳で自死した元兵庫県議、竹内英明氏への名誉毀損。いよいよ年貢の納め時となるか。
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【実際の写真】おびえるように顔がこわばり…襲撃された「立花孝志氏」が見せた“素の表情”
報道関係者は11月9日、まさかの日曜日の逮捕に朝から慌てふためいた。
「どこの報道機関も、兵庫県警の発表を受けて速報を出しました。先駆けて報じたところはありません。亡くなった人物に対する名誉毀損容疑での立件は異例で、身柄も取っている。当局の並々ならぬやる気を感じました」(社会部記者)
立花容疑者は生前の竹内氏について2024年12月、街頭演説で「警察の取り調べを受けているのは多分間違いない」などと発言。竹内氏が自死した25年1月18日の翌日から翌々日にかけても「逮捕される予定だった」などと、SNSや応援演説で述べた。
これらに関して1月20日、兵庫県警本部長は“事実無根”と全否定。そしてついに、虚偽を広め、竹内氏の名誉を傷つけたとして逮捕に踏み切った。
「振り返れば、出発点は立花容疑者の“2馬力選挙”でした。彼は昨秋の兵庫県知事選に立候補するも、不信任決議からの再選を目指していた斎藤元彦知事(48)を応援。SNSを駆使し、斎藤知事の疑惑告発文書問題をでっち上げた“黒幕”だと、竹内氏を批判し始めたのです」(前出の記者)
立花容疑者の主張は根拠が極めて不明確な点が多かったものの、ネット民は飛びついた。結果、竹内氏に対して誹謗中傷が相次ぎ、斎藤知事の再選直後、県議の職を自ら辞したのである。
「最後に竹内さんと会った時、思い詰めた表情で“ごめんなさい……”と言っていました。本来は必要のない自責の念に、苦しんでいたのだと思います」
とは、ある兵庫県議。
「立花容疑者が、大手を振って歩いていることが悔しかったけれど、やっと逮捕され、ホッとしました。もっとも、いまだ兵庫県は問題が山積みです。斎藤知事には、再選した過程での公職選挙法違反や、疑惑告発文書問題の端緒となった私的情報漏えいなどの疑いがあり、いずれの件でも告発されている。今は事態が一つ前に進んだに過ぎません」
立花容疑者は、逃げ切れるのか。
「実刑判決を受ける可能性が高いと考えられます」
と、見解を述べるのは、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士だ。
「立花容疑者は裁判で、自身の発信は虚偽だったが、真実だと信じる根拠“真実相当性”があったと無罪を主張するでしょう。ある人から聞き、本当だと思ったんだと。しかし、当局からすれば立花容疑者の発信は、自分たちの捜査に関する虚偽ばかり。“誰にもそんな話はしていません”などと、証拠と共に打ち返すことが可能だと思います」
立花容疑者は、竹内氏の生前と自死後の2件で、名誉毀損に問われている。さらには2年前、元党員への脅迫罪などで執行猶予判決を受けた前科があり、量刑は重くなると予測される。若狭氏によれば、
「判決の際、二つの事件をまとめて併合罪加重を適用し、量刑を1.5倍にできるからです。立花容疑者は執行猶予中なので、今回は原則的には実刑判決。名誉毀損罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金ですが、可能な限り厳しく罰せられるはず。短くとも2年以上の実刑になるでしょう」
ちなみに立花容疑者は、静岡県の伊東市長選への立候補を公言していた。告示は12月7日で保釈期間中となる公算が大きく、法律上は出馬が可能である。
事件の余波は思わぬところにも。自民党が10月15日、NHK党の副党首で唯一の国会議員、齊藤健一郎氏(44)と参院で統一会派を組んだことが、改めて批判されているのだ。
「先月の時点では自民党総裁選が終わったばかりで、多数派を形成するべく、なりふり構っていられなかったのでしょう。当の高市早苗首相(64)は11月10日、国会で“無所属の齊藤健一郎議員と統一会派を組んでいる”と答弁。あくまで会派名は『自由民主党・無所属の会』だと、無理筋な言い訳を述べました。翌日、齊藤氏は会派離脱を申し出たが、後の祭りですね」(政治部記者)
立花容疑者がまいたトラブルの種は数知れず。
「週刊新潮」2025年11月20日号 掲載