この時期として過去10年で最多の患者数になるなど、猛威をふるうインフルエンザ。医師は警鐘を鳴らしています。
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南波雅俊キャスター:栃木県の「インターパーク倉持呼吸器内科」では、12月30日から1月3日までの5日間でインフルエンザ患者数は648人になったということです。年末年始では異例の数の患者が殺到し、1日に病院に訪れた人の数も例年の3~4倍に増えたそうです。年齢層は子どもから高齢者まで幅広く、倉持仁院長によりますと「市中感染の可能性が高い」といいます。
また倉持院長は「患者のほとんどがインフルエンザのA型。今後家庭内感染が増え、患者がさらに急増する可能性もある」ということです。
東京・北区のいとう王子神谷内科外科クリニックでは元日に36人が受診し、22人がインフルエンザ陽性だったということで、陽性の割合が非常に高かったそうです。
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長によりますと「インフルエンザA型のピークアウトを待たずしてB型がでてきてしまったので、両方の型に同時感染する可能性もある」といいます。
大変まれなのですが、A型、B型に同時感染することもあり、その場合症状が重くなりやすいそうです。また、既にA型に感染しているのでB型は大丈夫と思ってはいけません。型が違うので感染するおそれがあります。注意をしてください。
国立感染症研究所(1月7日作成)によりますと、現在のインフルエンザウイルスの割合はA型約98%、B型約2%という状況で、流行時期はA型12~1月、B型は1~2月にかけて流行するということです。
国際医療福祉大学松本哲哉主任教授によりますと、A型、B型で共通する主な症状は▼熱(38度以上)▼鼻水▼倦怠感▼筋肉痛▼せき▼関節痛などがあるといいます。さらに松本主任教授は「B型だけの特徴として嘔吐や下痢などの症状がでるため脱水に注意が必要」ということです。
ホラン千秋キャスター:年末年始は診療を行っているクリニックが少ないので、受診できるところには患者さんが集中するわけですが、それでもインフルエンザの患者さんは多かったのでしょうか。
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:私のクリニックでは年始から診療を行いましたが、年始は家族内感染が多かったですね。親戚で集まって感染してしまって、ぐっと(患者が)増えてきている感じはありました。
井上貴博キャスター:コロナ禍が明けた2023~2024年ころは、「インフルエンザウイルスの免疫を持たない人が多かったので広がりやすかった」ということでしたが、今もその延長線上にあるのでしょうか。ないしはウイルスが変わってきているのでしょうか。
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:同じA型の中でも、2024年のパターンと少し中身が違い、2009年にパンデミックとなったインフルエンザの型「pdm09型」というものが先行して流行しています。そのため、2024年に感染しても十分免疫力が働かない人も若干いると思います。加えて多くの方が長期間のコロナ禍で免疫力が落ちていますので、トータルで見ると今回の「インフルエンザApdm09型」に強い免疫力を持っている人の比率はまだまだ低い。これが大きく影響していると思います。
元競泳日本代表松田丈志さん:私の家では12月中旬に、妻と娘、息子がインフルエンザA型に罹りました。私は感染しなかったのですが、家庭内感染はなかなか食い止めることができないので、「ワクチンは打った方がいいですよ」と小児科の先生に言われました。
井上キャスター:子どもの場合、リスクとして怖いのがインフルエンザ脳症と聞きますが、これは基礎疾患がないから、タミフルを服用したから安心ということでもないのですか?
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:タミフルでインフルエンザ脳症が治るというエビデンスはなく、ワクチンのみが唯一きちんとしたエビデンスがあり、インフルエンザ脳症の予防策になります。したがって、特に5歳以下のお子さんでまだワクチンを打っていない方で、打つつもりのある方は「もう遅くなっちゃったかな」と思わずに、今からでも打っていただくといいです。
南波キャスター:国際医療福祉大学松本哲哉主任教授によりますと「インフルエンザウイルスは症状がでる1日前でも人に感染させる」といいます。家庭内で感染を広げないためには▼接触感染対策についてはドアノブやリモコンなどの共有物にはアルコール消毒▼飛沫感染対策は家の中でも家族全員がマスク着用をするといいそうです。
ホランキャスター:まもなく受験シーズンです。この大事な時期にインフルエンザに感染しないように予防が大切ですね。
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:その通りですね。これからまだまだ正念場が続くと思います。
井上キャスター:現在、ワクチンは足りているのでしょうか。
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:今のところ数が不足しているという話は聞いていないので、足りてはいるのですが、2月になるとまた(インフルエンザの感染者が)増えてくる可能性がありますので、少なくとも1月の前半にはワクチンを打っていただいた方がよろしいかと思います。
井上キャスター:今から打つワクチンはどの型になりますか?
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:A型もB型も両方パックで入っていて、「pdm09型」にも有効なものが入っています。
========<プロフィール>伊藤博道さんいとう王子神谷内科外科クリニック院長多くの感染症患者を診療 日本呼吸器学会専門医
松田丈志さん元競泳日本代表五輪4大会出場4個のメダル獲得JOC理事宮崎県出身3児の父