昨年、週刊新潮が報じた、秋篠宮妃の紀子さま(58)の実弟で東京農業大学准教授の川嶋舟(しゅう)氏(51)が2021年6月から取締役を務める農業関連会社、グッドソイルグループを巡って巨額の金銭トラブルが発生している問題。週刊新潮の報道後、川嶋氏はすぐに辞任したものの、専門家は「“もう辞めたから関係ない”という逃げ口上は通用しない」と厳しい見方を示すのだ。
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【写真を見る】怪しいNPO法人の広告塔を務めたことも 紀子妃の実弟・川嶋舟氏
昨年12月11日、秋篠宮家の長男・悠仁さまが筑波大学に推薦入試で合格されたと宮内庁が発表。SNSなどでのご一家へのバッシングが長らく続く中、久しぶりのおめでたいニュースとなった。
バッシングに関しては、もっぱら長女・眞子さんと小室圭さんとの結婚に端を発しており、その後も悠仁さまの高校ご入学の経緯や佳子さまのお一人暮らしなどを巡って批判が巻き起こっていた。これに関して、昨年11月の会見で、秋篠宮さまはご一家へのバッシングの「受け止め」について、衝撃的なフレーズを用いてお答えになったことも話題となっていた。
「秋篠宮さまは『バッシング情報というのは第三者と当事者では意味合いが異なってくると思います』と切り出され、『当事者から見るとバッシングというよりも“いじめ的情報”と感じるのではないかと思います』と述べられたのです」(宮内庁担当記者)
この「いじめ的情報」という文言が波紋を呼んだ。それらの発信の主体は多くの場合、国民である。ということは国民がいじめに加担しているという解釈も成り立つではないか、ということだ。この一件は、近年課題となっている皇室の情報発信の難しさを示した事例といえるだろう。
そんな中、週刊新潮が昨年報じたのは、紀子さまをさらに深く悩ませるであろう問題である。
紀子さまの実弟の川嶋舟氏が取締役を務めていたグッドソイルグループが巨額の金銭トラブルを抱えているというのだ。週刊新潮がこの件について川嶋氏に取材を行うやいなや、彼は取締役を辞任。しかし、専門家は、「“もう辞めたから関係ない”という逃げ口上は通用しない」と厳しい目を向ける。「将来の天皇の叔父」を巡るトラブルについて、改めて騒動のあらましを紹介しよう。
(以下、「週刊新潮」2024年7月25日号、8月29日号記事をもとに再構成しました。日付や年齢、肩書などは当時のまま)
まずは川島氏のキャリアを振り返ってみよう。
川嶋氏は学習院高等科を卒業した後、麻布大学、東大大学院で獣医学を専攻した。以降は東京農大で教職に就く傍ら、獣医師としても活動してきた。
「世間知らずのボンボンだと評される川嶋氏は、怪しいNPO法人の広告塔を務めてしまうなど、過去に何度もスキャンダルに見舞われてきました。22年には、再婚相手の女性経営者(40)が手がける下着ブランドの販売会場となったホテルに秋篠宮ご夫妻が“偶然”立ち寄り、皇室ブランドを商業利用したのではないか、と疑念を持たれたこともありました」(経済ジャーナリスト)
荒殿忠一なる人物が代表取締役を務めるグッドソイルは、川嶋氏が取締役に就任する前々月、登記簿の〈目的〉の欄に6点の農業関連ビジネスを追加している。現在はホームページを見る限り土壌の開発やレモン圃場(ほじょう)の経営を手がけているようだ。
同社のさる元取締役に話を聞くと、
「私は20年の初めごろ、共通の知人を介して荒殿と出会いました。彼は当時、グッドソイルの主幹事証券企業は野村證券に決まり、3年以内に上場する予定だと言っていた。大手ハウスメーカーと協業して住宅とセットで畑を販売したり、大手食品会社と一緒にジャガイモの栽培キットを開発したりしているとも。だから、上場すれば株価は80倍になると息巻いていたのです」
そこで、この元取締役は手始めに、
「同社の新規株式を160株、計800万円で購入しました。さらにその後、荒殿が所有していた株式を6000万円分、追加購入しました」(同)
同社への投資はこれだけにとどまらず、
「畑を拡張するための農業協同協力金として20年10月から翌21年4月にかけて計6450万円、畑管理業務委託費として21年7月から同年10月にかけて計4950万円を支払っています。他にも、共同研究を行っているという東大農学部への研究費協力金として21年5月、750万円を振り込んだ。私は役員報酬を受け取っていませんでしたが、投資によってグッドソイルの業績が良くなり、近い将来、株価が上がればいいと考えていたのです」(元取締役)
しかし、荒殿代表は上場に向けて動く気配をほとんど見せなかったそうだ。
「私は徐々に彼を怪しいと思うようになっていきました。その気持ちが決定的になったのは21年から翌22年にかけての冬のことでした。彼は当時、新しいネギが採れると触れ回っていたので、事前に約束していた収益の一部を要求すると“畑で収穫できるようになるにはまだ3年かかる”などと言い訳を繰り出し、ごまかしてきたのです」(同)
これはもう信用できないと思うようになり、この元取締役は、
「株式を買い戻し、支払った資金も返してくれないかと荒殿代表に対してお願いしたんです。すると、彼はとにかく怒り出し、そこからまともに交渉ができなくなってしまいました」(同)
無論、つぎ込んだ1億5000万円以上は今も返ってこないままだという。
問題は川嶋氏の関わり方である。
荒殿代表は川嶋氏を会合や会社のイベントに呼んでいたというのだ。
例えば、前出の元取締役によれば、
「グッドソイルはピーナッツペーストを販売しているのですが、その原料を作る畑が東広島市(広島県)にあり、かつて現地の酒蔵で試食会を開いたことがありました。そこに川嶋さんがいらっしゃったんです。会には15~20人ほどが参加していましたが、荒殿は川嶋さんについて“この方は紀子さまの弟で皇室と縁があり、弊社に携わってもらうことになりました”と説明していました」
さて、さまざまな疑惑について尋ねるべく川嶋氏本人の携帯電話を鳴らすと、このように答えた。
――登記簿を確認した限りでは、現在も川嶋さんはグッドソイルの取締役でいらっしゃいます。
「それは、外れるように手続きしているはずです」
――つまり、本当はすでに辞任しているけれど、その事実が登記簿にはまだ反映されていない、ということでしょうか。
「おそらく……」
――では、辞任したのはいつ頃でしたか。
「およそ2~3年前だったと思います」
――どのような経緯でグッドソイルと関わることになったのでしょうか。
「現時点では関わっていませんので、お答えを控えさせていただければ、というところです」
しかし、以上のように答えた川嶋氏への取材と同時に、別の記者が荒殿代表の携帯電話を鳴らすと……。
――川嶋さんとはどのようなご関係ですか。
「今、レモンを作っているところで、(川嶋氏に)参加していただいています。一緒に土を見たり、分析したりと、諸々のアドバイスを頂戴しております」
――なぜ、貴社のホームページに川嶋さんの名前が載っていないのですか。
「ご本人の希望で、自分は有名人だから表に出さないでほしいと。私たちも別に(川嶋氏を)利用するつもりはありませんので」
――現在も川嶋さんは貴社の取締役ですよね。
「はい。登記上でそうなっております。仕事でのご協力をいただいているというだけの関係です」
この通り川嶋氏とまったく異なる話をするのだった。
そして翌々日、弁護士を通して文書で届いた回答は以下の通り。
「川嶋先生にはコロナ禍の前までアドバイス業務(ママ)を頂いていました。しかし、コロナ禍で助力を得ることが難しくなり、終了しました。21年9月、弊社の顧問弁護士を通じて川嶋先生には辞任届をお送りしましたが、まだ返信をいただいておらず、登記上はそのままになっていました。また、弊社は現在、相手方パートナーとの未精算の金銭やトラブルはありません」
一方の川嶋氏からは期日までに回答はなかった。
川嶋氏がグッドソイルの取締役であることの責任について、企業法務に詳しいウィンズロー法律事務所の今田覚代表弁護士はこう解説する。
「たとえ、名義を貸しただけの“名目的取締役”であっても、被害者に対して賠償義務を負う可能性があります。特に、多額の役員報酬を得ていたり社会的地位が悪用されることを容認していたりすれば、言い逃れはできないでしょう。他の取締役の行為についても連帯して賠償義務などを負う立場にあるという意味で、取締役には重い責任が課せられているのです」
この取材の後、すぐに川嶋氏は辞任した。
「将来、悠仁さま(18)が即位された暁には、川嶋氏は天皇の叔父となります。荒殿代表はそんなご身分の川嶋氏を会合に参加させ、周囲に見せつけるなどして、グッドソイルの信用力を高めるために利用したとみられているのです」(経済ジャーナリスト)
川嶋氏は、単に名前を使われただけと弁明するかもしれないが、
「長期間にわたって取締役に就いていた以上は、経営者としての重い責任を有しており、被害者に対して賠償義務を負う可能性があります。“もう辞めたから関係ない”という逃げ口上は通用しません」(同)
「被害者」は1人にとどまらない。
広島県のある企業経営者は、10年以上前に荒殿氏と出会い、そこから合計で約8000万円を貸し付け、約2000万円は返ってきたが、残りに関しては催促しても梨のつぶてだという。ご本人が語るには、
「ようやく23年、荒殿が代表を務める別の会社を相手取り、貸金返還請求訴訟を起こしました。しかし、貸したはずのお金のほとんどは、私も経営者として名を連ねているこの会社への投資扱いになっており、証拠が不十分だとされてしまいました。現在は、彼の奥さんが経営するテレビ制作会社からお金を取り返すべく、準備を進めています」
荒殿氏にだまされた過程で、川嶋氏の名前を聞く機会もあったそうだ。
「まだ私との関係が悪化していなかった、2~3年前の出来事でした。彼は電話で奥さんに対して“川嶋舟を連れて行け。そうしたら、皆が信用するから”と指示を出していたんです。どうやらその時、川嶋さんは荒殿の奥さんに連れられ、江田島市や東広島市の農家を回らされていたようです。今思えば、詐欺師同然の荒殿の言いなりになっていたのでしょう」(同)
さらに、荒殿氏を知るまた別の人物によれば、
「彼はごく最近の時点でも、川嶋さんについて“ウチの役員をしている。順調にいけば天皇の叔父になるから、カネを集めやすくなる”などと周囲に吹聴していたのです」
これらの点についても川嶋氏からは期限までに返事がなかった。また荒殿氏は“妻は川嶋先生とは全く面識がありません”との旨を回答してきた。
荒殿氏の弁護士によると、川嶋氏は取締役として月額15万円の報酬を受け取っていたそうだ。すでに役員を辞任したとはいえ、詐欺的な資金集めに利用されていた実態がこれまで以上に明らかになりつつある今、知らぬ存ぜぬで済まされるのだろうか。
これまでも数々の不祥事に関連してきた川嶋氏。「将来の天皇の叔父」になる可能性がある立場なのだから、巨額の金銭トラブルが疑われるような企業に“利用”されるようなことは避けるべきだろう。
デイリー新潮編集部