「川に飛び込んで救助」を美談にしないで!…夫を亡くした妻の叫び 水難事故“救助死”どう防ぐ?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

川や海で溺れている子どもを大人が水に飛び込んで助けたニュース。「ヒーロー」などと称賛されるが、水難事故で夫を亡くした妻は「美談にしないでほしい」と訴える。
【映像】溺れた中学生を助けようとして亡くなった夫、桜の木の下で息子に見せた笑顔
5月13日、富山県で川で溺れていた小学生を通りかかった専門学校生の男性が危険を顧みず飛び込んで救出した。
この男性の行動にSNSでは「素晴らしい判断だ」「よくやった!すごい!」「勇気ある行動!」など多くの賞賛の声があがった。
その一方で、ある投稿が話題に…
「私の夫は同様の状況で溺れていた中学生とともに亡くなった。(中略)飛び込んで助けることが素晴らしい、勇敢だと美談にしないでほしい。」(岡まゆみさんのXから)
投稿主の岡真裕美さんの夫は12年前、川で溺れていた子どもを助けるために水に飛び込み、帰らぬ人となった。
「5歳と2歳の子どもと私を残して勝手に死ぬなんて、本当になんてことをしてくれたんだと思った。当事者になると本当に美談だけじゃない。夫はすごい人だったとは思うが、残された私と子どもたちはもっと長く一緒に過ごしたかった。恨もうにも何も恨めず、誰も事故を起こそうとしたわけではないため、消化しきれなかった」(岡さん)
溺れている人を助けに行って命を落とす「救助死」。
「救助死」で夫を亡くした岡さんにとって、人助けとはいえ自らの命を危険にさらす行為を美談とすることにどうしても抵抗があった。
「『すごい人だ』『ヒーローだ』みたいに終わるのではなく、やっぱり残された遺族はそこからずっと生活が続く。その点も考えて『飛び込むのが素晴らしい』とか『飛び込まなければならない』とするのはやめていただきたい」(岡さん)
警察庁によると7月・8月の2カ月間で毎年450件以上の水難事故が発生していて、200人を超える人が毎年亡くなっている。
これから夏を迎え、水難事故への注意が必要だ。水難事故に詳しい水難学会の斎藤秀俊さんも「救助死」の危険性に警鐘を鳴らす。
「素人の方が飛び込んで助けようとするのは非常に危険だ。やはり何の訓練もしていない方が何の準備もせずに飛び込むのは、一番失敗する確率が高くなる」(斎藤さん)
では、溺れている人を助けるにはどうすればよいのか?
「一番重要なのは119番通報し、消防の救助隊にすぐに現場に来てもらうこと。(救助が来るまでは)とにかく浮いて救助を待つことを簡潔に知らせてほしい。大きい声で『浮いて待て』。その一言でいい」(斎藤さん)
水に落ちてしまった場合、仰向けになって浮かぶ、いわゆる「背浮き」の状態を維持することで、助かる確率は大きく上がるという。
「周りから空のペットボトル、あるいはボールなどの浮くものを投げて浮き具に使ってもらう。周りの人は飛び込まない・『浮いて待て』と声をかける・早く119番通報して救助隊を呼ぶ、その点をしっかりとやってほしい」(斎藤さん)
夫を亡くした岡さんは「本当に大切な人が溺れた時は飛び込んでしまうと思う。我が子が溺れていたらこんな私でも『もう死んでもいい』と思って助けに行く気がする。だけどそうではない。やはり残された家族のことや自分が亡くなってしまう可能性も考えて、思いとどまっていただきたい」と訴えた。
TrustedCEO/連続起業家のファリザ・アビドヴァ氏は水難事故の予防策として浮き輪・ライフジャケットの用意、両親が子ども達から目を離さないことを挙げると共に、新しい技術による救助も紹介した。
「救助が来るまでに時間がかかるケースにおいて『ドローンを操縦し、溺れている人の近くに浮き輪を落として助けを待つ』という技術をスタートアップが開発しており、既に試されている」(『ABEMAヒルズ』より)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。