指名手配犯を包囲が…神奈川県警「現場はもぬけの殻」失態のワケ

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前代未聞の事態が起きたのは10月20日だ。
神奈川県警は、指名手配中の男Aが逃げ込んだと思われる相模原市南区の廃業したホテルを包囲。周囲の道路を通行止めにするなど、厳戒態勢がしかれる。だがAはすでに逃走し、ホテルはもぬけの殻だった。
「Aは暴力団同士の抗争で、男性2人を監禁、暴行した疑いが持たれています。行方を追っていた捜査員が、JR町田駅近くのコインパーキングでAの車を発見したのは同日昼ごろです。60mほど離れた別の駐車場から、数人で見張りを開始。
しばらくするとAが戻ってきました。しかし声をかけようと捜査員が車を降りると、気づいたAが逃走します。約100m走って逃げ込んだのが、21年8月で閉業し廃墟となっていたホテルの敷地でした」(全国紙社会部記者)
県警は150人規模に増員し、午後3時過ぎから警棒やさすまたを持った警察官がホテルを取り囲む。警察犬も投入され、包囲すること4時間。警察はAを確保後スグに逮捕状を緊急執行しようと、現場には緊迫した雰囲気がただよっていた。
だが、午後7時を過ぎると事態が急変する。道路の規制がなくなり、警察官が急に現場から撤収し始めたのだ。
「ホテルの敷地内に、Aがいないことがわかったんです。建物のすべての部屋や周辺を捜索したが、発見できなかった。警察が包囲する前に、現場から逃亡していたと思われます。敷地は広大で、ボウリング場やチャペルもある。捜査員はAが敷地内に入ったことは確認しても、ホテルの建物の中に逃げ込んだかはわかっていなかったようです」(同前)
ホテル近くには学校もあり、子どもたちが集団登校している。10月23日時点でAの身柄は確保されておらず、周辺住民の不安は募るばかりだろう。元神奈川県警の刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が事件の背景を解説する。
「付近では92年7月にも立てこもり事件が起き、警察官1人が殉職しています。警察としては慎重にならざるをえなかったのでしょう。私も現場のホテルを見ましたが出口がいくつもあり、どこからでも逃げられるような構造でした。
だからといって、警察の責任が免除されるわけではありません。最大のミスは、最初に駐車場で声をかけるタイミングを逸したことです。犯人に事前に気づかれないように接近し、素早く逮捕に踏み切るべきでした」
Aは40代で身長170cmほど。黒い野球帽をかぶり、上下紺色の作業服を着ていたという。

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